Side-22.アルベルト6
きゅーちゃん:10話ほどSide-Storyが続きます。
神出鬼没の暗殺者の魔族を姉さんに任せ、俺達は姉さんが潰した宿屋の前に辿り着く。
すると、ちょうど崩れた岩の中からユーユー達が出来ていたところだった。
「ちっ、ある程度のダメージを期待してたが、思ったよりもダメージが少なそうだな」
「まぁ、あれだけで仕留めきれるとは思わないでござるが、流石に堪えてなさそうなのは四天王ってところでござるか」
向こうも俺達が現れた事で怒りの目を向けてくる。
「……やってくれましたね。まさか我々の居場所を突き止めて奇襲をかけて来るとは思いませんでしたよ」
「いや? お前らがここに隠れていたのはバレバレだったんだけど? 寧ろ奇襲してくださいと言ってるかと。逆にここに居ること自体が罠かと疑ったりしたけど、本当に隠れているつもりだったんだな」
俺の隠れているのはバレバレと言う事実に、ジョージョーが驚愕していた。
「え? う、うそだ。ボクの裏をかいた策が読まれていたなんて有り得ない!」
自分では最高の策を実行できたと思っているんだろうが、だったら周囲にも目を向けろと言いたい。
「まぁいいです。居場所がバレたのなら仕方ありませ。多少無理をしてでもYouたちをここで倒させていただきます」
ユーユーは溜息を吐きながら剣を手に取る。
その瞬間、途轍もないプレッシャーが俺達を襲う。
こいつ、見た目は平凡な何処にでもいる様な男なのに、その強さははっきり言って化け物並みの強さだ。
そのユーユーがここまで圧を掛けて来るとは、これまでのあしらう程度の戦いではなく、本気で俺達をここで潰そうとしているんだな。
そんなプレッシャーの中、ヒビキが物凄い形相でユーユーを睨みながら1歩前へ出る。
「随分と拙者は舐められていたでござるな。今まで手加減してきた貴様と互角に戦って、連合軍最強の兵と持ち上げられていた拙者はさぞ滑稽に見えたでござろう」
「そんな事はありませんよ。Youは私と渡り合えていたではありませんか。実際にYouとの戦いはやり辛いものばかりでしたよ」
「ならば何故【覇道剣】を使ってこなかったでござるか! あれがあれば拙者など瞬殺だったでござろう!」
ヒビキがこちらまで聞こえる程歯軋りしていた。
「……あれには使用制限がありましてね。最近使えるようになったんですよ」
「それを信じろとでも言うのか!」
「信じる信じないはYouの勝手ですよ」
まぁ、そうだよな。
信じようと信じまいと、先の戦闘で【覇道剣】の前に敗れたのは変わらないし。
「侍の嬢ちゃん、落ち着け。今儂らがせねばならんのは、こやつらを倒す事じゃ。負けたのが悔しいのなら、今ここで汚名を晴らすがよい。【覇道剣】を使うユーユーを倒してな」
「……言われるまでも無い。拙者を舐めた真似をしてくれた貴様をここで倒す!」
爺さんの言葉でヒビキは落ち着いたかのように見えたが、あんまり変わっていないな。
大丈夫か? 勇み過ぎて空回りしなければいいが。
「ユーグ、お前が盾役だ。俺達をしっかり守れ」
「勇者様はお厳しい。か弱いオレ様に一番前に出ろとは」
お前、俺達に何をしたか分かっているのか?
使い捨ての駒にされても文句の言えない所業をしたんだぞ。
当然、俺達のダメージを減らす為、ユーユー達の前に晒すのは当たり前だ。
「だがまぁ……本気でヤバいのは分かるぜ。オレ様の【英雄】スキルがビンビンに反応してやがる。しかも3人とも全員だ。ここまでヤバい相手は久々だね」
ユーグは最大限に警戒しながら剣と盾を構えて俺達の一番前に出る。
「ほぅ……【英雄】スキル持ちですか。確かに【英雄】スキル持ちを相手にするのは骨ですが、まぁそれほど心配する事も無いでしょう。所詮弱い者にしか発言しないスキルですからね」
「言ってくれるね! ならその身を以って【英雄】の力をとことん味わってくれよな!」
ユーグがユーユーへと攻撃を仕掛け、それを切っ掛けにそれぞれの戦闘が開始される。
ジョージョーが時空波紋を呼び起こし、おそらく“世界の覇者”を召喚しようとしたのだろうが、
『させないよ! ウォォォォォォォォォン!』
マックスの遠吠えで時空波紋が乱れ、召喚は打ち消される。
俺とヒビキはそれぞれ挟むようにユーユーへと向かって行くが、怪我が完治していないのか、ジージーが後方から魔法でユーユーの援護をしていて俺達はユーユーへの攻撃を攻めあぐねていた。
ジージーに対抗する為に連れてきた爺さんだが……後方でふんぞり返って腕を組んで俺達の戦いを眺めている。
おぃぃぃぃぃぃ! こんな時までオブザーバーだって言うんじゃないだろうな! 少しは働けクソジジイ!!




