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この石には意志がある!  作者: 一狼
第3章 ブロークンハート大陸・海渡編
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029.コカトリス

 コカトリス。ニワトリの体に鱗を纏った蛇の尻尾を持つ怪鳥。


 討伐ランクはB級と上級者向けだが、実際の脅威度はC級くらいだ。


 何故討伐ランクがB級なのかと言えば、ひとえに石化ブレスが厄介だからだ。


 石化ブレスだけで討伐ランクが一段上がりB級となっている。


 で、その脅威度Bのコカトリスが目の前にいる。


「さて、巣の中には卵があるのも確認した。卵だけ奪取していくか、それともコカトリスも倒していくか、どうする? ジルちゃん」


 岩かげに隠れながらコカトリスの様子を伺うジルとマックス。


 コカトリスの巣がある場所はサーズの町から約40Kmほど離れた岩山に存在した。


 普通なら徒歩でも1日以上も掛かる距離だが、ジルのふーちゃんにかかれば1時間ほどで着く距離だ。


 そして同パーティーのマックスだが、なんとジルと並行して走って付いてきたのだ。


 ふーちゃんのあの移動速度に付いてこれるのにも驚きだが、マックスにしてみればまだ余裕がありそうな感じが見受けられた。


 うむむ……流石は【韋駄天】のスキルと言うべきか。


 ああ、マックスにはふーちゃんの性能について内緒にして貰うようには言ってある。


 マックスもふーちゃんの性能を見て流石に世間に知られるのがヤバいと分かってくれたので言いふらすことは無いだろう。


 まぁ、ふーちゃんの性能は場合によっては知られてもしょうがないから、ある程度は許容している。


「う~んー、出来ればコカトリスも倒して素材をゲットしたいんだけどー」


「無茶を言うなぁ。まぁ、渡航費用を稼がなければいけないから無茶を言う理由が分からないわけじゃないが」


『まずは卵とコカトリスを引き離そう。ここで戦闘になって卵が駄目になれば依頼を受けた意味が無いからな』


「(分かったー)。マックスー、コカトリスをおびき出せないー?」


「そうだな、俺が囮をやってジルちゃんが隙を突いて攻撃だな」


 マックスの【韋駄天】スキルがあれば囮役は簡単だろう。


 後はそのままマックスが回避(タンク)をしながら、ジルが攻撃する役割になる。


 一応、ジルには接近戦じゃなく、遠距離攻撃のやーちゃんやめーちゃんを使う様に言っておく。


 石化ブレスが怖いからな。


 マックスは石化解除用のキュアストーンポーションを持っているし、俺も【キュアストーン】が使えるから石化対策は取っているが、喰らわないに越したことは無い。


 あ、遠距離攻撃はぼーちゃんも行けるか。


 伸ばしたままからの攻撃も可能だが、瞬間的に伸ばす速度での突きもかなりの威力になるはず。


「コケェェェェェェッ!!!」


 マックスがコカトリスを誘い出し戦いやすい平場へと移動する。


 ジルも隠れるように後を付いて行き、コカトリスの背後を位置取る。


「さぁて、ひとっ走り行くか」


 マックスは剣を抜き放ち、リズムを取るようにその場で簡単なステップを踏む。


 次の瞬間、マックスはコカトリスの脇を抜け、背後に立っていた。


「コケェッ!?」


「おっと、何処見ているんだ? 俺はこっちだぜ」


 コカトリスが振り返ると、既にそこにはマックスはおらず、側面を移動しながら剣で攻撃する。


「コケェッ、コケェッ!」


 おお、これが【韋駄天】を使った攻撃か。


 まさに縦横無尽だな。


 と、こちらもただ見ているだけじゃマックスにおんぶ抱っこだ。


 ちゃんとジルもコカトリスを相手できることを見せてやらないと。


 ……まて、ジルはまだ7歳でE級だぞ。


 大分ジルに毒されてきているな。まぁいいか。


「やーちゃんー! めーちゃんー!」


