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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2章 勇者・召喚編
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018.冒険者ギルド

「あの……聞き間違いでなければその子の冒険者登録をしたいと言う事でしたが……」


 受付嬢が戸惑いながらもアルファに聞き返す。


「ああ、この子――ジルちゃんの冒険者登録をお願いしたいんだ」


「確かにスキルを授かった者ならだれでも冒険者登録は出来ますが……流石にこれほど小さなお子さんを登録するのは……」


「5歳になってすぐに冒険者登録をした子も居るって聞いた事あるけど?」


「それは……アルファさんのおっしゃる通り5歳のお子様が登録したことはありますが、それは貴族のご令息などです。アルファさんなら言いたいことが分かりますよね?」


「他の子ならD級になる前に命を落とす……って事かい?」


「ええ」


「どういうことー?」


 受付嬢とアルファのやり取りを見ていた当事者のジルがどういう事か聞く。


 ジルにしてみれば遠回りしてまで冒険者ギルドに登録しに来たのに拒否されようとしているんだからな。


「あー……うん。このお姉さんの言う通り、冒険者登録は直ぐ出来るんだよ。ただ、登録して1年以内にE級からD級にならなければ冒険者登録は剥奪されるんだ」


「ええ、そしてD級に上がるには必ずモンスター討伐依頼が5つなければならないわ」


 あー……なるほど。


 受付嬢はジルが幼い為、討伐依頼を果たせずに命を落とすのを心配しているのか。


 で、他の5歳で登録した子供――貴族の子は貴族の力で登録したと言う事になるのか。


 この場合、権力で登録したのではなく、財力……つまり他の冒険者やら装備やらをお金の力で揃えてのランクアップを果たしたって訳だな。


「その点なら心配いらないよ。ジルちゃんはこう見えてオークを倒す事が出来るからね。それも多数を相手取っても倒せるほどの実力の持ち主さ」


「ジルベールさんの実力は私も保証しますよ。実際にこの目で見ましたからね」


「え!? オークを倒したんですか!?」


 これには受付嬢もだが、こちらの様子を伺っていた冒険者も驚いていた。


 そりゃあそうだよな。


 こんな小さな子供がオークを相手取って勝利するなんて誰も思わないだろうよ。


「ええ、ジルベールさんの実力は申し分ないし、私がジルベールさんの保証人になります」


「え、ラムダさんが保証人になるんですか……? そこまで言うのであれば登録を致しますが。ええっと、ジルベールさんもそれでよろしいですか?」


 本人の意思の確認だろう。


 受付嬢としてはアルファやラムダのおっちゃんに限ってそんなことは無いだろうが、ジルの意思を無視して周りで強引に登録させているようにも見えるだろうしな。


「うんー、冒険者登録お願いしますー」


「分かりました。それではこの用紙に必要な項目の記入をお願いします。ラムダさんも保証人としてこの用紙に記入をお願いします」


 ジルは渡された用紙に必要な項目の記入をしていく。


 と言っても登録用紙の内容は規約云々やらで、実際に書く内容は名前とスキル、可能であれば出身地と生年月日くらいだ。


 出身地と生年月日は人によっては書けない場合があるからだろう。


「はいー、出来ましたー」


 ジルは書いた登録用紙を受け受け上に渡す。


 受付嬢は受け取った用紙の内容を確認していくと、ある点でその視線が止まる。


「【ストーンコレクター】……。えっと、本当にジルベールさんがオークを倒す実力があるのですよね……?」


 あー……、オークを倒すほどの実力って言うから、受付嬢は戦闘系スキルがあるだろうと予測していたんだろうな。


「ああ、間違いないよ」


「付け加えるのなら、恐らくですがグレイウルフリーダーをも倒す力もありますよ」


 それはファルト村の餓狼盗賊団の襲撃のことを言っているんだよな。


 確かに噂にはなっていたが、ここまで広まっていたのか?


 まぁ、ラムダのおっちゃんは商人だから情報収集には余念がないんだろう。


「それって餓狼盗賊団の事ですか?」


「ええ」


「あー……、そうかファルト村出身か。なるほど、妙に納得だ」


 アルファの方も思い当たる事があったのか、グレイウルフリーダーから餓狼盗賊団に行き当たったようだ。


「餓狼盗賊団……この子本当に何者なの……こんな7歳児初めて見るわよ……」


 受付嬢さん、受付嬢さん、本音漏れてますよ。


「おほん、それではジルベールさん、ここに血判をお願いします」


 ジルは言われるままに針で指を刺し、血判を登録用紙に押す。


「はい、それでは少々お待ちください」


 受付嬢は登録用紙をもって奥の部屋へ行き、暫くすると手のひらサイズのブロンズ色のカードを持ってきた。


「はい、それではこれがジルベールさんの冒険者ギルドカードです」


「ありがとー」


 そのあと、受付嬢は簡単な冒険者ギルドの説明を行う。


 まぁ、人としてやっちゃいけない当たり前の事や冒険者としてやらなければならない事――緊急時には町の防衛に強制参加等だ。


 後は冒険者ランクだな。


 E級から始まりS級までの6段階の級がある。


 E級が初心者

 D級が一人前

 C級が中堅

 B級が上級者

 A級が一流

 S級が超一流


 まぁ、異世界物のお約束で、S級は数えるほどしか居らず、冒険者ランクのトップと言えば大体はA級を指すらしい。


 後はさっき説明があった通り、1年以内にD級にならなければ冒険者登録は剥奪される。


 D級までにモンスター討伐を最低5つは達成しなければならないと。

 まぁ、それはおいおいだな。


 今は王都へ向かうのが先だ。


 と、そう思っていたのだが……


「あと申し訳ないのですが、ジルベールさんには冒険者ギルドからモンスター討伐依頼を1つ受けてもらいます」


「どうしてー?」


「アルファさんとラムダさん証言を疑う訳ではありませんが、冒険者ギルドとしてもジルベールさんが本当にモンスターを倒せるほどの実力があるのを確認しなければならないのです。

 勿論何かあった場合の護衛としての確認者も同行します」


 矢鱈無闇に幼い子供を冒険者にしないための実力確認かな?


『ジル、ここで渋っても意味ないぞ。それにこれでジルの冒険者ギルドもジルの実力に文句は言われなくなるぞ』


「うー~~、分かったー。それで何のモンスターを倒せばいいのー?」


 ジルは渋々だが受けることにした。


「はい、こちらのモンスターの討伐をお願いします」


 そう言って渡されたのは異世界物の定番、ゴブリン退治だ。


 数もそれほど多くは無く、5匹。


 ジルの実力なら何の問題も無しだ。


 冒険者登録を無事に済ませ、オークの素材を卸しラムダのおっちゃんに入場料の立て替え分を払ってゴブリン退治に向かう事にする。


 冒険者登録をした時点でアルファ達とラムダのおっちゃんの役目は終わったのでこの場で別れた。


「ジルちゃんの実力は分かるが、無茶はするなよ」


「ジルベールさんのご活躍を期待していますよ」


 こうして見ればアルファ達もラムダのおっちゃんも良い人たちだったな。


 助っ人のお礼とは言え、ここまでしてくれたんだから。


 因みに、ゴブリン退治はあっさりと完了した。


 同行していた確認者はジルの実力に「ありえない、あんな子供が……」としきりに自分の目を疑っていたが。












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