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この石には意志がある!  作者: 一狼
第3部 「神乙女」 / 第9章 収集家の集い・参集編
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Side-69.ジルベール23 -ボードランプ国

「おお! 久しぶりだな、ジルベール!」


「フレイドも久しぶりー」


 私の久しぶりの挨拶にフレイドの周囲に居た役人たちが驚愕の顔を見せる。


 近衛騎士なんかは今にも私に掴みかからんばかりに睨んでいた。


「お前の噂は聞いているぞ。随分と活躍しているじゃないか」


「そうかなー? まぁ、大陸中駆け巡っているけど、評価されるような活躍はしていないと思ったけどー?」


「言う事も相変わらずでけぇな。自分ではそう思ってなくてもやってることは変わりないか」


 そう言いながらフレイドは満面の笑みを見せていた。


 さっきまでの仏頂面が嘘のよう。


 私たちはあの後クローディアや連合軍の支援を受けて、現在魔王軍との最前線であるボードランプ国へと向かった。


 正確には、魔王軍の西大陸の拠点となっている港町ノーステンに近い炎鍛冶都市フレイムタンが最前線だ。


 とりあえず、私たちはボードランプ国の国王であるフレイドに挨拶しに来たの。


 久々の仲間との再会と、これから連合軍――勇者であるアル君との協力体制をとるために。


 で、連合軍総司令官やクローディアの通達があったのか、すんなりとフレイドに会う事が出来たんだけど……久々に会ったフレイドはかなりやつれていた。


 まぁ、2年でこれだけ復興しているのを見ればフレイドはかなり頑張った方だと思うけど、慣れない政務に嫌気がさしているみたい。


 もともとフレイドは国が滅んで帝王学なんかも学ばずに料理の旅ばかりしていた料理人だからね。


 周りの協力があるとはいえ、柄じゃない事をやるのはかなりの苦痛だろうね。


 私が挨拶に来たと分かった途端に満面の笑みを見せたほどだ。


「それにしても、フレイドのお髭は見慣れないねー」


「儂もこんなものは邪魔なんだが、ドワーフの王である以上髭は必要だからな」


 料理人であったフレイドは、ドワーフの象徴である髭を料理の邪魔だからと剃っていたんだけど、流石に王様ともなれば風格を出すためお髭が必要みたい。


「それで、そっちが今のジルベールの仲間か?」


「うんー、私と同じコレクター系のスキル持ちの仲間だよー。こっちがアベルで、こっちがオズー。こっちがフレイドと同じドワーフのララクレットー」


「……」


「よろしくな、料理バカ」


「国王陛下に置かれましてはお初にお目にかかりますですです」


 アベルは相変わらず口下手で、軽く頭を下げるだけ。


 オズも本当に相手が誰であろうと態度は変わらないで周囲のヘイトを稼いだりしている。


 ララクレットも言葉遣いが滅茶苦茶だけど、王様対応と言う事で畏まったりしていた。


「はははっ、ジルベールの仲間は個性的だな。だからこそ、噂が出るほどの活躍をしているんだろう。それとマックスも久しぶりだな」


『うん! フレイドもう料理やめちゃった? 僕、久々にフレイドの料理食べたいな!』


「そうかそうか。儂の料理がそんなに恋しかったか。どれ、一丁振舞ってやるか! 爺、今日の政務はもういいだろ。儂は今日は料理をするぞ!」


 フレイドは生き生きし始め、宰相――2年前にレジスタンスを纏めていた老人ドワーフ――に、これから私たちを持て成すための料理を作ると宣言する。


 宰相のお爺さんドワーフは仕方ないとばかりに深い溜息を吐く。


「その代わり、明日は今日の事務量が加わることを覚悟しておいてくださいね」


「そんなのは明日考える! よぉし! 今日は腕を振るって美味い飯を食わしてやるぞ!」


 フレイドが料理を作ると宣言したとたん、先ほどまで胡乱気に私たちを見ていた近衛騎士や役人の人たちが急にそわそわし始めた。


 後で聞いた話なんだけど、フレイドはこうしてたまに料理を振るう事があり、城の中の人にもお零れがあったりして、それが思いのほか城の中で働く人たちに人気なのだとか。


 2時間後、フレイドが作った大量の料理を前に私たちは食べまくる。


「美味しいー。フレイドの料理は相変わらず美味しいねー」


「うむ、美味い」


「流石料理バカだな。天下一品の料理じゃねぇか。うめぇ!」


「はわわ~。うまうまですですなのなの」


『がふがふっ! うーまーいーぞー! 久しぶりに食べたけどやっぱりフレイドの料理は美味い!』


「わはは、食え食え! 料理はまだまだあるぞ!」


「もぐもぐもぐもぐ。お腹すいた。お代わり」


 そして何故か居るメイド見習いシーザ。


 シーザは故郷のミラーワルド王国に戻らず、フレイド付きのメイドとしてボードランプ国で頑張っているらしい。


 そして相変わらずの腹ペコキャラ。


 フレイドが料理を振舞う時だけ、こうしてフレイドの傍で一緒に食べる事を許されているみたい。


 お腹を満たしたところで私たちはまったりしてる。


 そこへフレイドからこれから向かう最前線での注意と言うか、助言を貰った。


「アルベルトの奴を注意して見てやってくれ。あいつ、2年間ずっとブラストールとヒビキを死なせてしまった自責の念に捕らわれているし、最前線で兵を引っ張っていくのに頑張りすぎだ。このままだと遠からず壊れてしまう可能性もある。尤も姉であるジルベールが会えば、それも緩和されるだろうがな」












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