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この石には意志がある!  作者: 一狼
第7章 勇者パーティー・激走編
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192.反撃の狼煙

 老人ドワーフの言葉に皆が驚きを顕わにする。


「儂はもう王子じゃない。国を捨てて30年以上も放浪していた男が王子を名乗るなど烏滸がましいだろ」


「いいえ、貴方はボードランプ国の王子です。こうしてこの地に戻って来て下さいました。しかも、勇者様を伴って」


「……勇者パーティーに加入したのはほとんど偶然だ。儂は元々ここに戻って来るつもりはなかった」


 うーん、フレイドは魔族に国を滅ぼされた事で、反抗する気が失せてしまったんだろう。


 だからこそ、数十年も料理人として各国を巡っていたんだろうな。


 つまり、ボードランプ国が滅んだことで、フレイドは王族であることを止めたんだ。


 それを、再び王族として旗頭になれと言われても迷惑なんだろう。


「第一、儂じゃなくてもキャレン姉たちが居るだろう?」


「……残念ながら、キャレン様やレンケル様は30年前の魔族の侵攻時に亡くなっております。ガリス様は遺体は見つかっておりませんが、おそらくは……」


「そう、か。キャレン姉たちは逝ったのか。あの時、みんなで生き延びようとバラバラになって逃げたんだが、儂だけが生き残ったのか」


 当時の事を思っていたのか、フレイドは遠い目をして儚んでいた。


「フレイド様、レジスタンスを率いてボードランプ国を取り戻してください。幸い今なら周辺都市は連合軍が解放に協力してくれています。先ほども申しましたが、これは天啓です。今、この時、この場所にフレイド様が訪れた事がそれを物語っております」


「……スマン。少し考えさせてくれ」


 そう言ってフレイドは部屋から出ていく。


 それと入れ違いにクローディアと黒ずくめの男が1人入ってきた。


「王都内部を調べてきましたが、やはり魔族は居ませんね。余程、王都には居たくなかったのか、着の身着のまま出て行った感があります」


「そりゃあそうだろうな。王都のど真ん中に居たのは暴食の魔王の欠片持ちだ。下手に居座っていれば、暴食に食われていたかもしれないんだ」


 アルベルトがあれは魔族でも逃げ出すだろとぼやきながら、王都中心部で何があったのかを告げる。


「なるほど。王都中心部に居たのは暴食の魔王の欠片持ちだったんですね。それならば魔族が居ないのも分かります。そしてレジスタンスですか……」


「レジスタンスが本格的に活動できるようになったのは嬉しい誤算だな。ドワーフの国を取り戻す戦力が増えるのは連合軍としても随分と助かる」


 そう言ってきたのは、クローディアと一緒に入ってきた男だ。


「おっと、自己紹介が遅れたな。俺は連合軍の連絡員だ。名はジオリ。所属は、そうだな第6軍って事にしておいてくれ。ドワーフの国を解放する為、王都のレジスタンスとの連絡員をやっている」


「あれ? 少なくともレジスタンスがまともに活動していなくても連絡を取っていたんッスか?」


「ああ、戦闘要員にはならなくても、住人との緻密な連絡網や土地勘は侮れないからな。協力出来るならしてもらった方がいいに決まっている」


 ゴダーダの疑問にジオリが答える。


 要人が奴隷契約で協力できなくても、やれることは色々あるからな。


「そうすると、この後の流れはどうなっている?」


 軍人でもあるブラストールが今後の作戦について、概要を聞いてくる。


「勇者様たちのお蔭で、神銀都市ミスリータルは解放できた。その影響で住人魔族は大量に金銀都市ゴルドシルバに流れ込み、溢れかえっている。先ほど連絡があったが、無事にゴルドシルバは解放できた」


 おお、天秤騎士団と天蝎騎士団の両騎士団は上手くやったみたいだな。


 王都ドワルコフは図らずともリュキの兄のオウシャの策で、シーザの魔王の欠片による暴食で解放されている。


 となれば、残りは東の鉄鋼都市ハガネウムスと南の炎鍛冶都市フレイムタンの2都市だ。


 因みに、王都から逃げた魔族はフレイムタンへと難を逃れている。


「ゴルドシルバの魔族住人はハガネウムスに、王都に居た魔族住人はフレイムタンに流れ込んで、今残りの2都市はパニック状態だ。特にハガネウムスは通常の3倍もの魔族が溢れかえっているから、混乱は極致と言っていいだろう」


 まぁ、そりゃあいきなり難民が押し掛ければ、元居た住人もパニックだろうな。


 受け入れる都市のキャパが確実にオーバーしているんだし。


「このまま当初の作戦通り電撃作戦でハガネウムスを解放し、フレイムタンに全魔族をおしこめ、魔大陸へ逃げ道を作ってやる予定だったが、思ったよりも魔族の余裕が無かったのと戦力があったみたいでな。ハガネウムスから王都とゴルドシルバへ、フレイムタンから王都へと魔族の奪還軍が編成されて向かって来ているらしい」


「おいおいおい、やっぱこの電撃作戦無理があったんじゃないのか?」


「流石魔族でござる。すんなりいかなかったでござるな」


 ブラストールはやや呆れ気味に、ヒビキは逆に魔族の反撃する気概に感嘆すらしていた。


「無論、連合軍とて黙ってそれを受け入れる訳にはいかないから、反撃を行なう。今、本部へ連絡を入れて、正規軍の他に義勇軍、特兵軍、魔法軍を呼び寄せている。各物資も支援軍に頼むと言う総戦力で迎え撃つ予定になっている」


 あー、ここドワーフの国を取り戻せば、魔族を魔大陸へ押し戻すことが出来るからな。


 もしそうなれば、ハーフハート大陸に残った魔族は魔大陸からの支援が無いからいずれ駆逐されるだろうし。


 だからこそ、このドワーフの国の奪還作戦に連合軍はこれほど力を入れるのだろう。


「すると、俺達勇者パーティー――いや、第7軍勇者軍は王都で各軍と合流し、ハガネウムスとフレイムタンから来る魔族軍を迎え撃てばいいんだな」


「理想としては、そのままハガネウムスも解放して魔族をフレイムタンから魔大陸へ押し戻すのがベストだな」


 ブラストールがアルベルト達のするべき事を明確にし、ジオリがそれに少し付け加える。


「魔族軍がここに来るまでの期間は?」


「およそ2日後」


「おいおい、早いな。こっちの準備が間に合わないんじゃないのか?」


「連合軍を舐めるな。ミスリータルが解放される前から既に動いているよ。魔族の反撃は予想外だったが、連合軍はこの作戦で本格的にドワーフの国を取り戻すつもりでいるからな」


 そりゃあそうか。


 いちいち作戦の結果を気にしてから動いてちゃ間に合わないからな。


 勿論、作戦の成否は考慮した上で行動を起こして援軍を送ってきているのだろう。


 2日の間に魔族軍を迎え撃つ準備をしないとな。


 となれば……王都のレジスタンスの旗頭――フレイドがどうするのかと、王都に未だ潜んでいると思われる魔王四天王のユーユー、ジージー、ジョージョーの3人への対応だな。












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