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この石には意志がある!  作者: 一狼
第7章 勇者パーティー・激走編
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193.後顧の憂いを断つ

 どうやらフレイドは今回に限りレジスタンスの旗頭として先頭に立つことに決めたようだ。


 そして1日もしないうちに、連合軍から第1軍から第5軍までの援軍が次々到着し、王都の護りも厳重になってきた。


 いくらなんでも事前に準備をしていたとは言え、流石に1日やそこらでここまで大軍が移動できるとは思えない。


 おそらく、第5軍の兵に移動系のスキル持ちが居るんだろうな。


「よぉ! まさか偵察に向かったはずのあんたらが王都を解放しているとはな」


 そう言ってアルベルトに気安く話しかけて来たのは天蝎騎士団の団長スコルピオだった。


 どうやら第1軍からは天蝎騎士団を主とした正規軍を派遣して来たみたいだ。


 そしてそのまま、今回の王都防衛軍の指揮官として防衛戦を指揮するとの事。


「解放したのは俺達じゃないけどな。王位継承の副産物と言うか、一石二鳥を狙ったと言うか」


「かかか、どこの誰だか知らないが、あたいらにとっちゃ有りがたい話だね。後でお礼を言っておいた方がいいか?」


「あー……どうなんだろう?」


 アルベルトは傍に控えていたリュキに目線で尋ねる。


「やめておいた方がよろしいかと。オウシャ兄上は、王位を狙いつつ王となった後の事も考えて今回の様な策を取ったのかと。それは即ち、今後連合軍が西大陸の覇権を魔族から取り戻した時の発言権を得る為でしょう。こちらから謝礼を申し出ると、オウシャ兄上に借りを作った言質を取られることになります」


「なんだかめんどくさいね。難しい事は分からんけど、あんたの言う通りやめた方が良さそうだな。本部にもそう伝えておくよ。寧ろあたいより本部の方が詳しいやり取りをしてくれるだろうさ」


 まぁ、連合軍本部も無能じゃなければ、上手くミラーワルド王国と交渉をするだろう。


「で、そっちのお嬢さんが王都解放の功労者かい?」


「正確には被害者でもあるけどな」


「何? このおばさん。あたしはミラーワルド王国の王女様よ。敬いなさい。そしてお腹すいた」


「今の貴女は経緯はどうあれメイド見習いです。そう言った態度は感心しません。改めなさい」


 リュキと一緒にアルベルトの傍に控えているシーザに目線をやったスコルピオに、シーザは王族としてのぞんざいな態度で接し、それをリュキに窘められる。


 今のシーザは魔王の欠片を無害化されたお蔭で今後の脅威にはならなくなったが、そうなると逆にオウシャにとって利用価値が無くなり今度こそ本当に始末されるのではないか。


 その為、一時的に勇者パーティーの保護下に入るために、リュキの下でメイド見習いとして身柄を預かることになったのだ。


 そう、今のシーザには魔王の欠片は入っていない。


 話は少し前に遡る。





「このまま魔王軍を迎え撃つのはいいが、シーザはどうするんだ? このままだと外側からよりも内側から食われかねないぞ」


 ジオリから魔王軍への迎撃作戦が粗方説明された後、これまで黙っていたダイガディンが口を挟んできた。


「あー、魔王の欠片か。確かにこのままだと王都が壊滅しかねないな。今は落ち着いているが、また飢餓状態に陥れば、王城の二の舞だな」


 ブラストールが頭を搔きながらどうすりゃいいんだと唸る。


「シーザ、今の貴女のお腹の状態はどうですか? 全てを飲み込むくらいお腹が空いてますか?」


「お腹は空いているよ。ずっと。でも訳が分からないくらいお腹が空いたのはこの前の時だけかな? あれはよっぽどじゃなければならないと思うけど、よく分かんない。あんなの初めてだったし。で、お腹すいた。何か食べたい」


 リュキがシーザの様子を確かめるも、シーザも王城を吸い込んだ時の事は良く覚えていないのか、詳しい事は分からないみたいだ。


 と言うか、魔王の欠片の暴食化の影響か、さっきからお腹すいたばっかだな、こいつ。


「オウシャ兄上はシーザに徹底して数週間、下手をすれば数か月間食事を与えない状態にしたうえで、この王都へと送り込んできました。なので、こまめに食事を与えさえすれば、余程の事が無い限り暴食化はしないと思われますよ」


「そう言えば、ゾルダード兄上はオウシャ兄上と繋がっていたんでしたね」


「繋がっていたとは人聞きが悪い。先ほども申しあげましたが私はオウシャ兄上の策を横から掻っ攫えないかと伺っていただけですよ」


「尚更たちが悪いですね。流石はゾルダード兄上」


 平気で手柄を奪うために漁夫の利を狙っていたと言うゾルダードを冷ややかな目で見るリュキ。


「ということはー、食事を与えておけば大丈夫だけど、何かあったら危険って事だよねー? どうするー? 対処するー?」


「ちょ!? 対処って始末するって事か!? 幾ら危険だからと言ってそんなの許される事じゃないぞ!」


 ジルの言葉に正義バカのダイガディンが過剰に反応する。


 ダイガディンにとっては何の罪もないシーザが暴食化と言う理由だけで始末されるのは正義じゃないんだろう。


「違うよー。対処するって言うのは、魔王の欠片を取り除くって事だよー。そうすればシーザちゃんはもう暴食化に悩ませることは無いでしょー?」


「そりゃあそうだけど……」


 そんな事は許さんとばかりに食って掛かっていたダイガディンは、原因そのものである魔王の欠片が無力化出来ると言われて気概が削がれたかのように大人しく納得されていく。


 逆に、無力化と聞かされ黙っていないのが勇者パーティーの面々。


「……ちょっと待って、姉さん。魔王の欠片を(・・・・・・)取り除ける(・・・・・)のか?」


「出来るよー。ねー? おじーちゃんー」


 そう言って意味ありげな表情をジルはジジイに見せる。












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― 新着の感想 ―
[一言] シーザちゃん、欠片を無害化&除去され、リュキの元でメイド見習いに。 あれ、なら無害化&除去の実験台はマックスだったのか。同じ欠片持ちだし。
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