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この石には意志がある!  作者: 一狼
第8章 レフトウイング大陸・決戦編
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Side-45.アルベルト8

 俺たち4人は魔王四天王を姉さんたちに任せ、魔王城ドルラメエの中を走る。


 幸いなことに、魔王城の中にはほかに魔族は居ないらしく、今のところは戦闘無しで魔王が居ると思われる謁見の間へと向かっていた。


「魔王城って言うから、もっと、こう、おどろおどろした内部を思い浮かべていたッスけど、意外なことに奇麗っスね」


 それは俺も思っていたことだ。


 ゴダーダが言うように、魔王城と言うと魔族の巣窟らしく、薄暗く気味が悪い雰囲気が漂っているものと思っていた。


 だが、この魔王城は神殿と言っていいほど様式美に整った壮言な作りになっている。


 しかも、普通であれば侵入者を阻むための入り組んだ作りになっているものだが、これまでの通ってきた道はほぼ一本道だ。


 一応、勇人部隊時に座学で習った知識から言えば、こういった一本道は絶対的強者としての見せつける意味合いだったはず。


 だからこその、奇麗に整った内部の造りなのだろう。


「気に入りませんね。魔王ともあろう者が、神を気取っているつもりなのでしょうか。これ程の造りの城は魔王には相応しくありません」


 魔王のイメージに沿わないと、パトリシアが何気に魔王をディスる。


「……でも、悪趣味じゃない」


「まぁ、確かにそれはな」


 ファイの意見には俺も賛成だ。


 普通だったら成金趣味な貴族とかは、無駄に金をかけて金品をちりばめた品を並べたり、装飾を豪華にしたりと、見栄えだけの中身が無いものだったりする。


 尤も、俺はそこまで審美眼は無いけど。


 だが、この魔王城は無駄な装飾は無く、それでいて要所要所の気ないモニュメントなどで周囲との調和がとれていた。


 パトリシアが悔しがるのも頷ける。


「無駄なおしゃべりはここまでだな。……着いたぞ、目的の謁見の間だ」


 大きな扉の前で、俺たち4人に緊張が走る。


 ようやくだ。ようやくここまで来た。


「開けるぞ」


 俺の言葉にパトリシア、ゴダーダ、ファイが頷く。


 両開きのドアをゆっくり開け、俺は中を窺う。


 謁見の間だけあってかなり広く、その奥の玉座には1人の魔族が座っていた。


 気怠そうに……いや、無表情のままで頬づえをついており、こちらを見ている。


 エーデリカの母親と言うだけあってその顔はそっくりで、妖魔族の特徴の1つである山羊のような角が生えていた。


「よく来た。入るがよい」


 俺たちはそれぞれの武器を構えゆっくり謁見の間へ歩を進める。


 俺が魔王の前に辿り着くと、魔王は再び口を開く。


 因みに、他のメンバーは直ぐにでも戦闘を開始できるよう、それぞれの距離を取っている。


「妾が魔王エーデルファルカ・エーデルヴァルトである」


「俺は……勇者アルベルトだ。人族の宿敵・魔王、討たせてもらうぞ」


「話に聞いていた通り幼いな。まぁよい。かかってくるがいい」


 おいおいおいおい、座ったままで俺たちの相手をするつもりか?


 ふざけやがって。


 いくら何でも俺たちを舐めすぎだ!


 効かないのは分かっているが、牽制と意識を割くためにゴダーダが矢を射る。


 エンシェントドワーフ作のパワーストリングボウ――クリティカルダンスの大弓から放たれた一射が魔王に突き刺さるが、予測通り【魔王】のスキルの効果によりゴダーダの一撃は防がれた。


 魔王は視線をゴダーダの方へと向け、片手を向ける。


「【ファイヤーボール】」


 放たれた火球は人を飲み込むほどの大きさで、一瞬にしてゴダーダに迫る。


「【アイギス】!!」


 それをパトリシアが【聖魔法】で防ぐ。


 そう簡単にパトリシアの防御を抜けると思うなよ。


 それと、そっちに意識を向けていていいのか?


 俺は直ぐそこに迫っているぞ!


 ゴダーダの一射と同時に、俺は側面から魔王へと迫っていた。


 流聖剣アクセレーターの〝アクセル″を使ってほぼ一瞬だ。


「【ハイパワースラッシュ】!!」


 だが、俺の不意を突いた初撃の一撃はあっさりと防がれた。


 魔王の人差し指1本で。


「聖剣を使ったとしてもこの程度か」


 魔王のその言葉に俺は怒りを覚える。


 その舐め腐った態度、後悔させてやる!


 だけど、それと同時に俺は魔王に恐ろしさも感じた。


 喜びも焦りも怒りもなく、ただただその無表情が不気味に思えたからだ。


 俺は怒りを糧に奮い立たせ、〝アクセル″で立ち位置を変えながら連続で【剣】スキルを放つ。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 【スラッシュストライク】! 【ダブルラッシュ】! 【スクエアエッジ】! 【セイバースラッシュ】!!」


 魔王は、それを片手でいなし続けていた。


 ……マジ、か。


 ここまで差があるのか?


 俺は……俺たちは本当に魔王に勝てるのか?









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