Side-58.ジルベール12 -エンドワの村
「マックスー、久しぶりー。私にとっては2年でもマックスにとっては10年以上になるかなー?」
私は墓石に花を添え、手を合わせて拝む。
『ママ、このお墓は誰のお墓?』
「マックスの名づけ元になった人のお墓よー。私を守って死んじゃったのー」
『そっか……。えーと、マックス? 大丈夫だよ。僕が代わりにママを守るから! だから安らかに眠ってね』
マックスはマックスの墓石に鼻を擦りつけてお祈りの代わりにをする。
「またいつか来るねー、マックスー。じゃあ行こうかー、マックスー」
『うん!』
私たちがみんなの元へ戻ると、いまだ興奮冷めやらぬようで、3人の挙動がおかしい状態だった。
「むぅ……! コレクション魂をそそる剣がたくさん……! 何だここは。天国か!?」
「はわわ、ビックリですです。伝説のエンシェントドワーフがこんなに居るなのなの! あり得ない光景ですです」
「エンドワの武器防具……! これ1つでも持ち帰ったらとんでもない値段が付くぞ……!」
「わははっ! いいリアクションするじゃねぇか、若者よ。ジルが連れてきただけあって、一癖も二癖もありやがる」
「シヴァおじーちゃん、急にゴメンねー」
「いいって事よ。ここはほとんど閉鎖された空間だ。部外者が大歓迎だぜ」
このエンドワの村の代表であるシヴァおじーちゃんは急に訪れた私たちを歓迎してくれた。
ここは迷宮大森林の最奥にあるエンシェントドワーフが住まう村。
勿論、この村は秘境と言っていいほど人が訪れることは無い。
まぁ、迷宮大森林そのものが不可侵の地域だからね。
5年前、私にとっては22年前に迷宮大森林で時空波紋に巻き込まれた後、辿り着いた先がこのエンドワの村だった。
迷宮大森林の最奥だけあって、周辺のモンスターの脅威度はB級は当たり前、A級はざらで、S級も普通に居たりする秘境区域だ。
当時は直ぐにでも迷宮大森林を脱出したかったが、流石にこのレベルのモンスターがうようよいる森を抜けるのは至難の業だったため、きゅーちゃんと相談した結果、このエンドワ村で力を付けてから迷宮大森林を踏破することにしたのだ。
まぁ、そんなわけで、迷宮大森林を抜けるのに外の時間で3年、中の時間で20年もかかった訳。
「はっ!? と言う事は、巨乳の装備はこのエンシェントドワーフが造った作品か!? おまっ、それがどんだけ価値のあるものか分かって装備していたのかよ!?」
商人でもあるオズが私の装備に目を付け慄いていた。
うん、森を抜ける為にシヴァおじーちゃんたちに協力してもらって私の防具を造ってもらった。
価値があるとは言っても、私にとってはおじーちゃんたちの防具だから売るとかそう言うのは無いから、ゴメンねオズ。
「あ、ジルさん。お墓参りは終わったなのなの?」
「うんー、マックスも連れてこられたのは良かったよー」
当時、私を助けてくれたマックスの遺体は、いつかマックスの故郷に連れて帰るためにかめちゃんの中に仕舞っていたけど、エンドワの村に辿り着いた時、故郷に連れて帰るのは時間が掛かると判明したからこのエンドワの村に埋葬することにしたのだ。
まぁ、そのお陰でなかなか来れなくてマックスには申し訳ないけど。
「おう、ジル。お前の装備の点検をしてやるよ。かなりがたが来てるだろ」
「ありがとー。アキータおじーちゃん」
「せっかくだからジルのお仲間さんの装備も造ってやるよ」
アキータおじーちゃんの他にもチワーワおじーちゃんや、プドールおじーちゃんたちが任せとけとばかりに頼もしいことを言ってくれる。
「いいのー? それじゃあ、素材とか獲ってこないとねー」
「がはは、そうだな。前の時みたいに頼むか。いい素材を頼むぜ」
私とおじーちゃんたちのやり取りを見ていたアベルたちは狂喜乱舞する。
「任せろ! 俺に獲ってこれない素材は無い!」
「ひゃっほー! エンドワの武器防具! あ、装備品だけでなく売買用の武器防具も頼みたいんだけど!」
「はわわ、ドワーフの祖とも言えるエンシェントドワーフの装備を貰るなんてなのなの!」
いつもは無口なアベルが饒舌になっているし。
あ、出来ればなるべく抑えて市場に流してね、オズ。
ララクレットにはこれ以上ない装備品になるね。
私たちは金色地竜を目指す前に、エンドワの村で装備を一新するため暫く厄介になることになった。




