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この石には意志がある!  作者: 一狼
第10章 魔王城ドルラメエ・最終戦
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248.激化する戦場

「【アクアヒーリング】」


 マーブルシュッドに痛恨の一撃を与えたものの、直ぐに傷を癒されてしまう。


 ただ、絶対防御である絶対領域を破られたのがショックだったのか、これまで無詠唱で【水魔法】を使用していたのが、詠唱をして傷をいやしていた。


 モレッツァを欠いたのは痛いが、マーブルシュッドに与えた影響力は計り知れない。


 よし、このまま動揺しているマーブルシュッドに更なるショックを与えようじゃないか。


 モレッツァが退いたことで、再びアベレージとジルがマーブルシュッドへ向かい、オズとマックスがジョージョーの相手をする。


 因みに、倒れていたモレッツァは、いつの間にかパトリシアの元へ運ばれていて治療を受けていた。


 あれ? いつの間に? 誰か運んでいたのか?


 そんなパトリシアとモレッツァをしり目に、ファイが後方から魔法で援護をし、俺もそれに並行して魔法を放つ。


「【ウォーターアロー】!」


 無数の水の矢がマーブルシュッドを襲う。


 だが、当然の如くマーブルシュッドを纏うように囲う水柱から放たれる水弾が俺の水の矢を追撃する。


「私に対して【水魔法】とは、悪手としか言いようがありません―――なっ!?」


 まぁ、敵の水に対して水の攻撃は通じるわけない上に、下手をすれば取り込まれる可能性もあるから悪手なんだろう。普通は。


 当然、俺の放った【ウォーターアロー】は普通じゃない。


 【ウォーターアロー】がぶつかった瞬間、マーブルシュッドの水柱や水弾が瞬時に凍ってしまったのだ。


 俺が【水魔法】を放ったことで、冷静さを取り戻したと思われたマーブルシュッドだったが、【水魔法】が何故か凍らされたことで、再び動揺していた。


 種明かしをすれば、俺の放った【ウォーターアロー】は過冷却状態だったのだ。


 過冷却と言うのは、氷点下になっても凍らずにある状態の水を指す。


 そして過冷却状態の水は、衝撃を与えると瞬時に凍結するのだ。


 現代科学の知識だな。


 当然その事を知らないこの世界の住人であるマーブルシュッドは、ただの【水魔法】が瞬時に凍ってしまったことに動揺したのだ。


 普段であれば動揺なんてしないのだが、先ほどモレッツァに絶対領域を破られたことが響いている。


「落ち着け、マーブルシュッド」


 このまま崩れてくれれば儲けものだったんだけど、そこは戦歴の強者感を出し始めたジョージョーがマーブルシュッドを落ち着かせる。


「すみません、ジョージョー。思いのほか私は予定外の事に弱いみたいです」


「いや、お前は弱くない。ただ相手が相手だ。向こうの戦術が上手だっただけだ。つーか、Lv999のお前が弱いって何の嫌味だよ」


 まぁ、この場合マーブルシュッドが言う弱さと言うのは精神的なものなんだけど、ジョージョーはわざと戦闘面で弱くないと強調することでマーブルシュッドを持ち直させようという魂胆か。


「そう、ですね。今は弱音を吐いている場合ではありませんね」


「そうそう。それにお前1人で戦っている訳じゃないんだ。俺も居る。準備は整ったんだし?」


 ん? 準備?


「ええ、やっちゃってください」


 ジョージョーは頷き、足を振り上げて震脚を放つ。


 ――って、あ!


「全員跳べ!」


「大地の抱擁の波紋疾走!!」


 ジョージョーが濡れた地面を伝い、震脚のよる脚からの波紋疾走を流す。


 ちっ! マーブルシュッドの放った【水魔法】が地面を濡らし、ジョージョーの波紋を伝える役割をも担っていたのか。


 そう考えればマーブルシュッドとジョージョーの組み合わせはこの上ない抜群の相性がいい相手だ。


 俺の声に反応して躱せたのは、ジルとアベレージの2人だけだ。


 アベレージは死々蜘蛛剣の蜘蛛糸ワイヤーで宙に引き上げ、ジルはハルバードを棒代わりにして宙に逃れる。


 まともに喰らったオズとマックス、ファイとララクレットとゴダーダはその場に倒れる。


 いや、オズは辛うじて膝をつくぐらいで済んでいた。


 メダルによる全身鎧が防いでくれたか?


 幸いにして、隙を窺うため後ろに控えていたアルベルトとパトリシア、それに治療を受けていたモレッツァまでは地面は濡れていなかったので被害はない。


 俺は咄嗟に【水魔法】の【バブルウォール】でジョージョーの波紋疾走を受け流している。


「ちっ、不意を突いたつもりだったんだがな。これを躱すか」


「言っておくが、それは以前にも見せてもらったぜ」


 正確には地面を濡らし、そこに波紋疾走を流す方法だけどな。


 俺の言葉にジョージョーは眉を顰める。


 あー、俺の正体が分からずに、どこで見せたか気になっているのか?


「だが、まぁいい。こっちはマーブルシュッドの持ち直しが出来たからな」


 ジョージョーの言う通り、ジョージョーとの連携が効いたことと、ジョージョーが頼りになることを見せたことでマーブルシュッドは先ほどまでの動揺は見られず、落ち着きを取り戻していた。


 てっきり波紋疾走を喰らったメンバーに追撃があると思っていたんだが、ジョージョーはマーブルシュッドを優先させていた為、追撃はなかった。


 俺は直ぐに【エリアエクストラヒール】を飛ばし、ダメージを負ったメンバーを癒す。


 しかし、これでは一進一退でどうやって魔王までアルベルトを立ち向かわせるか。


 そう悩んでいたところ、ジョージョー達の後ろで悠然と見物していたはずの魔王から声が上がった。


「ぐぅ……!!」


 なんと、魔王の右腕が切り落とされていたのだ。


 しかも、それをやったのは俺たちの後ろで控えているはずのアルベルトだった。












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[一言] アルベルト、いつの間にそこに。
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