表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この石には意志がある!  作者: 一狼
第8章 レフトウイング大陸・決戦編
263/357

224.最終決戦開始

 アルベルト達勇者一行の旅はクライマックスを迎えようとしていた。


 道中、他の町やら人族牧場などがあったが、それらはほぼ素通りし、一刻でも早く魔王を討伐するために馬車を走らせた。


 そうして旅の最終目的である魔王が住まう魔王城の目前までに、ようやく辿り着くことが出来たのだ。


 今ジルたちは魔王城が居を構えるドンモアイダ山を囲む城壁都市アイファサの近くの森で隠れて様子を窺っている。


 一同は最終決戦を目の前にしてか、かなり口数が少なくなっており、場の空気も重く沈んだものとなっていた。


 ……いや、これは最終決戦の重圧によるものだけじゃない。


 最初の犠牲者――クーガーが死んだことによる影響が大きいのだ。


 これまではそれなりに会話もしており明るい空気が漂っていたのだが、クーガーが死んでからはそれぞれ思うところがあるのか、ふと何気ない拍子に何かを思い出し口を閉じてしまったり、それをほかの仲間に気付かれたりして気を使われていたりした。


 そこに、ついに来た最終決戦だ。


 物凄いプレッシャーがアルベルト達を襲っているのだろう。


 まぁ、だからと言っていつまでも落ち込んでばかりはいられない。


「目的である魔王が居る魔王城はドンモアイダ山の中腹に居を構えております。そして見てわかる通りドンモアイダ山を城壁で囲っており、魔王城への唯一の入り口が城壁都市アイファサとなっております」


 場の空気を払拭するわけではないが、クローディアはこれまで調べた魔王城についての概要を説明する。


 どういう理由でそうしたのかは分からないが、城壁都市アイファサを迂回してドンモアイダ山を登ろうとしても、それをドンモアイダ山をぐるっと取り囲んだ城壁が阻んでいる。


 この城壁は高さ50m、幅10mもの結構な防御力を誇っている為、ちょっとやそっとじゃ突破できない作りだ。


 故に、ドンモアイダ山への唯一の入り口がアイファサと言う訳だ。


 全く、城()都市とはよく言ったものだ。


「その城壁を飛んで乗り越えることは出来ないのか?」


「それが出来たら苦労はしねぇだろ。出来ないから唯一の入り口がアイファサなんだろ。おそらくだが、城壁の上空には侵入者を阻むバリアか、飛竜なんかのモンスターが居るんだろ」


 アルベルトが誰もが思う疑問を口にするが、ブラストールがその疑問に予想で答える。


 そしてその予想は的中らしく、クローディアが正解を口にする。


「どちらも正解です、ブラストールさん。城壁からは見えないバリアが展開しており、それを乗り越えたとしてもドンモアイダ山にはドルアダークワイバーンが縄張りとしています」


 ドルアダークワイバーンって、飛竜の癖に知能が高く、それでいてレッドドラゴンに匹敵する戦闘力を持っている奴だよな。


 イメージとしては超強いカラス? ……いや違うか。


「それだとアイファサに侵入しなきゃならないが、どうするんだ? クーガーの残してくれた路傍石マントを使うのか?」


「あれがあれば容易に侵入できるのでは?」


 そう言いながらディーノとパトリシアはクーガーの開発した魔道具のマントに視線を向ける。


 あれは金ぴか魔族のスキル【路傍石】の効果をマントに与えた魔道具だ。


 効果の方は間違いなく有用なものだが、今回に限っては言えば有用性はほぼ無い。


「残念だがマントを使用しての侵入は不可能でござるな」


「流石に魔王が居る城下町だけあって、門番や入り口のセキュリティーはかなり高いからねー」


「透明になっただけでは通れないッス。どうやっても門の開け閉めが必要になってしまうのでそれで気付かれてしまうッス」


 魔王城へ繋がる唯一の入り口だけあって、警戒レベルはマックスだ。


「……強引に突破するか?」


「それは悪手だ、アル。アイファサにどのくらいの戦力があるのかも分からないし、ましてや魔王城は山の中腹だ。そこまで行くのにアイファサからの追撃を退けるとは限らない。それに下手をすれば、魔王城からの増援で挟み撃ちにあう可能性も高い」


「じゃあ、どうするんだ? このままここで手をこまねいているっていうのかよ!」


「アル君ー、落ち着いてー」


 苛立たし気に怒鳴り声をあげるアルベルト。


 早く魔王を倒したいという気持ちが逸っているのだろう。


 そして、それには少なからずクーガーの死が影響しているみたいだな。


 ……焦りすぎて足元が掬われないといいが。


「あら、お困りの様ね。あたしが手を貸してあげましょうか?」


 唐突に馬車のドアの外から声が聞こえた。


 少なくとも俺はこの場に来てから常時【気配探知】や【魔力探知】、【索敵】をかけている。


 なのに、突然の来訪者は俺のスキルを掻い潜って馬車の前に来たということだ。


 今ははっきりとスキルに反応がある。まるでその場に急に現れたように感じる。


 一同は視線をジルに向ける。


 ジルは俺が警戒していたにもかかわらず、その警戒網を掻い潜ったという意味を込めて首を横に振る。


 それを見て皆は一斉に武器を構え、扉の外を警戒する。敵がただ者じゃないというで。


「何者だ?」


 アルベルトが扉越しに問いただす。


「そう警戒しないで欲しいわね。まぁ、魔族だから信じられないかもしれないし、あたしの名前を聞けば尚更かもしれないけど、これだけは言っておくわ。あたしは貴方達の味方よ」


 胡散臭ぇ~~


 今この場でそんなことをいう奴こそ一番信じられないんだよ。


 とは言え、アイファサに侵入するのに突破口になる、か……?












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