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この石には意志がある!  作者: 一狼
第7章 勇者パーティー・激走編
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176.深海のディーディー

 は? 元四天王で、魔王に匹敵する最強の魔族だって?


「待てよ、それじゃあ覇道のユーユーはどうなんだよ? あいつが最強の魔族じゃないのか?」


「あくまで現時点での魔王四天王最強と言う事だ」


「何でその魔族最強が元四天王なんだよ」


「そんな事はあたいだって知らん! 寧ろこっちが聞きたいぞ!」


 アルベルトとのやり取りに、スコルピオは半ばやけくそで叫ぶ。


 そりゃあそうだ。


 あー……でも、クローディアなら知ってそうだな。


 取り敢えず俺は【鑑定】を掛けてみる。




 名前:ディードリッド・ディープブルー

 種族:魔族

 状態:冷静

 スキル:水魔法Lv199

 二つ名:深海

 備考:元魔王四天王




 って、コイツもS級冒険者『暴風』のモレッツァと同様に、スキルレベルを限界突破したLv199かよ!?


 その女魔族――ディードリッドはコバルトブルーの髪をした細目で流麗な動きでマードックたちを翻弄していた。



「でー? どうするのー? まさかこのまま撤退って言わないわよねー?」


「ぐ……」


 ジルの問いにスコルピオは思わず口を噤む。


 どうやら余程あのディードリッドと戦うのが嫌らしい。


 まぁそりゃあ、Lv199の化け物と戦うのは誰だって嫌だろう。


 スキルが【水魔法】と言う事は、職業(ジョブ)系スキルじゃなく、技能(アビリティ)系スキルだ。


 それだけでもスキルによる力の差が現れているし。


「うんー、分かったー。ここは私と新勇部隊で抑えるから、アル君たちはスコールを倒しに行ってー」


『ジル、やれるのか?』


「(任せてー。どのみちここで誰か相手しなきゃ先に進めないでしょー)」


 まぁ、確かにそうなんだが。


 だが、スコルピオのあの尋常じゃないビビり具合がちと気になるな。


「正気か!? S級冒険者と言えど奴には敵わないぞ!?」


 ジルがディードリッドの相手をすると言うと、スコルピオが驚愕の表情でこちらを見てくる。


「よし、分かった。ここは姉さんに任せよう。俺達はスコールの所へ行くぞ」


「おい勇者! 貴様自分の姉を犠牲にするつもりか!」


「姉さんは死なねぇよ。姉さんがやれると言ったらやれる。だったら俺達は俺達の出来る事をするだけだよ」


「まぁ、ここはジルベール殿の言う通りにした方がベストだと思うぜ。寧ろスコルピオ殿がジルベール殿を侮りすぎだ。あっちが魔族最強ならこっちは人族最強だ」


「ブラスドール様、それは言い過ぎでは? ですが、ジルベール様なら何とかしてくれる気はしますね」


 ここはジルに任せて先に行こうとするアルベルトにスコルピオが苦言をするが、ブラストールとパトリシアも擁護し、先へ進もうと進言する。


「ぐ……ええい、分かった! ジルの嬢ちゃん、ここはあんたに任せた! 例えスコールを倒して作戦は成功しても、あのディーディーが居たら実質失敗と同じだ。だから何とかしろよ!」


「任せてー」


 スコルピオは苦々しい顔をしながらも、アルベルト達を先導してマードックたちの戦いを迂回しながら城の中へ入っていく。


 城の中へ向かう間際、スコルピオに「奴にキューブを出させるな」と忠告を貰うが、どういう意味だ?


「と言う事は、ご主人様が参戦してくれるって事でいいのかしら?」


 それまで推移を見守っていたコーリンがよろしいかしらと聞いてくる。


「うんー、ここからは私があのディーディーと戦うから、コーリン達はサポートお願いねー」


 そう言ってジルはまずは小手調べとして、ぼーちゃんを呼び出しディードリッドに向かって走りながら伸縮突きを放つ。


 ぼーちゃんの伸縮突きは、ディードリッドの周囲に漂っていた幾つもの水玉が防御に回り、遮られる。


 まぁ、水玉如きにぼーちゃんの伸縮突きは防げずに全て弾き飛ばすが、その分威力が削がれたのか、速度が落ちディードリッドに躱されてしまう。


「ほぅ……何やら外野が騒がしかったが、漸く参戦かのぅ。今度の敵は歯ごたえがありそうじゃ」


 うーむ、幾ら遮られたとは言え、水玉にぼーちゃんの突きが遮られたのは腑に落ちないな。


 ただの水玉じゃないって事か……?


「ここからは私が相手よー。マードックたちはサポートに徹してー」


「ボス……? 何でここに……」


「マードック! 呆けてないで早く避けて!」


「あ、ああ……! てめぇら、下がれ! ボスが戦うぞ、巻き込まれるな!!」


 ジルの登場で何が起きたのか理解していなかったマードックだったが、一緒に駆け寄ってきたコーリンに激を掛けられ、マードックは動き出す。


 すぐにマードックの指示を受けて、ルホースと新種ゴブリン4匹が慌ててその場を離れ、ジルはディードリッドと対峙する。


「フェニゴ、ゴブマルを癒して」


 新種ゴブリンたちが離れたのを確認すると、コーリンはゴブリンフェニックスにゴブリンマッスルを癒すように指示を出す。


「おいコーリン、どういうことだ? これ」


「どうやらご主人様たちの目的もここのボスだったみたいなのよね」


「マジか。タイミングが良すぎじゃねぇか」


「そうね、あたし達は運がいいわよ。ピンチにヒーローが助けに来てくれるんだから」


 コーリンとマードックはそう言いながらジルとディードリッド達の戦いを見守る。


「さて……仕切り直しと行こうかの。今度は妾の相手になると良いがのぅ」


「期待には添えないと思うよー。だって私が勝つからねー」


 おぅ、言い切るね、ジルさんや。


 実際はそれほど楽観的になれるほど敵じゃないんだがな。


「ふふふ、言うではないか。妾はディードリッド・ディープブルー。元魔王軍四天王じゃ」


「私はジルベールー。S級冒険者で『幻』って呼ばれているよー」


「ほぅ……お主が。これはそこそこ楽しめそうじゃのぅ」


 ディードリッドの細目が少し開き、刺すような視線がジルを捉える。












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― 新着の感想 ―
[一言] 人事が謎だぜ魔王軍。 定年退職後にシルバー人材センターからヒラ社員で雇用された元部長みたいな感じでしょうか?
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