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この石には意志がある!  作者: 一狼
第3章 ブロークンハート大陸・海渡編
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036.VSリヴァイアサン前段

「は? リヴァイアサンを倒すから沖に出る許可が欲しいですか、って……ジル様が、リヴァイアサンを倒すつもりですか?」


 港町フォルスの冒険者ギルドの受付嬢は呆れていた。


 周囲で話を聞いていた冒険者も「え?マジで言ってんの?」「頭おかしいんじゃね?」「どんだけ自分の力に自惚れているんだよ」「これ意気込んで言って簡単に返り討ちに遭うパターンw」「ぶはっ、久々に大笑いした」など、驚きを通り越して呆れかえっていた。一部の者には笑われてはいたが。


 一応、勝手に倒すのもなんだと言う事で、ジルがわざわざ冒険者ギルドに報告しに来たのだ。


 本来ならリヴァイアサンは脅威度S、つまりS級の依頼になり、ジルのE級だと受けることが出来ない。


 B級のマックスとパーティーを組んだとしても、受けれる上限がA級までだ。


 だが、相手がS級故か、冒険者ギルドではリヴァイアサンの討伐依頼が出ていないのだ。


 よって、ジルでもリヴァイアサンを討伐する事に何の支障も無いのだ。


 尤も、依頼を受けずに自己責任で討伐する事も出来るが。


 しかし、ジルはわざわざ自分がリヴァイアサンを倒すと冒険者ギルドに報告しに来た。


 一応、名目としては、沖に出ることを禁止されているので、その許可を貰いに来たと言うところだ。


「ジル様、冒険者ギルドでは何故ランクの1つ上までしか依頼を受けれないのか、ご存知ですか?」


「若く血気に走った者が無茶をしない様にー」


「そうです。正に今の貴女の事ですよ、ジル様。E級で子供の貴女がS級のリヴァイアサンに挑むですって? お遊びも大概にしてください。マックス様もマックス様です。パーティーメンバーの無茶を止めるのもパーティーメンバーの仕事でしょう?」


「いやぁ~、言いたいことは分かるよ? 相手はS級の化け物だからね。だが、この子ならもしかしたら、って気もするんだ。いざとなったら俺が連れて逃げて帰るから許可をくれないかな」


「却下です。小さな子供に何を期待しているんですか。それに幾らマックス様が『韋駄天』の異名を持つ者とは言え、海の上でもその力を発揮できますか?」


「おっと、その辺はもう既に対策済みだよ」


「それでも許可は出来ません。S級冒険者の方が来る前に仕掛けて状況が悪化しでもしたら困りますから」


 あー、まぁそうだよな。


 今は大人しいが、ジルがちょっかい掛けて暴れまわって周囲に被害が出たらどう責任を取るんだよって話だよな。


「なんだ、騒々しい。何があった?」


 受付嬢とジル、マックスと言い争いをしていると、ギルドの奥の部屋から美人の女性が現れた。


 金髪のストレートの髪に、スレンダーな体型。そして何より俺が一番目を引いたのは、とがった長い耳。


 そう、エルフだ。


「ギルドマスター……、彼女がリヴァイアサンを倒すから沖に出る許可を欲しいと訴えてきているのです」


 って、ギルドマスターだったよ!


 意外と大物が出てきたな。どうなるんだ、これ?


「ほう……ふむ、確かに許可を出すには些か若すぎるな。お主、死ぬかもしれないのにリヴァイアサンを倒しに行くのか?」


 ギルドマスターはジルを値踏みするように一瞥し、その上で面白そうに話しかける。


「行くよー、私早く西大陸に行きたいのー。1ヶ月も待ってられないー。それに私死なないよー? だって、皆が付いているもんー」


 いや、ジル。ここでお気に入り()と言っても分からんぞ。


「無茶は若者の特権と言うが……確かにお主からは不思議な感じを受ける。が、それでリヴァイアサンを倒せると思うのは誇張しすぎだと思うがな。その辺りはどうなんだ? 『韋駄天』」


「あー……さっきもそっちの受付嬢に言ったが、僅かだが勝算はあると思うよ。まぁ、ダメなら俺達の命が無くなるだけだし」


「……ふっ、いいだろう。お主らの好きにするがよい」


「ギルドマスター!」


 おお、許可が出ちゃったよ。


 受付嬢さんは納得いかない感じだが。


「よい、こやつらがリヴァイアサンにちょっかいを掛けたところでS級冒険者でも無ければ向こうには蚊が刺さったような物だろう」


「しかし……」


「冒険者と言う者は己の命を賭して生きる者の事を言う。こやつらもその覚悟はあろう。よって、お主らもリヴァイアサンに挑むのは自己責任だ。死んでも文句は言うなよ」


「死んだら文句は言えないよー」


「ふふっ、確かにな」


 うーむ、まさかギルドマスターが出てきて、沖に出る許可を貰えるとは思わなかったな。


 本当なら黙って沖に出てリヴァイアサンに挑むつもりだったんだが。


「(これで周りの文句も無くリヴァイアサンを倒せるねー)」


『文句は出ないが、これからは奇特な目で見られてしまうんだろうなぁ。万一失敗したら周囲の評判はがた落ちどころか最底辺になるだろう』


「(ぶー、きゅーちゃんも失敗した時の事を考えてるー)」


『そりゃあ、ジルが勝つことが望ましいが、最悪のパターンも考えておかなきゃいざと言う時に困るだろ? 幾つものパターンを考えておくのが最善への道に繋がるんだよ』


「(むー、きゅーちゃんがそう言うなら分かったー。でもー、リヴァイアサンに挑むときは全力で勝ちに行こうねー)」


『当たり前だろ。俺だってこんなところでジルに死んでほしくは無いからな。全力で勝ちに行くさ』


「(うんー!)」











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