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この石には意志がある!  作者: 一狼
第7章 勇者パーティー・激走編
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Side-31.ユーグリッド

 私はユーグリッド・ユーディット。


 魔王四天王の1人です。


 人は私の事を四天王最強と呼びますが、実力でその地位を勝ち取った訳ではありません。


 確かに、他の魔族よりも優れている事は認めますが、四天王の中で最強と言われるのかと言えば疑問を感じざるをえません。


 そもそも、四天王は私を除く3人は近年世代交代をした新参者ばかりだからです。


 ジーク・ジーベルト。通称・鉄槌のジージー。


 彼は3年ほど前、ふらりと何処からともなく魔王軍の前に現れてはその実力であっという間に四天王の地位を勝ち取りました。


 その実力は、私に匹敵する程です。


 いや、もしかしたらそれ以上かもしれません。


 ジョーカー・ジョースター。通称・波紋のジョージョー。


 ジージーよりは前に四天王の座に就きましたが、先代の四天王の1人が老齢の為にその座を退き、その元四天王の推薦でその地位を得たのです。


 なので、実力を問われると他の魔族から疑問を持たれますが、だからと言って四天王に相応しくないわけではありません。


 実力こそ私やジージーよりは劣るものの、持ち前の技術をいかんなく発揮し、トリッキーな発想でもって私達の力となっております。


 私やジージーが正攻法だとすれば、彼は罠や奇抜な策を用いるその名の通りのジョーカーと言えましょう。


 そして何よりも、潜在能力は四天王の中でピカイチと言えます。


 今はまだ成長段階であり、今後もどんどん伸びていく事でしょう。


 ルーシー・ルージュ。通称・紅蓮のルールー。


 最後に四天王紅一点の彼女ですが、彼女はジージーを慕い、彼からの指導により魔王軍の中でどんどん実力を付けて、つい最近ですが、遂には四天王最強と言われていたディードリッド・ディープブルー、通称・深海のディーディーに認められた逸材です。


 彼女もまた潜在能力を秘めた今後を期待する若者です。


 だからと言って、彼女の実力もまた他の3人に劣っている訳ではありません。


 【大魔導師】のスキルにより、ほぼ全ての魔法を使う事の出来る彼女は、魔王軍の最大火力になります。


 1対1の戦闘よりも、大規模の軍事行動にその威力を発揮します。


 こうしてみると、今代の魔王四天王も決して悪くはありません。


 だけど、魔王四天王最強と謳われている私は、今自分に対しての不甲斐無さを感じています。


 先程の人数を欠いた勇者パーティーとの戦闘で、こちらは四天王3人で戦ったにもかかわらず、ジージーを失いかねない結果に終わってしまったのです。


 途中でルールーの参戦や、ヴィスキーのその命を捧げる行為により、ジージーは一命を取り留めましたが、私は直属の部下のヴィスキーを失う羽目になったのです。


 彼は【石法師】と言う名の、レアスキルを所持しており、そのスキルを十全に使いこなしてこれまで私に大いに貢献してくれました。


 私が光りとするなら、ヴィスキーは影。


 私が正面から敵を迎え撃てば、彼は影から目立たない様に暗殺を行なってくれてました。


 そんな彼が唯一の天敵と言っていい者が現れました。


 そう、勇者の姉、彗星のごとく現れたS級冒険者『幻』のジルベールです。


 ルールーも警戒し、ジョージョーも彼女は普通の人間じゃないと言わしめた輩です。


 そう言えば、神銀都市でディーディーとぶつかり、彼女を打ち破ったと報告も受けてましたね。


 まさか魔族最強と謳われていたディーディーを破るとは、『幻』は人類最強と言って過言ではないのかもしれません。


 私も、『幻』とは2・3度戦いましたが、確かに彼女の実力は底知れぬものを感じます。


 そんな『幻』と戦いたいとヴィスキーが言い、私はそれを了承しました。


 今となれば、この時私も付いて行けばよかったと後悔しています。


 結果、ヴィスキーは敗れ、辛うじてスキルで生き残ったものの闘えない体となり、その最後の命をジージーに与えて、ものを言わぬ石の人形と化してしまいました。


 ヴィスキーよ、Youの仇は私が討つ。


 youの無念は私が晴らそう。


 だから、安らかに眠りたまえ。


「ルールー。ジージーの命は助かりましたが、先ほどまで重傷だったことには変わりありません。今は彼に付いてあげて暫く様子を見ていてください」


「……うん」


 ジージーが助かった事で歓喜の涙を流しているルールーを促して、ちゃんと休養できる場所へと移動させます。


 ……移動先は西大陸と魔大陸を繋ぐ港町のノーステンがいいでしょう。


 これから始まる王都と金銀都市ゴルドシルバを奪還作戦が始まりますが、おそらく失敗するでしょうね。


 向こうにはルールーと同じ【大魔導師】のスキルを持つエルフが居ますし、何よりも連合軍の中核とも言える十二乙女騎士団が1/3が出てくると聞いています。


 奪還作戦は失敗するどころか、逆に鉄鋼都市ハガネウムスと南の炎鍛冶都市フレイムタンも取り返されるかもしれません。


 勿論、そんな事は無いように私もこの後戦場に出ますが、万が一と言う事も有り得ます。


 なので、ジージーには万が一に備えてノーステンで休養してもらいましょう。


「ジョージョー。作戦は変更になりますが、この後始まる王都とゴルドシルバ奪還作戦にYouも参加してもらいますよ」


「直接戦争に参加するのは俺の任務じゃないんだがなぁ。まぁ、仕方あるまい。ボクの力が戦場でも発揮できることをここで証明して見せようではないか」


 相変わらず変なポーズを決めて格好つけていますが、こう見えても頼りになります。


 彼はヴィスキーと似た性質を持つ人ですからね。


 私とジョージョーはこちらへ迫りくる奪還軍に合流すべく移動を開始します。


 ……そう言えば、ジージーは半分魔族の血が流れているから魔族による【治癒魔】法が効かないと言っていましたが、そんな事は無かったはず。


 半分と言えど、魔族の血が流れていれば魔族による【治癒魔法】は効果があるはずです。


 魔族の遺伝子は人間の遺伝子よりも優性だから。


 完全に効果が無いのは人族のみ。そう記憶しています。


 ……一応、調べておいた方がいいかもしれませんね。












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