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この石には意志がある!  作者: 一狼
第3部 「神乙女」 / 第9章 収集家の集い・参集編
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Side-95.ジルベール49 -VSアルダーコール王家3

 ゾルティは指先に魔力を灯し、空中に文字を書く。


 反転して良く分からないけど、アキンドー文字で『火』かな?


 幾つもの『火』の文字を書きだしたゾルティは、その文字を弾くように腕を薙ぎ払う。


 ゴウゥッ!!


 そして文字から文字通り幾つもの火炎弾が私たちに襲い掛かった。


「やぁー!」


「迎撃ですです!」


 私はハルバードに魔力を纏わせ襲い来る火炎弾を薙ぎ払う。


 ララクレットも水魔法ボトルから幾つもの水弾を呼び出し迎撃する。


 無論、ゾルティもこれだけで私たちを仕留められないと、火炎弾の陰に隠れて土槍を放っていた。


 こっちの土槍はそれほど数が多くなかったので、私の方で全て払い落とす。


「……ちっ、この脳筋が……」


 むっ、小声だけど私にははっきり聞き取れたよ。


 脳筋だなんて失礼しちゃう。


『でも最近はきゅーちゃんが居ないから、力技が増えて来たもんねー』


 あぅ……! ふーちゃんまで酷い。


 ゾルティは今度は目視できないように『風』の文字を書き解き放つ。


 確かに見ずらいかもしれないけど、魔力で生み出された風弾はちゃんと軌道が見えるので迎え撃とうとするが、丁度その時、ガルアの【言霊】で動きが一瞬阻害されてしまった。


「あぐぅー!」


「あわわ、なのなの」


 私はまともに幾つかの風弾を喰らい、ララクレットは浮かべていた水弾で身を守っていたのでダメージはない。


「ジルさん、大丈夫なのなの?」


 ララクレットはそう言いながらヒールボトルで私のダメージを癒してくれる。


「ありがとー。威力はそこまででもなかったから大したこと無かったよー。おそらく小手調べみたいなものかもねー」


 ……あれ? 何かゾルティが顔を真っ赤にして殺気を私に向けてきている。


 もしかして、これって小手調べじゃなく全力だったって事かな?


 もしそうだとしたら、ゾルティは案外大したことないのかも。


 ゾルティの【紋様使い】は自由度が高いスキルだから使い方次第では何でも出来ちゃいそう。


 だけど、ゾルティは【紋様使い】を使いこなしていない。


 もしこれがきゅーちゃんだとしたら、『模』とかで私たちのスキルをコピーしたり、私たちの偽物を作り上げたりしそう。


 後は、『反』とかで攻撃を反射したり、『転』とかで短距離テレポートをしたりとか。


 けど、ゾルティの使い方は単純に魔法のまねごとをしているに過ぎない。


 まぁ、呪文ではなく文字で発動しているので、若干反応しづらいのはあるけど。


 差し詰め『呪紋』ってとこかな。


 ゾルティは今度は『人』という文字を地面に書き、呪紋を発動する。


「気持ち悪いですです」


 出来上がったのは土で出来た人形。


 ただし形はかなり歪。


「……いけ……」


 土人形を向かわせている間、ゾルティはかなりの数の呪紋を空中に書き上げる。


 勿論、それを黙って見ている私じゃない。


 土人形はララクレットに任せ、私はふーちゃんを呼び出す。


「ふーちゃんー!」


『ほいさー!』


 ふーちゃんに乗って、一瞬でゾルティの背後を取る。


 私を見失ったゾルティは背後に現れた私に驚きながら咄嗟に両腕でガードをする。


 この反応を見るに、どうやら接近戦は得意じゃないみたいだね。


 だけど、私は遠慮なくハルバードを一閃させるも、ゾルティの前に現れた『防』の紋様に攻撃を阻まれてしまった。


「……ビ、ビビらせるなよ。流石僕が組んだ自動防御紋様だ……」


 あー、自動で『防』の文字で守っている訳か。


 さて、どうしよう?


 一端、距離を取ってあの防御システムをどう破ろうか考えていると、再びガルアの【言霊】が私たちの動きを一瞬縛る。


 それに合わせてゾルティが『鎖』と『縛』の文字を合わせて空中から鎖を具現化させて私とララクレットの身動きを縛り上げた。


「……止め……」


 先ほど無数に書き上げていた紋様が私たちに襲い掛かる。


 紋様の文字は『雷』。


 普通であれば、これで決まったと思うんだろうね。


 けど残念。


 ゾルティ、貴方が相手しているのは勇者パーティーなんだよ。


 ララクレットは水の壁を正面に作り上げ、『雷』を防いでいる。


 私はと言うと、ふーちゃんに乗って光速化で『雷』を飛び越えながら再びゾルティの背後にハルバードの一撃を放つ。


 鎖に縛られたままだからそれ程力が乗らなかったけど関係ない。


 当然、自動迎撃システムの『防』に防がれるけど、私はお構いなしに何度もハルバードを叩きつける。


 ―― 一撃、二撃、三撃、四撃 ――


 ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!


「……む、無駄な事を……」


 そう、強がるものの、ゾルティの顔は蒼白だ。


 何故なら、『防』の文字に段々とヒビが入ってきたから。


 ハルバードを振り回しているうちに、私を縛っていた鎖が解かれる。


 それと同時にハルバードに込める力が増し、一撃一撃が重くなる。


 ―― 五撃、六撃、七撃 ――


 ガンッ! ガガンッ! ガッッ!! バリンッッ!!


 私の連撃に耐え切れなくなった『防』の文字はとうとうガラスが割れる様に破壊され、そしてその一撃はゾルティをも切り裂いた。


「……!!……」


 自分が負けたのが信じられない表情のまま、ゾルティは地に伏す。


「スキルに胡坐をかいていたら私たちには勝てないよー」












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― 新着の感想 ―
[一言] 言われてみれば、確かに力ずくな戦いが増えたなぁ。
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