236.魔王の強さの秘密
『体調の方はどうだ?』
「(さっきよりはだいぶ良くなったよー)」
ジョージョーとエーデリカと戦ってからジルは30分ほど休憩を取っていた。
エーデリカの魔王の欠片を取り出すのにかなりの体力を消耗したからだ。
『よし、まだ十分じゃないだろうが、早いとこアルベルトのところへ行かないとな』
「(うんー、早くアル君の応援に行かないとー)」
もう既に魔王との戦いが始まっているだろう、
まさかやられているとは思わないが、一刻も早く駆けつけるのに越したことはないからな。
「マックスー、魔王のところへ行くよー」
『うん、分かったよママ!』
ジルが休息している間、見張りを頼んでいたマックスはいよいよかとばかりに己を奮い立たせる。
少しでも体力を回復するため、ジルはマックスに乗って魔王城ドルラメエへと侵入する。
マックスの疾走もあってか、10分もしないうちに魔王が居ると思われる謁見の間に辿り着いた。
そして扉の奥から戦闘音が聞こえていた。
よし、まだ戦っている。やられていない。
と、その前に……
「マックスー、マックスは戦いに参加しないで後方で援護ねー」
『えー!? 何で!? ボクも戦うよ!』
「駄目よー。マックスの魔王の欠片からどんな影響を受けるか分からないからねー」
そう、マックスの所持している魔王の欠片を通じて操られる可能性もあるからな。
『いやだ! ボクも戦う!』
「ダメダメー。聞き分けの無い子は嫌いよー」
『うーーー……、分かった。後ろで援護する……』
何とかマックスを説得し、ジルは扉を開ける。
そこにはボロボロになったアルベルト達が居て、奥には魔王と思われる、赤髪の妖魔族の女は涼し気に佇んでいた。
「アル君ー!」
「姉さん……ちぇ、姉さんが来るまで片付けることが出来なかったか」
「アル君ボロボロじゃないのー」
「大丈夫だよ、そこまでひどい状態じゃないから……なっ!」
声を掛けている間にも魔王は容赦なくアルベルト達に攻撃魔法を仕掛けてくる。
てか、魔王! 少しくらい気を利かせろよ!
確かにボロボロに見えるアルベルト達だが、よく見ればボロボロなのは装備や身なりだけで、体の方は傷ついているということはなさそうだった。
まぁ、パトリシアが居るから【治癒魔法】ですぐ傷は癒されるからな。
「パトリシアー、戦況はどうなっているのー?」
「ジルベール様……状況は芳しくありません。勇者であるアルベルト様の攻撃は通じているのですが、魔王の力が大きすぎて効果がそれほど見込めていない状況です」
確かに見たところ、ゴダーダとファイが隙を作りつつ、アルベルトがその隙を突いて攻撃をしているのだが、簡単にあしらわれたり、魔王に付けた傷がそれほど大したことがなかったりしている。
って、それだと直撃コースだぞ、アルベルト!
「アル君ー、危ないー!」
ジルの注意の声が聞こえているにも拘らず、アルベルトは魔王の放った炎に自ら突っ込んでいく。
魔王の炎の餌食になったと思ったら、その炎は跳ね返り、魔王へと向かって行く。
魔王はそれを煩わし気に払い、アルベルトはその隙を突いて攻撃するも、やはり簡単にあしらわれていた。
しかもあしらったのは、魔王の周囲に浮かぶ3つの光だ。
何だ……あの光? ちょっと気になるな……って、それは今はいい。
何だ、さっきのアルベルトは!?
「アル君無事だったー。良かったー」
「アルベルト様は聖剣の2つ目の力を使う事が出来たのです」
何っ!?
俺はアルベルトの持っている流聖剣アクセレーターを【鑑定】する。
名称:アクセレーター
属性:聖
能力:アクセル、反射、■■■■
状態:封印状態【第二解放】
備考:所有条件【勇者】
おおっ! 確かに封印が1つ解けている!
アルベルトの奴、この土壇場で覚醒するとは! やるじゃないか!
……って、第二開放状態のアルベルトでも魔王に致命傷を与えることが出来ないのかっ!?
魔王の奴どんだけなんだよ!
名前:エーデルファルカ・エーデルヴァルト
種族:魔族
状態:%■死$
スキル:魔王Lv5
二つ名:魔王
備考:歴代最強の魔王。#&の魔王。復讐の魔王
思わず魔王を【鑑定】したが、思ったより大したことがなさそうな……
何故か一部が文字化けしているが、【魔王】のLvが5とか。
……いや、違う!
【魔王】スキルは称号系、つまり特殊系のスキルだ。
特殊系のスキルは基本Lvが存在しない。
Lvが付いている特殊系のスキルは強力になる。
言わば職系、技能系、特化系のLv99の限界突破したスキルと言えよう。
S級冒険者の『暴風』モレッツァの【武神】Lv199や、魔族最強と言われていた深海のディーディーの【水魔法】Lv199みたいなものだ。
だが、ジルでさえ【ストーンコレクター】はLv3だ。
特殊系でLv3でもあり得ないLvなのだが、魔王はなんとそれすらを超えてLv5だ。
規格外にも程があるぞ!?
アルベルトやゴダーダたちの猛攻をこうも涼し気に受け流しているのはこれが理由か!
まぁ、だからと言ってここまで来て諦めるとかはあり得ない。
『ジル、アルベルトをここへ呼べ。起死回生の魔法を掛けてやる』
「(うんー、分かったー)」
ジルも体調は万全ではないし、アルベルト達も怪我は癒されているものの精神的にも体力的にも消耗状態だからな。
これ以上グダグダ戦闘を長引かせるのも不利になる。
だったらここで一撃を掛けるのも悪くはない。
……いざとなったら俺の奥の手があるからな。
「パトリシアー、ゴダーダとファイの援護をお願いー。アル君ー!! こっちに来てー!」




