166.時空波紋再び
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁっ!!」
「名前とセリフが一致してないでござるぞ!」
切り込み隊長としてヒビキがジョージョーに攻撃を仕掛けるが、直前で刀が弾かれて一切のダメージが与えられない。
「【ホーミングボム】」
「シィッ!」
ヒビキの攻撃の隙をついてのファイの魔法やゴダーダの狙撃も同様だ。
くそ、やっぱり魔王の欠片の影響か!
ジョージョーは魔王の欠片を所持しており、強欲化していた。
迷宮大森林で出会った金色地竜の時と同じだ。
だが、手が無い訳じゃない。
1つは俺の2つ目のスキル、【千載一遇】で魔王の欠片の効果を無効化する事だ。
但し、これにはジル達勇者パーティーの戦闘力もダウンするのであまり意味が無い。
ああ、フェンリルナイトを仕掛けると言う手もあるな。
彼らならスキル無しでもそれなりの戦闘力を保持しているはずだ。
まぁ、今はもう1つの確実な手を遣わせてもらおう。
『ジル、ヒビキを下がらせろ。アルベルトに任せるんだ』
「(そっかー。アル君ならジョージョーにダメージを与えられるんだね)」
ジルの指示でヒビキは一旦下がり、代わりにアルベルトが攻撃を仕掛ける。
「《アクセル》!」
流聖剣アクセレーターの能力を発動して、一気に加速してジョージョーの強欲化の影響を無視して一閃する。
「なっ!?」
「うぉっ!? あぶねぇー。そっか、そういや勇者が居たっけ。だが残念だったな。ボクにはお前らの攻撃は一切通用しない。そして近づけば我が波紋の餌食だ。喰らえ! 波紋疾走!!」
どういう訳か、アルベルトの攻撃はジョージョーの翳した手によって阻まれていた。
アルベルトの剣とジョージョーの手の間には空間が波紋を広げ、それがアルベルトの攻撃を防いでいた。
そしてそのままジョージョーは反対の手を伸ばし、あり得ない攻撃を仕掛ける。
バチィッ!!
「ぐぅっ!!」
ジョージョーが触れたところから思いっきり弾き飛ばされたアルベルトは、直ぐに態勢を整えて距離を取った。
「アル君!?」
「アルベルト様!?」
「大丈夫だよ、姉さん、パトリシア。ちょっと痺れただけだから」
あのアルベルトの加速状態の攻撃に反応するとは、流石は魔王四天王を名乗るだけの事はあるって事か。
それにしても……ジョージョー、お前色々ネタ盛り過ぎじゃねぇか!
何だよ、波紋疾走って。
ジョージョーのスキルは【支配者】だから、波紋云々はマジでジョージョーの能力と言ったところか。
だとすれば、【千載一遇】で魔王の欠片を無効化しても、奴には攻撃手段も防御手段も存在していた訳だ。
くそ、意外と厄介だな、あいつ。ネタキャラの癖に。
「おいおい、何だよ、その空間の歪みは」
「まさかとは思うけど、時空波紋なのー?」
「ジルベールさん、その予想は当たっていますよ。あれは紛れも無く時空波紋です。どうやって人為的に起こしているかまでは不明ですが」
ブラストールは盾職の役割を果たすように皆の前に立ってジョージョーの展開した空間の波紋を見て警戒する。
だがその現象に一番見覚えのあるクローディアが時空波紋だと断定し、ジルの疑問を肯定した。
「へぇ、良く知ってるな。ありとあらゆる場所と遥かなる過去と未来の時間を繋げる時空波紋! その時空波紋の前に貴様らの攻撃は無駄と知れいぃ!」
そう言い、やや斜めに立ち体を逸らせて大げさな仰々しいポーズを決める。
「ボクは独自の呼吸法により、血液中にエネルギーを蓄積し生命力を活性化させそれを波動とし攻撃する方法を得た! 更には、我が波紋は時空間にまで及び、時空波紋を起こすまでに至ったのだ!!」
今度は両手を交差してやや前かがみになり、膝を少し曲げての決めポーズをとる。
いちいちJ○J○立ちをしなければ気が済まないのか?
いや、ネタキャラとしての意義があるんだろうけど。
しかし、ボクだの我だの一人称が定まってないぞ。キャラ設定がブレブレだ。
それにしても、あんなふざけたネタキャラなのに、マジで波紋が攻撃手段として存在し、しかも時空波紋にまで発展するとは侮れない。
「さて、時空波紋を使えばこんな事も可能だ。何故ボクが1人でここに来たと思っている? 実はボク1人で1軍に匹敵する戦力を保持しているからさ!」
ジョージョーが空間を3度ほど叩く事により、3つの時空波紋が広がる。
そして時空波紋から3匹のモンスターが現れた。
九つの尾を持ち、災厄を撒き散らすと言われている神狐ナインテイル。
象の頭を持ち、四本の腕を携えた神象ガネーシャ。
尾を喰らう蛇として永劫を司る神蛇ウロボロス。
おいおいおいおい、まさか神獣を【支配者】スキルで支配しているか!?
1匹なら兎も角、3匹もの神獣を支配下に置くなんてありえないぞ。
『貴様ら……魔族の手先になったのか』
『言い訳はせぬ。油断があった事も認めよう。だが支配された以上は主の命を聞くまで』
フェンリルが忌々しげに3匹を睨みつけるが、反応は芳しくない。
ナインテイルは今にも暴れそうになり、ウロボロスはその場で激しく体をうねらせ会話は出来そうにない。
唯一会話が出来たガネーシャだったが、完全にジョージョーに支配されているので完全にジル達の敵だ。
『ま、さか……ガネーシャ達がここに居ると言う事は……』
「そう、そのとおぉぉぉぉぉり!! 彼らが守護していたゴーレム兵器はボクの支配下にある!!!」
再び空間を3度叩き、時空波紋を広げたその先から3体の人間と見間違うほどのゴーレムが現れた。




