167.神兵
ジョージョーが新たに時空波紋で呼び出したのは、3体のゴーレム兵器だった。
ハート形をあちこちに散りばめたゴーレム。
炎を纏った鳥頭のゴーレム。
レイピアを携えた銀の鎧に身を包んだゴーレム。
【鑑定】や【解析】でゴーレムを見れば、とてもゴーレムとは思えない地球現代でも再現できない程の精密な内部構造を持つロボットやアンドロイドと見間違うほどの人間にも見えるゴーレムだ。
しかも、この3体のゴーレムはフェンリルが守護する神兵と呼ばれるゴーレム兵器と同じだった。
おそらく、各神獣がゴーレム兵器を守護していたのだろう。
その神獣がジョージョーに支配されていると言う事は、今目の前にある光景の通り、ゴーレム兵器は魔王軍に奪われてしまったと言う事だ。
と言うか、このゴーレム兵器3体とも、どこかで見たことあるような姿なんですけどっ!?
ゴーレム兵器を作った奴は間違いなく日本人転生者だろっ!!?
「神獣たちは勇者を倒せ」
そんな俺の突込みを余所に、ジョージョーは自身に唯一攻撃可能であるアルベルトの排除にかかった。
マズイッ!
『ジルッ!』
「(分かってるー!)」
アルベルトに襲い掛かる3体の神獣。
流石にS級の神獣3体もの攻撃を、アルベルト1人で凌げるはずも無く、蹂躙されようとしていた。
勿論、それを黙って見逃す勇者パーティーではない。
ブラストールが盾役としてアルベルトの前にその身を晒し、ヒビキが神獣の迎撃に向かう。
ジルもぼーちゃんとはーちゃんを両手に持ち、ガネーシャの4本腕の攻撃をぼーちゃんとはーちゃんを交差して受け止める。
『かめちゃん、空間凍結だ!』
『分かりました!』
ジルがかめちゃんを呼び出し、アルベルトを中心に空間凍結を掛けて神獣共の動きを封じる。
この一時的な空間凍結の中ならジルは動けるからその間に対応可能な状況に持って行こうとするが、なんと空間凍結の中でもウロボロスが動き回りアルベルトを襲おうとしていた。
くそっ、支配されても神獣か!
1mもの太い胴回りを持ち、20mもの長い体をとぐろを巻きうねらせながらアルベルトに向かう様は、正に圧巻と言ったところだろう。
空間凍結したのが裏目に出た。
動けないアルベルト達にはウロボロスの攻撃を躱す手段が無い。
『ジル、かめちゃんを戻せ! へきちゃん、真円壁だ!』
『わ、分かったょ……!』
かめちゃんを戻し空間凍結を解除し、へきちゃんを中心にバリアを張る。
敵である神獣たちはへきちゃんの真円壁に押し出され、体勢を整える事が出来たと思ったのも束の間、真円壁をガネーシャとナインテイルが連続で攻撃し、あっさりと打ち破る。
バリンッ
『うそぉっ!?』
真円壁はへきちゃん自身が神鋼化するよりも強度は劣るものの、周囲に防御壁を張る事の出来る複数を守る事の出来る能力だ。
もう少し持つかと思ったが、まさかこうもあっさりと打ち破るとは。
いかん、流石にヤバい。
この場で神獣に対抗できるのはS級のジルだけだ。
だが3匹もの神獣相手に神獣たちの能力も相まってジル1人じゃ手が回らない。
遠距離からファイが援護はしてくれるものの、全くと言って効果は無い。
かろうじてゴダーダの狙撃がわずかな傷をつけるくらいだ。
「“世界の覇者”、“炎の魔術師”、“銀の戦士”、フェンリルを弱らせろ」
おまけにジョージョーが3体のゴーレム兵器でフェンリルを襲ってくる。
「タラハ、ライオナ、眷属殿たちと一緒にフェンリル殿を守りなさい。リオ、我々は迎え撃ちますよ!」
「勿論! ゴーレム召喚、ケンタウルス、獅子皇、大剣士!」
十二乙女騎士団の銀の鎧の騎士がフェンリルの前に陣取り、リオが3体のゴーレムを召喚する。
こちらに援護に回っていたファイとゴダーダもゴーレム兵器の迎撃に向かう。
パトリシアも敵を寄せ付けない【サンクチュアリ】などの魔法を使うが、一時しのぎにしかならない。
こっちも神獣3匹相手に追い込まれているってのに、向こうもピンチだ。
このままじゃ、ゴーレム兵器相手にフェンリルが弱らされ、ジョージョーの支配下に置かれてしまう。
どうする? 奥の手を使うか?
だがあれは、出来れば今は晒したくない手段だ。
神3匹はジルがお気に入りの皆を全開にして対処しているが、どうしても後手に回ってしまう。
アルベルトも聖剣の《アクセル》を使い対処しているが、やはり神獣相手には効果が薄い。
ブラストールもヒビキも今は完全に防御に回って致命傷を避けるので精一杯だ。
「ああっ! ケンタウルス! 大剣士!」
「ぐぅうっ」
リオが召喚したゴーレムも神兵ゴーレム兵器の前にはあっけなく砕け散る。
キャシーも健闘はしているものの、ゴーレム兵器の前には手も足も出ない。
フェンリルの眷属のフェンリルナイトもゴーレム兵器の前には蹴散らされ次々数を減らしていく。
『く、こうなっては仕方あるまい。猫人の子よ、お主にこれを託そう。神兵に対抗できるのは神兵だけだ』
そう言って、フェンリルは体を奮い立たせ、背にしていた大樹に何やら呪文を呟き、封印を解除していた。
そして大樹の根元から出て来たのは、ジョージョーが召喚したゴーレム兵器と同じ、ゴーレムとは思えない精巧な作りをしたゴーレムアンドロイドだ。
見た目は某星の白金の風貌をしている。
「フェンリルちゃん、ありがと! さぁ、行くよ! “星の金貨”起動!」
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!』
“星の金貨”は起動するなり、フェンリルの襲い掛かろうとしていた“銀の戦士”を拳のラッシュで粉砕した。
おおっ! 流石は主人公クラスのゴーレム兵器!
これで少しは光明が見えたか?




