Side-57.ジルベール11 -それぞれの夜
ララクレットとカーマベルの出会いは5年前に遡る。
当時10歳になったばかりのララクレットをカーマベルがパーティーが誘ったらしい。
と言うのも、その時のカーマベルのパーティーメンバーはゴダーダとモレッツァの2人。
その2人のうち1人が問題だった。
以前ゴダーダも言っていたけど、モレッツァの方向音痴は破滅的で、気が付いたら行方不明なのは日常茶飯事だとか。
まだ5年前の時は、今よりマシだったらしいけど、あくまでマシと言う程度だ。
しょっちゅう居なくなるパーティーメンバーが居る為、パーティーの補強と言う意味でララクレットを加えたのだけど、1年もしないうちにパーティーから脱退。しかも黙っての脱退ともなれば文句の1つも言いたくなるのは分かる。
「私が当時どれだけ苦労したか……それなのに、貴女はちゃっかりしっかり豪勢なパーティーメンバーに恵まれて!」
「ララクレットが悪い」
「うん、ちびっ子が悪いな」
「流石に黙っていなくなっちゃうのはよくないよー」
流石に現パーティーメンバーからも非難めいた言葉をいただきいたたまれなくなったララクレットは視線を外しながらごまかす様に笑う。
「あはは~、カーマベルには申し訳なかったと思うですです。でもあたしも当時は色々あったなのなの」
「色々って何よ。言ってごらんなさい。私が一から十、全部否定してあげるから」
「色々は色々ですです。言いたくはないなのなの」
「むきー! ララクレットの癖に生意気よ! 大体なんで貴女が『幻』と『天剣』と一緒なのよ」
「あ、それはゴダーダ繋がりですです。カーマベルもゴダーダが勇者パーティーに入っていたことは聞いているなのなの」
ゴダーダは今はモレッツァを探して世界中を巡っているけど、その代わりと言う訳ではないけど、ララクレットを紹介してもらったのだ。
「後は、スキル繋がりなのなの」
「貴女のスキルは【ボトルコレクター】だったわね。確かに私も当時は大変助かったけど。ああ、『幻』は【ストーンコレクター】、『天剣』は【ソードコレクター】だったわね。……なるほど、ララクレットがパーティーメンバーに選ばれた理由がわかったわ。だからと言って黙っていなくなった事は許さないけどね!」
話しているうちに当時の怒りが再び再燃したのか、アイアンクローでララクレットの頭を掴み持ち上げる。
「ノーノ―! ギブギブ! 放すなのなの!」
「……はぁ、これ以上当時の事を言っても仕方ないわね。いいわ、夕食で手を打ってあげる」
半ば諦めたようにカーマベルは手を放しララクレットを開放した。
「痛た……、カーマベルの馬鹿力は健在なのなの。夕食で手を打ってもらえるのならいくらでも奢るですです」
と言う訳で、パーティーの補給をした後、積もる話(主に恨み言だろうけど)もあるだろうし、ララクレットはカーマベルと一緒に夕食を摂ることになった。
残ったアベルとオズは図らずしも男だけになったと言う事で、普段行けない夜の街へ繰り出すみたい。
敢えてどこに行ったのかは聞かない。
私はミニィさんと5年前の当時の思い出と、この5年間の出来事に花を咲かせながら楽しい夕食をする。
因みにマックスも一緒だ。
ミニィさんはマックスをモフりながら食事を楽しんでいた。
次の日、宿で朝食の為に降りてきたララクレットは随分とげっそりしていた。
なんでもカーマベルはかなりの大食漢なのを忘れていたらしく、奢った夕食代は口から魂が出るほどだったとか。
で、男2人で夜の街に繰り出したアベルとオズも羽目を外したらしく、かなりの金額を消費したらしい。
「うばぁー、カーマベル、食い過ぎなのなの。あたしのお財布にダイレクトアタック……容赦ないですです……」
「やべーやべーやべー、昨日ははしゃぎ過ぎた。まさか一晩であれだけ使うとは……」
「むぅ……後悔先に立たず」
3人とも頭を抱えながら朝食を摂っていた。
『ママ、3人ともどうしたの?』
「マックスは気にしないでいいよー。3人は3人とも自業自得だからー」
とは言え、このままじゃパーティーの士気に関わるしね。
もう、しょうがないなー。
「金策でこの町で依頼を受けるー?」
「いいのか? 1日でも早く魔王の欠片を何とかしたいんじゃ?」
「早いには越したことはないけど、1日や2日じゃそんなに変わらないでしょー。それに、1つの魔王の欠片の所在は判明しているし、探さなきゃならないのは実質1つだしねー」
残り3つの魔王の欠片は、1つはマックスが所持しているし、もう1つは迷宮大森林に居る金色地竜が所持、最後の1つはジョージョーだ。
ジョージョーだけは居場所がはっきりしない。
何せ時空波紋でどこにでも神出鬼没だから。
「お言葉に甘えよう」
「助かるなのなの。パーティーの財産は十分あるだけ、自分の懐が寒いと悲しいなのなの」
私の提案にアベルもララクレットも歓喜の表情を見せる。
と言う訳で、私たち『収集家の集い』はサーズの町でもう数日滞在することになった。




