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この石には意志がある!  作者: 一狼
第8章 レフトウイング大陸・決戦編
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217.魔族の王族

 魔族の王族って言うと、魔王の血族か。


 と、そう思っていたのだが……


「ちっ、魔王の血縁者か」


「いえ、それは違います。魔王は【魔王】スキルを持つ者がなるもので、そこに王族の血筋は関係ありません」


 アルベルトの呟きに冷静に答えるクローディア。


 え? どういう事?


「【魔王】スキルは王族に関係なく、全ての魔族に現れる可能性があります。故に誰でも魔王になる可能性があります。尤も、より強いものがなる傾向が高いそうですが。ですが、魔王はいつでも現れるわけではありません。ならば魔王が居ない間は誰が魔族を統治するのでしょうか?」


 ああーー……、なるほどな。


 魔王は魔族のすべての頂点に立つ存在だが、都合よく【魔王】スキルを持つ者が現れるわけじゃない。


 となれば、魔王に代わるものが魔族を統治するのかと言うと、そこで魔族の王族が出てくるわけだ。


 正確には魔族の王族が魔族の世界を統治し、魔王と言うイレギュラーが現れることで権威を委譲するわけか。


「だからと言って、魔族の王族が弱いと言う訳じゃない。強さは魔王に劣るものの、権威的には四天王と同等の扱いになるらしい。いわば第5の四天王だな」


 いや、ブラストール。それもう四天王じゃないぞ。


「そう言えば、あの金ぴか魔族も王族だったねー。確か第8王子だったようなー?」


 そうだ、そう言えばそうだった!


 もしかして、魔族の王族ってあの金ぴか魔族みたいに厄介な奴らばかりじゃないだろうな。


「その王族がこの牧場に来るってわけか。だったら尚更早いとここの場を撤収しないと……」


 残念ながら少しばかり遅かったようだ。


 俺の【気配察知】【魔力察知】【索敵】にこちらに向かってくる魔族を見つける。


 その数100人ほど。


 ただの商品の受け取りになんでこんなに大勢の人数を引き連れてくるんだよ。


 そこは王族の権威の見せびらかしか!?


 しかも、固まってくるんじゃなく、大半の魔族はこの牧場を囲み始めた。


 残りの20人ほどの魔族がこの建物――事務所へと向かってくる。


 これはもしかして、もう既にこの場がアルベルトたちに占拠されているのを感知しているのかもしれないな。


「マジか。くそっ、迎え撃つぞ!」


 ジルを通じて牧場の周囲の状況を伝えると、アルベルトは直ぐに臨戦態勢に入り迎え撃つことに決めた。


「だ、だから魔族様には逆らっちゃ駄目だったんだよ! ここは誠心誠意誤って許してもらおう! 魔族様もお優しい方だから許してくれるさ。多少の罰は与えられると思うが」


 突然の魔族の王族の襲来に、牧場の人間の代表の男はアルベルトたちがしたことを責めながらも、まだ都合のいい方に解釈をしていた。


「魔族が優しいって? 魔族は人族を虐げるためにあんたらを育てているんだよ。奴隷・虐待・実験材料。まぁ色々あるだろうが、魔族が人族を人と見てないのは確かだな。お前たちは替えの効く家畜扱いだぞ」


「ま、まさか」


 ブラストールの脅しに代表の男は狼狽える。


「貴方は牧場の外がどうなっているか知っていますか? この牧場で買われた人たちがどうなったのかを」


「ま、魔族様に仕えて幸せに暮らしているんだろ……?」


「いいえ、買われた方全てが亡くなっております。過酷な労働、魔族の嗜虐趣味を満たすための暴力、魔法や魔道具の実験体など、まともに扱われていないのが状況です」


 クローディアが代表の男に真実を突き付ける。


 まぁ、中には愛玩動物扱いでまともな扱いを受けている人族も居るだろうが、それはほんの一握りだろうな。


 と言うか、クローディアとブラストールはそんな外の情報まで聞き出したのか。


 かなり無理な尋問をしたのかな?


 ……あれ? そう言えばファイも尋問に加わっていたんだっけ。


 一体どういう基準でクローディアはファイも尋問に参加させたんだか。


 まぁ、外の世界の真実を知って項垂れている代表の男のケアは後にして、今は迫りくる魔族の王族をどう対処すべきか。


 アルベルトは直ぐに迎え撃つ気でいたが、それにヒビキが待ったをかける。


「待つでござる、アルベルト殿。ジルベール殿、彼らの1部はこちらに向かって来ているでござるよな?」


「うんー。きゅーちゃんが見たところ、大半はこの牧場を包囲しているけど、20人ほどがこっちに向かって来ているってー」


「もし、拙者らの殲滅が目的なら、その気になれば商品(・・)ごと遠距離からの魔法で片を付けるはずでござる。こちらに向かって来ているということは交渉の余地があるのではないでござろうか?」


『確かにな。商品に価値を見出しているのか、それともここを占拠しているアルベルト達に興味があるのかは分からないが、向こうさんはどうも話し合いをお望みらしいな』


『もしかしたら、王族特有の傲慢な価値観故の油断なのかもしれませんね』


 あー、ぼーちゃんの言う油断は何となくわかるな。


 自分は王族だから偉い、だから全ての下民(下等な人族を含む)は従え、って言う輩の可能性もあるから。


 だからはーちゃんの言う商品の価値は、牧場に居る商品は俺様の物だから手を出すなって言う忠告に来ているのかも知れないな。


 ついでに、ここを占拠しているのがアルベルト――勇者だと知っていて、勇者を自分の奴隷(もの)にする為とか。


 逆に知らなければはーちゃんの言う通り、この魔大陸でこんなことをする反逆者がどんなものか物珍しさに見たいとか。


 どちらにせよ、交渉の余地はあり、か……?


「…………分かった。向こうの出方を見よう。ただし、直ぐに戦闘態勢を取れる状況にしておくこと」


 アルベルトは魔族の王族と会うことに決めたみたいだ。


 無論、大人しくしているつもりはない。


 いざと言う時は討って出る。


 ……その場合は、牧場の人間は見捨てる可能性があるがな。












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