Side-72.ジルベール26 -勇者PT再結成2
「ジルベール様、お久しぶりです」
「パトリシアー! 久しぶりー!」
炎鍛冶都市フレイムタンにある拠点のアル君の屋敷に戻って数日後、パトリシアが到着した。
再び魔大陸へ突入するための再結成する勇者パーティーに参加するためだ。
2年ぶりに会ったパトリシアは、アル君同様に前とは違う雰囲気を纏っていた。
何ていうか、枢機卿としての貫禄が出ていたのだ。
2年前は唐突に就任した枢機卿と言うのもあり、また、枢機卿の業務は二の次で聖女として勇者パーティーに参加していた為、枢機卿としての実務経験がなかった。
でも今は、この2年間でかなり鍛えられたのか、名実ともに枢機卿に相応しい佇まいだ。
「おいおい、俺も忘れてもらっちゃ困るぜ」
パトリシアをフレイムタンまで連れてきたディーノだ。
私たちが本部であるプラチナナイト帝国に寄った時、再び勇者パーティーが結成されると言う事で、第5軍――支援軍で活躍していたディーノがパトリシアを迎えに行くことになっていた。
とは言え、西大陸の北部、しかも大動脈山脈を挟んだ聖王国セントルイズまで行って南端のフレイムタンまでこの短時間で行き来してきたディーノは流石だ。
「ディーノも久しぶりー! って、あれー? ファイちゃんも一緒に迎えに行くんじゃなかったっけー? ファイちゃんはー?」
「あー、ファイの奴、1年くらい前にエルヴィンを出ちまったらしいんだ。何でも1年くらいでエルヴィンでもう学ぶことはないと言って、修行の旅に出るって」
あらー、ファイちゃんったら。
まぁ、ファイちゃんは2年前の時点で既にエルフの中でも抜きんでて魔法の扱いが巧かったからね。
エルフの国の魔法はもう極めちゃったかー。
「まぁ、仕方ないからゼノスに手紙を届けてもらうことにしたよ。あいつ、今や世界を股に駆けるレターライダーだからな。どこかで会うかもしれないから。ついでにゴダーダにも届けてもらうように手紙を預けているよ」
「そっかー。魔王との決戦までに合流するのを祈るしかないねー」
と言うか、ゼノスはこの前会った時はそんなことを言わなかったのに。
前の時の性格なら自慢しそうなものだけど。
レターライダーとして世界を巡っているうちに変わったんだね、彼も。
「アルベルト様もお久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「あ、ああ。パトリシアも元気そうだな。し、暫く合わないうちに綺麗になったな」
「あら、前の私は綺麗じゃなかったとでも?」
「い、いや、そうじゃない。う、うん、前よりも随分と奇麗になった」
「うふふ、冗談ですよ。アルベルト様」
私がディーノと話していると、パトリシアがアル君とも話していた。
……うん、アル君揶揄われているね。
そう言えば、きゅーちゃんは前にパトリシアはアル君を好きだって言ってたけど、いい雰囲気を出している2人を見ればパトリシアの気持ちは変わってないのかも。
『アル君! 何しているの! そこでギューッと抱きしめるのよ! 再会の喜びを体全体で表現しないと! そんな奥手じゃパトリシアをほかの男に獲られちゃうよ!?』
「(ふーちゃんー。パトリシアはアル君のこと好きだけど、アル君もパトリシアの事を好きなのかなー?)」
『うーん、アル君もまんざらじゃなさそうだから気持ちは向いているかもね。ほら、アル君も10歳だしお年頃だし』
そう言えばそうか。
アル君も異性を気にするお年頃なんだったね。
『と言うか、ジルちゃんは好きな人はいないのー? ジルちゃんは公式年齢は12歳だけど、実年齢はもう29歳なんだよ。行き遅れじゃん!?』
「(んー、私はそう言うのはいいかなー? もう今更な気もするし、自分の事なんだけど好みの人って言うのが良く分からないしー。あ、そうだー。けんちゃんー、私に合う結婚相手って居るー?)」
けんちゃんなら私の結婚相手を探してくれるかも。
『(答:error!error!error! 当質問には答えられません! 当質問には答えられません!)』
「(えーー! ちょっとそれは酷いんじゃないのー!? けんちゃんー!)」
けんちゃんにしては気を利かせて念話で答えてくれたんだけど、私の結婚相手が不明だってのは酷いよー。
『ちょっと! けん坊、答えられないってどういう事よ!? errorってどういう事よ!? あたしたちのジルちゃんの一生の問題なのよ!? ちゃんと答えなさいよ!』
Errorの答えにふーちゃんも一緒になって抗議してくれる。
その間にもパトリシアとディーノはリュキとの再会も喜びながら、私のパーティーメンバーのアベルたちとの自己紹介もしていた。
ひと段落したところで、アル君の屋敷に新たな来訪者が訪れた。




