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この石には意志がある!  作者: 一狼
第7章 勇者パーティー・激走編
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190.撤退

 こちら側で無事なのは、アルベルトとパトリシア、ジルとジジイの4人だけ。


 他のメンバーは命は無事とは言え、満身創痍だ。


「パトリシアー、ヒビキ達の怪我の具合はー?」


「回復はしますけど、効果はゆっくりです。完治にはしばらくかかりそうです」


 ふむ、【覇道剣】には治癒疎外の効果があるのか?


 まぁ、向こう側もまともに動けるのはユーユーただ1人だが。


 金ぴかは死亡。ジージーは行動不能。


 ユーユーを倒すのにチャンスなのだが、ジルは迷わず撤退を決めた。


 当初の目的である、王都ドワルコフ中心部に何があるのかの原因が分かったからな。


 その原因の保護も完了しているし。


 解決策はこの後見つければいいのであって、今すぐって訳じゃない。


 だから今は撤退するのが正解だ。


「ここは一旦引くよー。おじーちゃんは殿をお願いー」


「向こうの様子からすれば心配する事は無いが、用心に越した事はないじゃろう」


「ちょっと待ってよ、姉さん。今、ユーユーを倒すチャンスじゃん! 俺と姉さんと爺さんとで掛かれば倒せるよ!」


 ただ、アルベルトはこの撤退には反対だった。


 パッと見ればチャンスにしか見えないからな。


「くっ、ヴィスキーはやられましたか。ジージー、Youは無事ですか?」


「無事とは言い難いわい。命に別状はないが、少なくとも戦線復帰には時間が掛かるぞ」


「追撃のチャンスなのですが、仕方ありませんね。どうやら向こう側も引いてくれそうですのでこちらも引きますよ」


「了解じゃ」


 向こうの様子を伺えば、どうやらあちら側も撤退を決めているようだ。


「ダメよー。ここは引く場面なのー。チャンスのようにも見えるけど、実はこっちの方がピンチなんだよー」


「このまま押しきれないのか……?」


「無理だねー。けが人が多いのはこっちだし、ユーユーの【覇道剣】を喰らえば一気に私達も戦闘不能になっちゃうよー」


「ぐ……」


 【覇道剣】の威力を間近で感じたアルベルトとしては、そう言われれば納得せざるを得なかったみたいだ。


 それに、敵はユーユーだけじゃないからな。


「どうやらお困りのようだね? ユーユー」


「相変わらず絶妙のタイミングで現れますね、ジョージョー」


 気が付けば、ユーユー達の傍には四天王の1人であるジョージョーが立っていた。


 相変わらず奇妙なポーズ(ジョジョ立ち)でその存在感を出している。


 そして神獣の森から連れ出した“世界の覇者”の神兵ゴーレムも連れている。


 ジョージョーと“世界の覇者”が現れたのは突然だ。


 無論警戒しており、俺の【気配探知】や【索敵】に引っかかった覚えはない。


 おそらく、時空波紋で移動してきたのだろう。


「ここは魔族が居なくなっちゃったけど、まだ敵地だからねー。警戒しておくに越した事はないよー」


「分かった。今は皆の方が大事だからな。撤退しよう」


 ようやく分かってくれたアルベルトは、怪我した皆と未だ腹減ったと叫んでいるシーザをマックスへ乗せて撤退する。


 ジルはパトリシアをふーちゃんへ乗せて、マックスの左右をジルとアルベルトで警戒しながらディーノ達の待つ馬車へと向かう。


 ジジイも新たに増えたジョージョーを警戒しながらも殿を務めながら撤退する。


 馬車までの道のりは、追撃を警戒していたが何事も無く無事に辿り着いた。


 無事に辿り着いたのだが……


「ちょっ、あれ、襲撃を受けてないか!?」


「うむ、どう見ても襲われておるのぅ」


 まだ距離はあるが、アルベルトが馬車の方を指さして、待機していた馬車が襲撃されていると叫ぶ。


 ジジイが指で輪を作って望遠のように見て、間違いないと言うが、こちらは距離があってその様子はまだ見えない。


 ちっ、今の王都ドワルコフの様子から無いとは思っていたが、戦闘部隊が離れた隙を狙って後方支援を襲ったか。


 俺は慌てて【気配探知】や【魔力探知】【索敵】を走らせ後方支援部隊を襲っている連中の情報を調べる。


 ……ん? 襲っているのは1人、か?


 もう1人は様子を伺っている、だけ?


 しかも襲っている1人は、あった事がある人物だ。


 ジル達が馬車へ近づくと、馬車は新たに設置した魔道具のバリアにより守られており、バリアの外ではリュキとフレイドの2人が戦っていた。


 どうやらクローディアはまだ戻ってきていないようだな。


 戦えないクーガーとディーノは馬車のバリア内で2人の戦っている様子を伺っている。


 リュキとフレイドの2人と戦っていたのは、何と追い返したはずのダイガディンだった。


 もう1人は建物の影から様子を伺っているようで、姿は見えない。


「正義の名のもとに、リュキュルシア、お前を討つ!」


「人の話を聞かない人が正義を語らないで下さい」


「正義の味方を名乗るのなら、まずは魔族に奪われたドワーフの国を解放しろよ!」


 フレイドが真正面からダイガディンの攻撃を受けて、サポートとしてリュキが援護していた。


 フレイドが炎を纏った大剣を振り回し、ダイガディンはそれに臆して攻めあぐねている状態だ。


 リュキの時も思ったが、ダイガディンって思ったよりも大したことない……?


 それともリュキとフレイドの2人が思った以上に戦えたのか?


「シーザの仇は俺が討つ! 大人しく裁きを受けろ、リュキュルシア!」


「あたしの名前、呼んだ?」


 ダイガディンとの戦闘に参加しようと、まずは馬車のバリア内に怪我人等を批難させていたが、名前を呼ばれたシーザがダイガディンに思わず話しかける。


 突然聞こえてきた声に、ダイガディンがそちらに目を向け思わず目を剥いて動きが止まる。


「シ、シーザ!? 何故シーザが生きている!?」












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― 新着の感想 ―
[一言] 撤退したらややこしいことに(笑)
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