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この石には意志がある!  作者: 一狼
第7章 勇者パーティー・激走編
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180.プチ世界樹

 【プレッシャーキューブ】は超高水圧の塊だが、水であることには間違いない。


 俺はそこに目を付けた。


 水であるなら、吸収してしまえばいいのではないかと。植物で。


 勿論、普通の植物で1万mもの水を吸収できるわけがないので、それ相応の植物が必要になってくる。


 まぁ、普通であればそんな植物は無いのだが、ここはファンタジーの世界。


 あるんだよ、それ相応の植物が。それも飛び切りの。


 俺は蔦を呼び出し拘束する魔法の【ソーンバインド】を【森羅万象】で改良し、【プレッシャーキューブ】を吸収できる植物で拘束する魔法を創り上げる。


『ジル、待たせたな! こっからは俺達のターンだ!

 ――【イグドラシルバインド】!!』


 ジルやマードックたちに襲い掛かろうとしていた【プレッシャーキューブ】は、突如地面から生えてきた樹の根によって阻まれた。


 【プレッシャーキューブ】は水圧で押し潰そうと根をキューブの中に取り込むが、逆に【プレッシャーキューブ】が根に吸収されて、どんどん小さくなり終いには消えて無くなってしまった。


「なっ……!? 馬鹿なっ! 妾の【プレッシャーキューブ】が消えて無くなったじゃとっ!? あり得ぬ。どんな絡繰りを使えば【プレッシャーキューブ】を消し去れると言うのじゃ!!?」


「見て分かる通り、樹の根に【プレッシャーキューブ】の水を吸収させたんだよー。もうこれで貴女の【水魔法】は攻略済みだねー」


「何を言う……! 普通の樹に【プレッシャーキューブ】の水を吸収できるはずが無かろう。あれの水量はお主らの想像を超えた水量なのじゃぞ!」


 怒りを顕わにジルを睨みつけるディードリッド。


 まぁ、この世界の住人じゃ深海1万mの水圧や水量なんかを想像できないだろうからな。


「けど現に、こうして樹の根がキューブの水を吸い込んでいるよー?」


「何なのじゃ……この樹の根は……!」


「きゅーちゃんが言うには、イグドラシル――世界樹の根だってー」


「は……?」


 そう、ファンタジーの定番中の定番。


 俺が【ソーンバインド】に組み込んだ植物は世界樹だ。


 世界樹なら、深海1万mの水すらも吸収できるだろうさ。


 なんたって世界(・・)樹だからな!


「ふ、ふざけるでない! 世界を支えると言われている世界樹を魔法に組み込むじゃと!? あり得ぬ! どれだけの技術と時間があれば可能だと言うのじゃ! それをほんのわずかな時間で成し遂げるじゃと? お主は化け物か……?」


 それが【森羅万象】なら出来ちゃうんだよなぁ。


 まぁ、簡単に、とはいかなかったけど。それなりに苦労はしてるんだよ?


 だからジルに少しの間時間を稼いでもらったわけだし。


 呆けていたディードリッドは一転して、【イグドラシルバインド】に驚愕し、ジルを化け物だと脅威の目を向ける。


「(むぅー。きゅーちゃんがやったって言ってるのに、この人話聞かないよー。何で私が化け物なのかなー)」


『あー、化け物じゃないけど、お嬢も良く規格外と言われるから似た様なものじゃないか?』


「(規格外と化け物じゃイメージが違うよー)」


『そうよ! 女の子に向かって化け物は失礼じゃないの!』


『客観的に見ても、ジルベールさんは立派なレディです。化け物は風評被害に当たりますね』


『はーちゃんは乙女心が分かってないな! 姐さんだって化け物言われれば傷つくんだぞ』


『お、おぅ、すまん』


 はーちゃんのうっかり発言で、お気に入りの女性陣にフルボッコにされていた。


『さて、キューブも水玉も粗方片付いたから、今度は本丸を攻めますか』


「(きゅーちゃんー、やっちゃえー!)」


 俺は【イグドラシルバインド】の根を操り、ディードリッドの足下から生やして拘束させる。


「くっ! ならば、それ以上の水を喰らわせるまでじゃ! 【プレッシャーキューブ】!!」


 世界樹の根に拘束されたディードリッドは、更に追加の【プレッシャーキューブ】を幾つも呼び出すが、世界樹の根は何のその。


 逆にどんどんキューブの水を吸い込み、ディードリッドを縛り上げて行き、遂には完全に根の中に取り込まれ姿が見えなくなってしまう。


 それどころか樹の根から新たに芽が芽吹き、どんどん成長していき、遂には太さ10m高さ50mもある一本の巨大な樹に成長してしまった。


 え……? これスケールは小さいけど、間違いなく世界樹……だよな。


 これは後日談になるが、このプチ世界樹は解放されたミスリータルの新たなシンボルとして観光名所となったらしい。


 それにしても……幾らファンタジーとは言え、あれだけの水量を吸収してしまえる世界樹って……改めてファンタジーだな!


「(きゅーちゃんー、ディーディーはどうなったー?)」


『おう、ちょっと待ってな』


 俺は【スキャン】と【解析】でプチ世界樹に取り込まれたディードリッドを観てみる。


 プリ世界樹の中心にディードリッドが押しつぶされて、魔力を吸われて干からびた姿を発見する。


 うん、完全に死んでいるな。


 キューブの水だけじゃなく、ディードリッドの魔力も吸い上げた事でプチ世界樹が急成長したんだな。


 ディードリッドの魔力も水属性だったから相性が良かったんだろう。


 間違いなくディードリッドは魔族最強だったんだろうが、相手が悪かったな。


 ジルも人族最強に相応しい強さだったが、ジルが所持している(きゅーちゃん)との相性がディードリッドにとっては最悪だったって事だろう。


『ジル、間違いなくディードリッドは死んでいる。俺達の勝利だ』


「(わぁー! 流石きゅーちゃんー!)」


 よし、後はマードックたちの手当てをして、アルベルト達の援護に向かわないと。


 この鉱山都市ミスリータルを支配している魔族スコールを倒せば作戦は一気にケリがつくからな。












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― 新着の感想 ―
[一言] はーちゃんフルボッコ(笑) 後の観光名所になるプチ世界樹によりディードリッドが押しつぶされて、魔力を吸われて干からびた姿にされる。ん、押し潰されたということは、ディードリットの服もバラ…
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