168.遥かなる再会
「やるな! 流石は神兵と呼ばれるゴーレム兵器だ! だが、コイツ相手にはどうかな?」
そう言い、ジョージョーは“世界の覇者”のゴーレム兵器をリオの操る“星の金貨”に仕向ける。
「迎え撃て! “星の金貨”!」
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄っ!!』
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!』
“世界の覇者”のラッシュを“星の金貨”のラッシュで抑え込む。
「さて、これでそっちのゴーレム兵器は動きが取れない。さぁ、こっちの残り2体のゴーレム兵器はどうする?」
“炎の魔術師”と壊されたはずの“銀の戦士”が起き上がり、ジョージョーと共にフェンリルに向かってくる。
“銀の戦士”は壊されたように見えて、外側の鎧が剥がれただけだった。
おいおい、何で原作を忠実に再現しているんだよ。
「怯むな! 例えここで我々の命が落としたとしても、魔王軍に気迫で後れを取ってはならん! 我々の思い1つ1つがいずれ魔王に届く刃となるのだ!」
ジョージョーとゴーレム兵器2体に飲み込まれそうになっていた銀の鎧の十二乙女騎士団の2人の騎士は、キャシーの活で何とか気持ちを奮い立たせる。
「んー、根性論だけで何とかなる状況じゃないんだけどな。さて、2体は周りの雑魚を相手にしていてくれ。ボクは本命を狙う」
“炎の魔術師”と“銀の戦士”の2体のゴーレム兵器にクローディア達とキャシー達が迎え撃つが、状況は悪くなる一方だ。
フェンリルナイトも2体のゴーレム兵器に襲い掛かるが、次々と蹴散らされてその数を減らしていく。
リオも“星の金貨”を操りつつも、召喚した残りのゴーレムを用いてキャシーと共に2体のゴーレム兵器にけしかけるが、あっさりと破壊され少しの時間稼ぎにしかならない。
本格的にマズイな。
こっちは3体の神獣相手に動けないし、このままじゃフェンリルがジョージョーに支配されて状況が更に悪化してしまう。
「さぁて、これで邪魔者は居なくなった。どうだ? 今からでもボクに支配される気はないか?」
『断る。我は誇り高きフェンリル。例えスキルで体を支配できても心まで支配できると思わぬことだ』
悠然とフェンリルの前に立つジョージョー。
だがそれでもフェンリルはジョージョーの誘いを断る。
そんな2人の前に、必死に母親を庇おうと生まれたばかりの赤ちゃんフェンリルが立ち塞がった。
「キャンキャン!」
『待て、我が子よ。下がっておるのだ。こやつは我が子が敵う相手ではないのだ』
「そういや、子供が生まれたばかりだったっけ。
……良い事思いついた。こうすれば心が折れるかな?」
ジョージョーはニヤリと口を歪め、フェンリルではなく赤ちゃんフェンリルへと歩いていく。
『待て! 我が子に手を出すな!』
フェンリルは必死に体を奮い立たせ、なけなしの力で立ち上がりジョージョーに向かって行くが、あっさりと返り討ちに遭う。
「太陽の息吹の波紋疾走!!」
『ぐぅっ!』
「大人しくそこで見ていな。さぁて、生まれたばかりのご子息には素敵な旅をプレゼントしてあげようじゃないか」
「キャンキャン!」
ジョージョーは赤ちゃんフェンリルを掴みあげ、反対の手で空間を叩き時空波紋を呼び起こす。
……まさか、コイツ!
『待て、待つのだ!』
「グッドラック」
ジョージョーが赤ちゃんフェンリルを時空波紋に放り込む。
飲み込まれた赤ちゃんフェンリルは何処とも知れない時空へと飛ばされてしまった。
『キ、キサマァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』
「あれ? 絶望を与えるつもりが怒りを買ってしまったよ。失敗失敗」
怒り狂うフェンリルをジョージョーは愉快に笑って見ていた。
初めからこっちを虚仮にするつもりでやったくせに白々しい。
怒りが限界を超えたのか、フェンリルの猛攻がジョージョーを襲うが、魔王の欠片に阻まれて攻撃は一切通じない。
それでもフェンリルは攻撃を止めない。
「(きゅーちゃんー。フェンリルさんこのままじゃ危ないよー)」
『分かってる!』
フェンリルの体力も危ないが、ジョージョーに支配されてしまう危険性もある。
ここまでピンチの状況なのに、何故か「何とかなる」と俺の【第六感】や【直感】、そして【運命の絆】のスキルが囁いていた。
「止めと行こうか。更なる絶望を味わえ」
ジョージョーは赤ちゃんフェンリルを放り込んだ時空波紋をけし、別の時空波紋を呼び起こす。
そして新たな時空波紋から呼び出されたのは純銀の狼。8mもの大きさなフェンリルだった。
……マジか。ここに来てフェンリルを呼び出すとは。
おそらく別の時代のフェンリルだろう。
だが効果的だ。今代のフェンリルにとっては。
『貴様ぁ! 何処まで我を侮辱すれば気が済む!!』
怒り狂うフェンリル。そしてそれを愉快そうに見つめるジョージョー。
……ん? 愉快そうに?
よく見ればジョージョーも顔を凍りつかせて新たなフェンリルを見ていた。
新たなフェンリルは今代フェンリルに襲い掛かるかと思ったが、何故か直ぐ傍のジョージョーに向かって巨大な咢を開く。
「なぁっ!?」
魔王の欠片に守られているはずのジョージョーはあっさりと左腕を噛み千切られた。
咄嗟に体を捻って腕だけで済ましたのは流石四天王と言ったところだが、どういうことだ?
何故、新たなフェンリルの攻撃がジョージョーに効いた?
『ぺっ、マズイ』
噛み千切ったジョージョーの腕を吐き出し、新たなフェンリルは今代フェンリルに優しい目を向ける。
『お母さん、少し待っててね。今コイツらを倒すから』
新たなフェンリルはクローディア達とキャシー達に襲い掛かっていた2体のゴーレム兵器を体当たりで弾き飛ばし、そのままジル達が相手している3体の神獣に向かって鋭い牙を突き立てる。
ウルボロスに噛み付いた新たなフェンリルは、そのままウロボロスを振り回しガネーシャとナインテイルを吹き飛ばし、遠心力の勢いのままウロボロスも地面へと叩き付ける。
『ママ、大丈夫だった? 僕が来たからにはもう安心だよ!』
……は? ジルがママ?
「ママって私のことー? 貴方は誰ー?」
『僕だよ、マックスだよ! お母さんとママを助けるために戻って来たんだよ!』
……………………は? はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?
名前:マックス
種族:フェンリル
属性:月・時空
状態:傲慢化(魔王の欠片)
脅威度:SS
うぉいっ! マジでマックスだよ!
しかも、え? 何? 何でか魔王の欠片を持っているし!
あ、だからジョージョーへの攻撃が効いたのか!!
『さて、あんたら。仮にも神獣のプライドがあるならいつまであんな雑魚の支配を受けているつもりなの? いい加減目をさましなよ!』
新たなフェンリル――マックスの威圧が3体の神獣の魂を呼び起こし奮い立たせる!




