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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2章 勇者・召喚編
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Side-1 ハルシフォム

 娘が弟を連れ戻すと言い、家を出た。


 俺と妻は最初は何を言っているのか分からず呆然としてしまった。


 直ぐに気を取り戻し娘を追いかけ外へ出たが、既に娘の姿はそこには無かった。


 まさか流石に娘がいきなりこんな行動に出るとは思わなかった。


 だが、考えてみればこうなることは必然だったのかもしれない。


 娘は小さい頃から普通とはどこか違う子供だった。


 何時からだったのか、娘は小さい頃から石を集めるのが趣味だった。


 最初は川辺で拾ってきた綺麗な小石だったような気がする。


 気が付けば色んな石を集めていた。


 最初の頃は微笑ましいものだと妻と一緒に見ていたが、次第に笑っていられなくなってきた。


 石集めの為に、危険な山に登って大人たちを心配させた事もあれば、魔物――ゴブリンの群れの中に突っ込んでまで石を集め没頭したこともある。


 流石にゴブリンの群れの中に突っ込んで大怪我をした時は少しは懲りたのかと思いきや、今度はそのゴブリンをどうやって躱して石を集めるかなど考えたのを知った時は怒りを通り越して呆れたものだった。


 だが、娘は周囲の騒音をものともせずに実際にゴブリンの群れを躱して石を集めてしまう。


 この時からだろうか。周囲の目も娘が普通とは違うとして見られるようになったのは。


 ただの趣味に没頭するなら変人扱いだが、我を通すために無理難題を解決してしまう規格外の片鱗を発揮したのだ。


 そしてそれは娘が5歳になった時に『祝福(ブレッシング)』で【ストーンコレクター】を授かってから拍車が掛かる。


 スキルを授かったことにより、娘の規格外さは趣味の石集め以外にも影響を及ぼした。


 ただの称号(タイトル)系スキルと思いきや、【ストーンコレクター】には特殊能力があった。


 集めた石に特殊能力を付加する事が出来たのだ。


 これにより、娘の規格外さに拍車が掛かる。


 その極めつけはこの前の盗賊騒動だ。


 まさか娘がスキルを駆使して大人顔負けの戦闘を行う事が出来るとは。


 後で知ったのだが、娘と同い年の少年が授かった【騎士】スキルと競い合っていたらしい。


 俺は子供同士で遊んでいるのかと思っていたが、その実、戦闘訓練をしていたのだと言う。


 お蔭で盗賊騒動の時には随分助かったのだが、幾ら大人顔負けの戦闘が出来るとは言え、流石に許容できる範囲を超えていた。


 娘にはきつく言い押していたのだが、何処まで反省していたのやら。


 そして今回の息子が勇者としての教会への強制召喚。


 教会は世界を総べる組織でもある。


 そして勇者は魔王に唯一対抗する存在だ。


 故に教会が勇者を旗印にし、魔王を討つのは必然なのだ。


 俺とてまだ5歳になったばかりの息子を取られて憤慨している。


 だが、これは必要な事なのだ。


 教会に逆らうと考えるのは愚の骨頂だ。


 なのに娘は当然のように反発し、弟を取り返すのだと息巻いて王都へ向かってしまった。


 俺は娘が向かった王都の方を見る。


 普通の子供ならこのまま黙っていても王都までどころか隣村まで辿り着けずに、周囲に迷惑を掛けながら戻って来るのだろうが、おそらく娘は無事に王都へ着いてしまうのだろう。


 そしてもしかしたら何時もの規格外で息子を連れて帰ってくるのかもしれない。


 そんなありもしない期待を抱いてしまう。


「あなた……」


 妻も娘の行方が心配なのか俺と一緒に王都の方を見る。


「あの馬鹿、帰ってきたらいつもの倍は叱ってやらないとな……」


 とは言え、流石にこのまま放置とはいくまい。


 村長に連絡して自警団から娘の行方を追ってもらおう。









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