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この石には意志がある!  作者: 一狼
第3部 「神乙女」 / 第9章 収集家の集い・参集編
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Side-74.ジルベール28 -魔王軍の現状把握

「どういうことー?」


「魔王軍と言うより魔族全体が統制が取れてない状況みたいなんだ。その影響で魔王軍もごたごたしているっぽい」


 私の疑問にアル君が答えてくれる。


「魔王軍に従わない奴が居るって事か?」


「多分な」


 強い者に従う魔族が、魔王軍に逆らっている状況が想像できないのか、首を傾げるオズ。


 アル君も確定がある訳じゃないけど、これまで最前線で戦ってきた経験則からそうでないかと。


「あ! あれじゃないか? ほら、魔族には王族が居るだろ。もしかして魔族にも派閥争いが出来てるんじゃないのか?」


 確かにディーノの言う通り魔族には王族が居てそれなりの権力がある。


 ただしそれは魔王が居ない場合に限る。


 でも確かに2年前の魔大陸で魔族の王族――第1王子のヴァインのあの様子だと魔王軍に従っているとは言い難いね。


「でも、魔族は魔王には絶対服従の掟があります。確かに魔王軍に従順ではないとはいえ、表立って魔王軍に逆らうとは思えません」


 パトリシアも当時の事を思い出し、寂しげな表情を見せながらも魔族王族の動きを推測する。


 ……そう言えば、パトリシア達は魔族王族の所為でクーガーの死を目の当たりにしてたんだっけ。


「あ、こういう時こそ賢者の石の出番じゃないのですです?」


「あ、そうかー。けんちゃんなら何か知っているかもねー」


 私は首から下げているけんちゃんを簡単に説明し、魔王軍の状況についてけんちゃんに尋ねる。


『答:現在、魔王軍とアルーダコール王家と対立有り。魔王軍は魔王が不在の為、指揮を四天王が取っており、その為アルダーコール王家が魔族統治の支配権を主張している状況。魔族の中でも魔王軍に従う者とアルダーコール王家に従う者に分かれている』


「なるほどな。確かにその状況なら魔王軍に従う者と魔族王族に従う者が出てきても不思議じゃないか。……って、魔王が不在ってどういう事だよ!?」


 あ、魔族の状況に納得してスルーするかと思ったけどちゃんと突っ込んだよ、アル君。


「まさか、もう既に魔王が倒されて居ないって事なのでしょうか……?」


 パトリシアがチラリと私を見ながら疑問を口にする。


 おそらくあの時私たちを逃がすために残ったきゅーちゃんたちの事を言っているのかもしれない。


 まぁ、パトリシアはアル君を命懸けで癒して気絶したから、そのあとの事はまた聞きでしかないのだけど、思い当たる事といえばきゅーちゃんたちの事しかないのだろう。


「いや、それは無い。もし本当に魔王が居ないとなれば、魔族は魔王軍には従わずそのアルダーコール王家に従っているだろう。それに何より、魔王の欠片が魔王が存在していることを証明している」


 ハルコ軍団長の答えに一同は確かにと納得する。


 そして魔王がこれまで存在していた証明として、魔王の欠片を所持していたマックスを見る。


 因みに、マックスの中の魔王の欠片は既に存在しない。


 アル君との再会して直ぐに、魔具ハンドMarkⅡで魔王の欠片を抜き取り、アル君に斬ってもらったから。


 オズなんかは魔王の欠片の攻撃不可能能力が惜しいから、直前までこのままでいこうと主張していたけど、魔王の欠片の影響力を考えると、これ以上不必要にマックスの中に宿らせっぱなしなのも頂けないと言う事で除去した。


 まぁ、これまでずっと所持しておいて今更と言うかもしれないが、今日は大丈夫でも明日は急にダメになる可能性がある以上、早急な排除が望まれた訳だ。


「ジルさん、賢者の石に魔王がどうなっているか聞けないですです?」


「うーんー、一応聞いてみるけど、多分答えられないと思うよー」


 何故魔王が不在なのか、魔王はまだ生きているのか、魔王の統治はどうなっているのかなど、現在の魔王に関することをけんちゃんに聞いてみる。


『不:魔王の現在の状態については……biー!biー!biー! system error! AliceSystemにaccessできません。質問を変えてください』


 やっぱり……


 お気に入りの皆の状況を聞いてもけんちゃんは答えられなかった。


 あの時何があったのか、それはそこに居た魔王に関しても同じなのだ。


「ふむ……少なくとも魔王が不在なのははっきりしている訳だ。それによって魔王軍とアルダーコール王家が対立している、と。状況をうまく利用すれば最小限の労力で魔族を無力化できるかもな」


 ハルコ軍団長は魔族の対立をも視野に入れて魔大陸での勇者パーティーの作戦を立案していく。


 中には、魔族王族と協力して魔王軍を弱体化させれないかと提案するけど、アル君やパトリシア達元勇者パーティーのメンバーにはいい顔をされなかった。


 まぁ、第1王子であるヴァインの性格を考慮しても協力体制を取りたくないし、なんといってもクーガーの件もある。


 だからと言って魔王軍と協力して魔族王族を排除するかと言えば、これまた不可と。


 魔族王族を排除しても肝心の魔王軍が現存していれば何の意味もないからね。


 結局は、魔王軍と魔族王族との対立にうまく割って入り立ち回り、魔王軍及び魔王を排除するとなった。


 魔族王族は魔王を倒した後の魔族の取り纏めをしてもらう為、ある程度生かしておく方向だ。


 魔王軍、魔族王族両方の指導者が居なくなって、魔族が好き勝手行動をさせない為でもある。


 魔大陸での新勇者パーティーの作戦の話し合いはもう数時間もかかった。














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