 ジルが石空間からやーちゃんとめーちゃんを取出しコカトリスに向かって放つ。


 めーちゃんの曲線攻撃で注意を引きつつ、やーちゃんの貫通攻撃で鱗を貫く。


「おお! ジルちゃん、やるな! っと、石化ブレスか」


 一向にあたらない攻撃に痺れを切らしたコカトリスがマックス目がけて石化ブレスを吐く。


 マックスは余裕を持って石化ブレスの範囲外に逃れ難を逃れる。


「ぼーちゃんー!」


 ジルはその隙を突いてぼーちゃんの伸縮突きでコカトリスの目を貫き、そのまま伸ばした状態のまま上空に振り上げコカトリスを目がけて叩き潰す。


「ゴゲェ……」


 ジルの会心の一撃を受けてコカトリスはその場に崩れ落ちた。


「おお……? マジ? ほぼ一撃で決めちゃったよ、この子。いやぁ強い強いとは思ってたけど、マジでここまでの強さを持っているとは」


 うん、俺も驚いた。


 まさか、ほぼ一撃とは。


 でもまぁ、ジルはちゃんと急所を狙っての攻撃だから当然と言えば当然かもしれない。


 ぼーちゃんでの目を狙った攻撃に、止めの一撃は首の頸椎を狙った攻撃だったし。


 めーちゃんややーちゃんの攻撃も、ぼーちゃんの伸縮突きを決める為の目元を狙った攻撃をしていたのだ。


 ……にしても、目を狙った攻撃とか、意外と容赦ないな。


 ジルの将来がちょっと心配。


「コカトリスを仕舞ったら卵を取りに行くねー」


 ジルがかめちゃんにコカトリスを仕舞おうと近づく。


『あ、待て! まだコカトリスは死んでないぞ!』


「まだ戦闘は終わってないぞ! 不用意に近づくな!」


 俺とマックスが注意をするが、一足遅かった。


「ゴゲェェェェツ!!」


 イタチの最後っ屁のように、コカトリスは最後の命を振り絞って油断して近づいたジルに向かって石化ブレスを放った。


 ブシュウゥゥゥゥ!


 もろに石化ブレスを食らったジルは石化ブレスの灰煙に塗れる。


 ああ、くそ! ジルらしくも無い。


 まだアルベルトを救うべく焦りを生じているのか、それとも慣れない土地での上級モンスター相手に緊張していたのか。


 ともあれ直ぐにでも石化を治さないと。


 【キュアスト……】って、あれ? 煙が晴れてそこに居たのはなんとも無いジルだった。


「ぷぁー、びっくりしたー。油断しちゃったー。えっとー、残心を以って対処しないとー。と言う訳で止めー」


 ジルははーちゃんを取出し、コカトリスの脳天目がけて突き刺す。


「ゴ……ゲ……ェ……」


 今度こそ確実にコカトリスは死んだのを確認する。


「はぁ~、油断しすぎだぞ、ジルちゃん。それにしても……石化ブレスをまともに喰らわなかったのか?」


「ううんー、まともに喰らっちゃったー。でもなんともなかったよー」


「何でだ?」


 確かにまともに喰らったよな。


 俺も一緒だったから間違いない。


 そう言えば、普通石化ブレスを浴びると、武器も服もみんな一緒くたに石化するよな。


 この場合、俺やぼーちゃん達は石化するのか?


 石は石化しないよな。既に石なんだから。


 ……あ、もしかしてそう言う事か。


 俺は思いついた可能性をジルに告げる。


「あー、もしかしてー、私のスキルが【ストーンコレクター】だからかもー」


「石集めだから石に耐性があるってか? おいおい、すんごい無茶な理屈だな」


 俺もそう思う。


 だけどこれが一番しっくりくるんだよなぁ。


「はぁー、まぁいい。コカトリスは倒したんだし、卵を回収してサーズの町に戻ろう」


 かめちゃんにコカトリスを仕舞い、ジルとマックスは巣に戻って卵を回収してサーズの町へと戻る。


 因みに、かめちゃんの性能に関しては大容量を収納できるアイテムボックスだとマックスには説明してある。


 まぁ、それだけでもかなり驚愕の能力なのでこれも内緒にしておくように言ってある。











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