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この石には意志がある!  作者: 一狼
第8章 レフトウイング大陸・決戦編
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Side-39.ヒビキ6

 なりふり構わなくなったユーユーによる斬撃【覇道剣】と砲撃【覇道剣】があたしとブラストールさんを襲う。


 無論、城塞都市アイファサの町中にも少なからず被害が及んでいたけど。


「【クリスタルプリズンガード】!」


 あたしの前に出たブラストールさんが楯を構え、スキルを発動する。


 あたしとブラストールさんを透明なクリスタルが覆い、ユーユーの砲撃【覇道剣】を防ぐ。


 尤も、完全にとはいかず、暫く防いでいたが次第に罅が入り【クリスタルプリズンガード】は割れてしまう。


 だけどその僅かな時間防いでくれているだけでも十分。


 【クリスタルプリズンガード】が割れる瞬間、あたしは飛び出しユーユーに【刀】スキルの居合をお見舞いする。


「【桜花一文字】!」


「させません! 【フラクタルシールド】!」


 とっさにユーユーが放った小さな楯の群れに、あたしの居合が防がれる。


 【覇道剣】の隙を突いた反撃だったけど、やっぱり防がれてしまった。


「まさか、youたちがここまで私に対抗できるとは思っても見ませんでした。認めましょう、youは私の好敵手だと」


「唐突に何でござるか? 負けを認めるとかでござるか?」


 見下されていたユーユーから、まさかの好敵手認定。


 嬉しい反面、敵に認められるとは複雑な気分だ。


「それこそまさかですよ。好敵手と認めたのは、you達へ送る最後の言葉だからです。これで、本当に決着です。youたちと言う好敵手が居たことを私は忘れません」


 ―っ!


 とうとう最後の攻撃って訳ね。


 上段に剣を構えたユーユーから【覇道圏】のエネルギーが高まり始める。


「ブラストール殿、……ううん、ブラストールさん、最後まで、あたしをちゃんと守ってね? この戦いが終わったら、ちゃんと返事をするから」


「……っ、ああ。任せな。命に代えてもヒビキを守ってやるよ」


 あたしも、最後の攻撃の為に力を溜める。


 今のあたしの出来る最高の攻撃。


「【覇道剣・天嶮】」


 上空に伸ばした剣から砲撃【覇道剣】が出るように光の柱が立ち、ユーユーはそのまま光の柱を振り下ろす。


 本当に町の被害は二の次みたい。


 【覇道圏】で高まったエネルギーを砲撃【覇道剣】と斬撃【覇道剣】の同時使用での攻撃だ。


 あたしはそれを真正面から迎え撃つ……ように見せかける。


「【縮地・閃】」


 あれから一度も成功してなかった【縮地・閃】を再び発動させて、周囲の景色がゆっくりとなる。


 直前で【覇道剣・天嶮】を躱し、振り下ろされた爆発エネルギーに紛れてユーユーへと一瞬で間合いを詰める。


 取ったっ!


 もうこの間合いからは逃れられない!


 あたしは【砲閃華・轟】のスキルを放とうと――


「――え?」


 あたしの足に鎖が絡みついていた。


 これは【罠魔法】の【マインボムバインド】。


 地雷の様に踏み抜くことで、【バインド】の魔法を発動させるトラップだ。


 この程度の鎖なら簡単に引きちぎれるが、縮地での高速の移動だったため動きが一瞬阻害された。


 そしてその一瞬で十分だった、ユーユーの本当の攻撃は。


「【覇道剣・穿】


 ああ、躱しきれない。


 もう駄目だと、そう思った時。


 あたしの目の前に彼が立ち塞がる。


 だけど、これまでどんな攻撃も防いできた彼のスキルも、凄まじいエネルギーを持つはずの彼の楯もユーユーの攻撃を防ぐことは出来ず、ユーユーの剣が彼の体を貫く。


「ぐふっ……」


「ブラストールさん!!」


「いま、だ。ヒビキ……」


 彼は体を剣で貫かれながらもあたしを守ろうと体を自ら楯にし、彼は剣と楯を捨てユーユーの剣を持つ手を掴み取る。


「ちぃ、離しなさい!」


 ユーユーがブラストールさんから剣を抜こうと必死に振りほどこうとするが、ブラストールさんはその手を離さない。


 ……あ、これは、ブラストールさんの作ってくれたチャンスだ。


 ここで決めなきゃ女が廃る!!


「【砲閃華・轟】!」


 あたしの刀がユーユーの心臓を貫く。


「……見事、です。この私が敗れる、ですか。ふふふ、敗れたというのに気分は晴れ晴れとしています。敗れたのがyouだから、ですかね……」


 ユーユーがあたしを絶賛してくれているが、今はそれどころじゃない。


「ブラストールさん!」


 ユーユーの剣を体に生やしたまま、ブラストールさんは地面へ倒れる。


 致命傷だ。ユーユーの剣は正確に心臓を貫いていた。


「……やった、か?」


「うん、うん、ブラストールさんのお陰で勝ったよ!」


「そう、か。そいつは良かった。……ちゃんとヒビキを守れて、良かったよ」


「うん、うん、ブラストールさんは、ちゃんと命がけであたしを守ってくれたよ。だから、だから、こんなところで死んだら嫌だよ」


「……はは、俺っち、死なねぇよ。まだ、ヒビキの答えを、ちゃんと………………」


 ブラストールさんは、それっきり。


 あ、ああ、あああ、ああああああああああああっ……!!


「……なる、ほど。私はyouたちの愛の力に、敗れたのですね。ふふふ、愛の力。チープな言葉ですが、死にゆく身としては…………」


 ユーユーも何か言っていたけど最後には何も言わなくなったけど、今のあたしにはそれを聞いている余裕がなかった。


 まだ、まだ間に合う!


 パトリシアさんに観てもらえれば、助かる。生き返らせられる!


 あたしはユーユーの剣を抜き、傷を塞いでブラストールさんを背負う。


 早く、一刻でも早くパトリシアさんの元へ行かないと。


 ズンッ!


 駆け出したあたしの体を衝撃が襲う。


「………え?」


 体が動かない。


 まるで地面に縫い付けられたように。


 ……ううん。本当に地面に縫い付けられていた。


 お腹から大剣が生えて、それが地面に刺さっている。


 背中を見れば、背負ったブラストールさんごと大剣が付き刺さっていた。


「………あ」


 遅れて口から血を吐き出す。


 ………何が。


「ヒャッハーー! やった、やったぜ! ユーユー様を倒した勇者の仲間を俺が倒した! これで俺も魔王軍の幹部だ! いや、ユーユー様亡き今は、俺様が新たな四天王か!?」


 あたしの背後で魔族がはしゃいでいた。


 どこかで見たことがあると思ったら、最初に居た門番の1人だった。


「さぁて、確実にとどめを刺しておこう。俺の四天王入りを確実にするために」


 大量の血を吐いて、意識が朦朧としてきた。


 こんな事をしている場合じゃないのに。


 早く、ブラストールさんを、パトリシアさんの元へ、連れて、いか、な、い、と………












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― 新着の感想 ―
[一言] 身を呈してヒビキを守り抜いた兄貴、死亡フラグを回収し、ヒビキがユーユーと決着を着け、兄貴をパトリシアの元へ届けようとするも、大剣で刺され瀕死。この分だと兄貴はもう…。 まさか門番が四天王入…
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