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この石には意志がある!  作者: 一狼
第3章 ブロークンハート大陸・海渡編
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026.テンプレ

「ここはガキの来るところじゃねぇ。オママゴトなら家でやってな」


 テンプレキタコレ!


 掲示板ボードを見ていたジルにちょっかい掛けて来たのは如何にも不良っぽい咬ませ犬3匹だった。


 一応、【鑑定】しておくか。


 これで実は優秀な冒険者とかだったりしたらこっちがかませさんになっちまうからな。




 名前:トンヌラ

 種族:ヒューマン

 状態:不健康

 スキル:戦士Lv25

 冒険者ランク:D

 備考:自称サーズ1のイケてる冒険者



 名前:チンパ

 種族:獣人(猿)

 状態:興奮

 スキル:盗賊Lv18

 冒険者ランク:D

 備考:ロリコンキング




 名前:カングルン

 種族:ヒューマン

 状態:健康

 スキル:重戦士Lv21

 冒険者ランク:D

 備考:カッコつけマン




 うん、やっぱりかませさんだ。


「何でー? 私も冒険者だよー」


 ジルはそう言ってギルドカードを見せる。


「はぁぁ!? てめぇみてぇなガキが冒険者だと!? 笑わせるな! ここはな、東大陸開拓の最前線なんだぜ。俺達は命懸けでモンスターを討伐して道を切り拓いているんだ! てめぇみてぇなガキが遊びで来るような場所じゃねぇんだよ!」


 ……偉そうなことを言っている割には冒険者ランクDなんだよな。


 不良にありがちなメンツに拘る輩か?


「でも、モンスターを倒すだけが冒険者の仕事じゃないでしょー? ほらー、町中でこなす依頼もあるよー」


「それは軟弱な奴がやるような奴だよ。サーズの冒険者として情けねぇがな。だが、てめぇはそれ以前の問題だ。てめぇみてぇなガキが冒険者を気取ってママゴトをやってるとサーズの冒険者ギルドはガキでも出来るとか、ガキを囮にしているとかで評判が落ちるんだよ」


「子供が冒険者やっちゃいけないってルールも無いよー? 評判だって依頼を熟していけばすぐ覆るよー」


 まぁ、最初は子供のジルが冒険者をやってることが噂になるが、確かにジルの実力じゃ直ぐに正当な評価が得られるだろうな。


「はぁぁぁっ!? てめぇがこの最前線でモンスターを倒せるって言うのかよ!? ふざけるのも大概にしな!」


「ヒュー、言うねぇ、この子」


「ハァハァ、なぁアニキ、この子お持ち帰りしていい?」


 別に煽っている訳じゃないのに怒り心頭のトンヌラ。


 沸点低すぎね?


 カングルンは逆に面白がっている。


 チンパは……ちょっとヤバい奴になってるな。


 普段からこうなのか、敢えて無視しているのか……トンヌラは頭に血が昇っていて気付いてなさそうだが。


「それにー、評判を気にしているみたいだけど、貴方のその態度が既にギルドの評判を落としているように見えるよー」


「……っ! このっ!!」


 ジルの指摘に遂にメーターが振り切れたのか、剣を抜こうと手を掛ける。


 おいおい、ギルド内で刃物沙汰にするつもりか、こいつ。


 だが、これまたテンプレの如く、待ったをかける人物が現れる。


「はいそこまで」


 トンヌラが剣を抜こうとして手を押さえて割り込んできた若い男――うん、イケメンだな。テンプレテンプレ。


「トンヌラ、その子の言う通りだぜ。評判を気にするならまずお前のその行動を見直せ。他の町からは無法者が好き勝手暴れているって言われているぜ」


「っ! それは俺じゃねぇ! 他の奴らだ!」


 割り込んできた男の手を払い慌てて距離を取るトンヌラ。


「あのなぁ……今の態度もその評判の内の1つなんだよ。あとついでに言わせてもらえば、お前相手の強さを見る目なさすぎ。この子は少なくともこの町でやっていけるだけの実力はあるぜ」


「それはあんたの方じゃないのか、韋駄天。俺にはとてもじゃないが強いとは思えねぇ」


「ま、それはおいおい分かるさ。今日の所はこれくらいにしておけ。これ以上騒ぐとギルドが出っ張るぜ」


「……ちっ! おい! 行くぞお前ら!」


「えーっ!? 女の子は!? 女の子は!?」


「ま、精々法螺吹きにならない様にな」


 トンヌラは苛立ちを隠さないまま冒険者ギルドから出ていき、チンパとカングルンが付いていく。


「えーとー、ありがとうー?」


 ジルは男にテンプレ3人組を追い返してくれたお礼?を言う。


「いえいえ、どういたしまして。と言うか、マジでキミ、冒険者なんだよね?」


「うんー、そうだよー」


「この歳で冒険者かぁ……何か訳ありだったりする?」


「西大陸に行きたいのー。なる早でー。その為にお金が必要で、依頼を受けに来たのー」


「西大陸と来たか。確かにお金を一気に稼ぐにはモンスター討伐が手っ取り早いからな。ゴブリンやグレイウルフでも構わないが、もっと稼ぎたいんだったら明日の朝一で依頼を確認しに来た方がいいぜ」


「そっかー、ありがとうーおにーさんー」


「あと、ああいった輩は無視するのが一番だぜ。話をすると余計に油に火を注ぐことになるからな」


「うんー、分かったー」


「今度から気を付けろよ。じゃぁまたな(・・・)、お嬢ちゃん」


 そう言いながら男は立ち去る。


 またなって……ええぇ~やっぱりこれもテンプレか? 再会率100%じゃねぇか、これ。


 ああ、悪い奴じゃなさそうだけど一応【鑑定】で確認しておくか。




 名前:マックス

 種族:ヒューマン

 状態:超健康

 二つ名:韋駄天

 スキル:韋駄天Lv2

 冒険者ランク:B

 備考:最速のソロ冒険者




 おお! 冒険者ランクB級! しかも二つ名!


 スキルの【韋駄天】は凄そうだし、強そうだな。


 そしてソロ冒険者と言う事は、さっきのテンプレ3人組とは関係ないみたいだ。


 ちょっとテンプレ3人組と組んでジルを嵌めようとしたのか勘繰ったが杞憂だったな。


「(きゅーちゃんー、どうするー?)」


『あー、今日の所はさっきの男の助言に従って、明日もう一度依頼を見に来ようぜ。後は受付のお姉さんに西大陸の行き方と、今日の止まる宿を聞こう』


「(分かったー)」












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