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この石には意志がある!  作者: 一狼
第7章 勇者パーティー・激走編
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175.頑張っている部下たち

 予定通りミスリータルの南門からアルベルト達は侵入していく。


 当然、門の周辺には無数のゴブリンと門には門番が居たが、ゴブリン程度や門番は相手にもならずに、あっさりと通過する。


「こっちだ」


 夜が明けたばかりの都市を、影を縫うように潜みながら進む。


 早朝だからと言って、人がまるっきりいない訳じゃない。


 ドワーフや人間に交じって魔族がちらほら見えるが、騒ぎを断てない様に無力化して後続の天蝎騎士団に任せて先へと進み、中央の城を目指す。


「俺とファイちゃんはここで別れるッス」


「……頑張って」


「ああ、任せておけ。そっちこそドジるなよ」


 予定通り、ゴダーダとファイはこの後の天蝎騎士団の援護の狙撃の為に、教会の鐘の塔へと向かう。


「なぁ~んか、嫌な感じだ。空気がピリついているって言うか……なんだこれ?」


 順調に城へと向かっていると、先頭を切って道案内をしていたスコルピオが鼻をひくつかせながらおもむろに呟いた。


「そうか? 静かで騒ぎも起こってないし、順調じゃねぇのか?」


「朝の静かな時間……なのではないでしょうか?」


 そう返事を返したのはアルベルトとパトリシアの2人だ。


 ブラストールはスコルピオ同様に何かを感じているのか、普段よりも警戒を怠らない。


 2人が気が付かなくても仕方がない。まだ戦闘経験が浅いからな。


 当然、ジルもこの空気には気が付いている。


「(これー……いるね(・・・)ー)」


『ああ、いるな。スコールだと言いたいが、どうも違うようだな』


 そう、この嫌な空気は、明らかに強者が放つ気配を抑えたことによって起きる、独特の空気だ。


「静かすぎるんだよ。もう少し人が住んでいる生活感があってもいいのに、それが一切振り払われている」


 スコルピオの言葉にアルベルトとパトリシアは息を飲んで改めて周囲を伺う。


「まぁ、ここであーだこーだ言っても始まらないからな。先に進むしかない。ただ、気を付ける事だな」


 その後は特段敵の襲撃など無く城の傍まで来たが、変化があったのは城門の前に来た時だった。


 ガァァンッ!!


 アルベルト達が来るのを待っていたかのように、城門の中から何かが飛び出してきた。


 ブラストールはアルベルトの前に立ち盾を構え、アルベルト達もそれぞれ武器を構える。


 飛び出してきたのはゴブリンだった。


 但し、何かに吹き飛ばされたかのように全身が傷だらけだ。


「ちぃっ、流石に城の中にもゴブリンの警備を敷いていたか。見つかったからには仕方がない。こっからは強行突破だよ。って、あんたら何呆けているんだよ!?」


 スコルピオが性格に似合わずに自分の武器のレイピアを構え、ゴブリンに向かおうとしたが、アルベルト達はそのゴブリンを凝視していた。


 何故なら、見たことがある特徴あるゴブリンだったからだ。


「ゴブリンマッスル……!?」


「ギムゥ……」


 傷ついた身体を有り余る筋力で立ち上がろうとするゴブリンマッスル。


「ゴブマル! 大丈夫!? って、隊長!? ご主人様!?」


 城門からゴブリンマッスルを心配して駆けつけたのは、かつて勇人部隊に所属し、ジルに盾突いた事のあるコーリンだった。


 と言うか、ゴブリンマッスルは俺がコーリンに与えた新種ゴブリン5匹の内の1匹だ。


「コーリンー、こんなところで何をやっているのー?」


「何をって……話せば長くなるんだけど」


「手短にお願いー」


「えーと、連合軍の為に新勇部隊で伝説の鍛冶師のドワーフを救出に来たけど、助けたのはいいんだけど、奴隷契約されてて連れ出せないから、契約者を倒そうと城に侵入したとこまでは良かったのよ。だけど……」


 そう言ってコーリンは城門の中の城の前で繰り広げられている戦いに目を向ける。


 城前ではマードック、ルホース、新種ゴブリン4匹達が1人の女魔族相手に乱戦を繰り広げていた。


 なるほど。


 新勇部隊も隊長のアルベルトが居なくても、真面目に連合軍に協力していたんだな。


 それがまさか敵地のど真ん中でまさかかち合うとは。


 うん、喜ばしい事なんだけど、今回のミスリータル解放作戦に於いては余計な横やりになっちゃってるよ。


 アルベルト達が突入する前に騒動になっちゃってるし。


「隊長たちこそ、何故ここに?」


「俺達は魔族からこの都市を取り返しに来たんだよ。ここのトップの魔族を倒してな」


「……もしかしてあたし達、邪魔しちゃった?」


 ちょっと気まずそうにジルの顔を伺うコーリン。


 まぁ、かち合ったのは仕方ないし、やることは変わらないんだ。


 ここでコーリンを責めても仕方ないしな。ただ……


「……うそ、だろ」


 てっきり作戦を邪魔されたスコルピオは怒りMaxかと思いきや、城前での戦いを目にして唖然としていた。


「あの……早く、マードックさん達の加勢に向かいませんか? どうやら押されているようですし」


「おいおい、マジかよ。あの魔族、たった1人であの手勢を押しているのかよ」


 パトリシアの言葉に戦いに注目してみれば、確かにたった1人の女魔族に押されていた。


 ルホースの実力は詳しくはしらないが、マードックや新種ゴブリン4匹は決して侮れる相手ではない。


 それを身体能力や魔力で勝る魔族とは言え、1人で相手取るとは。


 慌ててマードックたちに加勢しようとしたアルベルト達だったが、それをスコルピオが止める。


「待て。奴はやばい。まさか、こんなところに出張ってくるとは……」


「おいおい、このままじゃ俺の部下がやられちまうよ」


「待て、いいから聞け。奴はディードリッド・ディープブルー。別名、深海のディーディー。元魔王四天王の1人で、奴は魔王に匹敵すると言われた最強の魔族だ」












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