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この石には意志がある!  作者: 一狼
第7章 勇者パーティー・激走編
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173.ミスリータル解放作戦会議2

「以前、あたいらもトップを狙った事はあったんだが、その時は向こうさんの軍事力に圧倒されてあっさり敗北しちまってな。だが今回は勇者らが居る。多少無理な作戦も押し通せるってなもんだ」


「おい、勇者に期待するなとは言わないが、出来ない事は出来ないぜ」


 流石にアルベルトも過度の期待を背負わされたとなっては堪らないのか、一応スコルピオに釘を刺しておく。


「分かってる分かってる。まずミスリータルの詳細な情報から行こうか、クローディア」


「はい、こちらが神銀都市ミスリータルの地図になります」


 スコルピオに促され、クローディアがミスリータルの詳細な地図を広げる。


 中央には城があり、その周辺を工業区、商業区、人族住居区、魔族住居区と別れていた。


 それとは別のもう1枚の地図も取り出す。


 ミスリータル周辺のミスリル鉱山が記された地図だ。


「わたくし達の目標であるトップの魔族――スコールが居るのは勿論、中央の城になります。後は各詰所に魔王軍が詰めておりますね。後は鉱山にも管理の為の砦があります。」


 そう言い、クローディアは地図の各場所に印をつけていく。


 ……しかし、いつも思う事だが、クローディアのこの諜報力って凄まじいな。


 敵地でどうやってここまでの情報をどうやって集めているんだか。


 ある意味、クローディアの諜報力ってチートだよな。


「詰所の数が多いな。幾らトップを倒したとしても、統率を失ったこれだけの魔族が暴れたら俺っちらだけでは対処できないぞ」


「あんたらがスコールを倒すまでの間、詰所関係は天蝎騎士団が抑えておくよ」


「天蝎騎士団の人数は?」


「200人ほどだね」


「……厳しいな。大丈夫か?」


 まぁ、確かにブラストールが心配するのも分かる。


 幾らトップを倒すまでとは言え、都市内部の魔王軍とこちらの騎士団の数に差がありすぎるからな。


「旧ドワーフの国の都市の一角を解放するんだ。大丈夫じゃなくてもやるしかないんだよ。それにあんたらがスコールを倒せば魔族の数は心配は無くなるさ」


 ん? トップが居なくなるから残りの魔王軍が烏合の衆になるから……って意味じゃなさそうだな。


 ……あ、もしかして。


「ミスリータルの人族の住民を戦闘に参加させるつもりなのー?」


 同じ考えに至ったジルが、スコルピオに問う。


「そうだ、スコールが倒されれば奴隷契約が解除されるからな。そうなれば今まで虐げられてきた住民は魔族に従う理由が無くなる。後はあたいらが指揮をして魔族をミスリータルから追い払う。特にドワーフ等は力が強いから戦闘にももってこいだからな!」


 ミスリータルの人族は奴隷にされていると言っているが、実際に奴隷契約しているのは3,000人ほどなのだと言う。


 流石に全住人を奴隷契約して管理は出来ないらしく、力の強い奴や統率力のある奴を筆頭に奴隷契約をしているらしい。


 後の残った住民は魔族の力(暴力)によって支配していると。


 と言うか、これまでの話の流れだと、その奴隷契約をしているのは……


「スコール1人で3,000人と奴隷契約をしているのですか?」


「信じられない事にそうなります。これは私達がミスリータル内部に忍び込んで調べた事なので間違いありません」


 アンタレスの言葉に皆が呆れる。


「バカじゃねぇの? これ、俺でも分かるぞ。幾らなんでも1人で管理しすぎだ」


 アルベルトの言葉に誰もが同意していた。


 うん、バカだよね。これ。


 スコールがやられた時点で3,000人の奴隷が解放されちゃうんだもの。


 リスク管理が出来なさすぎ。


 魔族特有の個人実力主義から来る自信の表れなんだろうか?


 俺らからしてみればバカだと言わざるを得ないんだけどな。


「くくく、少なくともあたいらには有利に働いているんだから、ここは素直に喜んでおこうぜ」


「あと、気になったのは、残りの魔族でござる。トップのスコールを倒して住民を解放し、協力してもらい都市内の魔王軍を倒すのは良いでござるが、魔王軍以外の住民として住んでいる魔族でござるよ。4,000人以上の魔族らも住民らと協力して倒すのでござるか?」


 確かに1万5千人も居る住民と協力すれば4000人ちょいの魔族は倒すことは可能だろう。


 残った魔族は軍人ではなく、ただの一般市民の魔族なのだから。


 まぁ、それでも人族よりは身体能力やら魔力やら高いので脅威なのだが。


 とは言え、残った魔族の中には女子供が大勢含まれているはず。


 魔族とは言え、それを皆殺しにするのか。


 ヒビキはそう聞いているのだ。


 おそらく、これまで虐げられていた人族の住民はこれまでの恨みから容赦なく実行するだろう。


 それとも歪な共栄共存で暮らしてきた事で魔族に情が湧き、情けを掛けるか?


 実行したとしても、5,000人もの屍を晒すだけでも凄惨な光景な上、そこに至るまでの過程で人族の住民にも多大な犠牲が出るだろう。


 だがスコルピオはニヤリと笑う。


「いいや、倒さない。このミスリータルから出て行ってもらう。都市内部の魔王軍も無理をして倒す必要は無いんだ。ただ出て行ってもらえればいい」


 あー、なるほどな。


 スコルピオの奴、意外と策士じゃないか。


「(きゅーちゃんー、どういうことー?)」


 流石にジルもそこまでは気が付かなかったみたいだな。


『もし魔族がミスリータルを追い出されたら、その後は何処へ向かう?』


「(あー! そっかー、そう言う事かー)」


 そう、ミスリータルを追い出された魔族は、周辺の都市か王都へと向かう。


 今まで均衡を保ってきた王都や周辺都市は、大量の難民を抱える事によりバランスを崩し、様々なトラブルに見舞われるだろう。


「そう、そうすれば、次の都市や王都の攻略もやりやすくなる訳だ」


 スコルピオは次の都市解放を視野に入れての作戦を立てていたのだ。


「あの……それだと奴隷として扱われている周辺都市の人族にしわ寄せが行くのではないでしょうか?」


 パトリシアの懸念も尤もだ。


 難民を受け入れる為、人族の住人達を排除する可能性もある。


 だが、それはまずないだろう。


「今まで奴隷に頼っていた生活に慣れ切ってしまった魔族にいきなり排除はしないさ。いきなり奴隷無しで生活しろって無理に決まっている。それでも全くゼロって訳じゃないだろう。だから、ミスリータルを解放したら直ぐに他の騎士団とも連携を取り、残りの都市と王都を解放する」


 つまりこの作戦を切っ掛けに、旧ドワーフの国を解放する為の電撃作戦なのだ。












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