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この石には意志がある!  作者: 一狼
第7章 勇者パーティー・激走編
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172.ミスリータル解放作戦会議1

 アルベルト達勇者一行は、神銀都市ミスリータルからほどなく離れた廃墟の村に来ている。


 目的地は、村の中央からやや外れたまだ辛うじて残っている建物の中だ。


 頑丈な作りになっていて、今回のように密談に使うのに重宝しているらしい。


 建物の中に入るのは、リーダーのアルベルト、軍事的サポートが可能なブラストールとヒビキ、聖女としてまたアルベルトの指導者としてパトリシア、情報を統括する諜報員のクローディア、S級冒険者としてアルベルトの姉としてのジル、最後にオブザーバーの謎のジジイの計6人だ。


 残ったメンバーは建物の影に止めて、目立たない様にカモフラージュして待機している。


 建物の中には既に人が居り、こちらの到着を待っていた。


 中に居たのは3人。


 もうお馴染みになってきた黄金の鎧に身を包んだ十二乙女騎士団の団長の1人だ。


 もう1人は銀色の鎧を着た、おそらく副団長とかだろう。


 最後の1人はまぁ、平騎士か?


「待っていたぜ、勇者。あたいは十二乙女騎士団の天蝎騎士団のスコルピオ。こっちは副団長のアンタレス、突撃隊長のレサト。口さが悪いのは簡便な。あたいらは孤児出身なんでな」


 天蝎騎士団団長のスコルピオが如何にも育ちが悪いと言った粗野な態度で挨拶をしてきた。


「構わないよ。そんな事を言ったら俺も勇者なのに環境が悪かったせいか口が悪いからな」


「ああ、勇人部隊だったっけか?」


 スコルピオが何気なく口にしているが、勇人部隊の事はこれから勇者が魔王退治の旅に出るにあたってAlice神教教会の不祥事は公にはなってないはずだ。


「そんな目で見るなよ。こっちも仮にも団員を預かる団長だ。それなりに情報は集めているよ」


 ほぅ、戦場に身を置きながら各地の情報を集めているのか。情報の重要性を理解しているからこその行動だな。


 もしかしたらそれでクローディアとの情報網に引っかかりコンタクトが取れたのかもしれないな。


「さて、細かい挨拶なんかは抜きにしてさっさと作戦会議を始めようじゃないか」


 お題は当然神銀都市ミスリータルの魔王軍からの解放だ。


「正確には魔族からの解放だけどな」


「どういうことー?」


「第4戦闘区域――旧ドワーフの国はもう魔族の国と言っても過言ではないんだよ。つまり、奴隷となっているドワーフ達の他に、普通に魔族たちが住んでいるんだ」


 スコルピオの情報によれば、もう何十年も前から旧ドワーフの国を魔族が支配しているので、一般の魔族が住み、捉われた人族らを奴隷として使役しておりほぼ平和に暮らしているらしい。


「あたいらが攻め込もうとしているミスリータルも大勢の魔族が暮らしている。人口についてはクローディアの方が詳しいんじゃないか?」


「わたくしが把握している範囲では、魔族が5,000人、ドワーフが1万人、他の人族が5,000人程と記憶しております」


「そん中で魔王軍としての人数が800人ってところかな?」


 ……多いな。


 これまでは魔王軍と言っても精々20~50人程度の魔族が相手で、残りはモンスターだったからな。


 800人と言う数はミスリータルの魔族人口に比べれば多いわけでもないが、魔族個人の能力を見る限り決して侮れない数ではない。


「後は警備に都市周辺と内部にモンスターがゴブリン1万、上空にワイバーンが1,000匹居るぞ。これはあたいらが何度か威力偵察をして確認したから間違いないぞ」


 おまけにモンスターの数も尋常じゃないと来ている。


 たかがゴブリン。されどゴブリン。数が揃えば雑魚とは言え脅威ではある。


 って言うか、ゴブリン1万とかマジあり得ないんですけど。


「さて、勇者としてはどう作戦を立てる?」


 スコルピオが面白そうにアルベルトを見る。


 うーむ、基本的に魔族は実力主義且つ個人主義だから、これまでは軍事行動を取らずにバラバラで攻めて来たから各個撃破で対応出来ていたんだよな。


 今回も数が多いがそれで対応できるのではと考えるが、それなら各都市は魔族が自由気ままに行動され荒れているように思われる。


 だが、話を聞く限りじゃ奴隷にされてはいるものの、人族らと魔族は共存しているようだ。


 まぁ、歪な共存ではあるが。


「(きゅーちゃんは魔族が統率されているって考えるのー?)」


『ああ、旧ドワーフの国を支配して1年や2年じゃないし、これまでのノウハウもあるだろう。でなければあの魔族が何十年も人族を支配して普通に暮らしているってありえない』


「(むふー、そうだとしたら厄介だねー)」


『いや、寧ろそっちの方がやりやすいぞ。俺達にしてみればな』


「(ああ、そう言うことかー)」


 ジルは直ぐに俺が何を言わんとしているのか気が付いたみたいだ。


『まずは確認だな。スコルピオかクローディアなら知っているだろう』


 ジルが俺の代わりにミスリータルの統治系統がどうなっているか尋ねる。


「ほぅ、いいところに目を付けるじゃないか。流石S級冒険者、肩書は伊達じゃないな」


「はい、ミスリータルだけではなく他の都市や王都もそうですが、各都市をそれぞれ統治しているトップが居ます。そのトップの命令により各都市の魔族や魔王軍は騒ぎ無く都市を治められてますね」


 スコルピオがニヤリと笑い、クローディアに視線を向けてミスリータルの統治状況を教えてくれる。


「因みに、ミスリータルや他の都市の魔王軍は軍事組織行動を取ることにより、通常よりはるかに攻略困難な軍と化しております」


 補足として情報をくれたアンタレスは、これまでの事を思い浮かべたのか、やや忌々しげに顔を歪ませる。


 まぁ、そりゃあ魔族個人だけでも身体能力的に厄介なのに、組織的行動を取られちゃ厄介さが撥ね上がるだろうさ。


 だが、攻略困難な反面、それが攻略の鍵にもなる。


「なるほど、となれば少数精鋭の俺っちらが狙うのは1つだな」


「そうでござるな。狙うは組織の頭、即ちミスリータルの統治者の魔族でござる」


 流石に軍人であるブラストールとヒビキは直ぐに組織的行動をする軍の急所に気が付いた。


「そう言う事だ。統治に優れたトップが居なくなれば、残るのは烏合の衆だからな。尤も、そのトップを殺るのが一番の難関でもあるがな」


 スコルピオが「勇者たちには期待しているぜ」と言いながら、作戦の詳細を詰めそれぞれの役割を決めていく。











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[良い点] 勇者PTという伝統ある暗殺カチコミ部隊
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