017.コレクター系スキル
ジル:ほぼ説明回だよー
「ジルちゃんのスキル凄いよね。コレクター系のスキルって収納だけが便利だって聞いてたけどそんなことないよね」
そう言うのは護衛のリーダーであるアルファだ。
御者台から馬車の中に居るジルへと話しかける。
俺達は今、商人のおっちゃんの馬車に乗ってセクンドの町へ向かっていた。
アルファと商人のおっちゃんが御者台に居り、ジルを含む他の3人が商品と一緒に馬車の中に乗っている。
「うんー? そうなのー?」
「ああ、そうかジルちゃんはまだ7歳だし村の外の事は知らないか」
「つーか、7歳でこんだけ強ぇなんて可笑しくね?」
7歳である少女のジルの強さに疑惑の眼差しを向ける槍戦士のガンマ。
まぁ、ガンマの言わんとすることは分かるが、それも自分の常識だけで図ってないか?
「何処が可笑しいところがあるのよ。ジルちゃんは自分のスキルを使いこなしているのよ。あんたみたいにスキル任せに戦っているのとは大違いなの!」
「なんだと!?」
見た目が15歳くらいの中学生くらいにしか見えない女魔法使いのミューが、ジルを疑ったガンマに突っかかり、ガンマも煽り耐性が無いのかしっかりとミューの言葉に憤りを顕わにする。
ミューはすっかりジルの事を気に入り、後ろから覆いかぶさるように抱き寄せ撫でる頬を擦るなど妹のように可愛がっていた。
ジルもそれを嫌がる素振りを見せず素直に受け入れている。
ジルは村ではしっかり者のお姉ちゃん扱いだから、妹のような扱いのスキンシップに新鮮に感じているのかもな。
「よせ、止めろ。ミューの言うことは正しい。ガンマは自分のスキルに頼りすぎる傾向がある。もう少し基礎を鍛えろ」
「ぐ……オメガさんまで……」
ガタイの良い盾役のオメガに窘められてミューとガンマは言い争いを止める。
ガンマはオメガにまで叱責を受けた事にショックを受け、ジルを睨みつつ少し大人しくなった。
え? ジルを恨むのって筋違いじゃないの?
「まぁ、話を戻しますけど私の知るコレクター系のスキル持ちも似たようなものですね。【ボトルコレクター】のスキル持ちで収集した瓶や入れ物を亜空間に格納する事が出来て便利だと言ってましたよ」
商人のおっちゃんことラムダのおっちゃんも俺達の会話に参加してきた。
「俺の知っているコレクター系も同じような事を言ってましたよ。【ワインコレクター】で集めたワインを仕舞うのに大変助かっているって」
いやいやいや、ジルの【ストーンコレクター】を知っている身としては素直には信じられんぞ。
アルファの知っている【ワインコレクター】は恐らくコレクションされたワインを飲むことで一時的に身体能力が上がるとか魔法が使えるとか付与系能力が付くコレクターだろ。
ラムダのおっちゃんの【ボトルコレクター】はまず間違いなくジルのかめちゃんのような収納系能力が付いているに決まっている。
おそらくあまりの規格外の能力にジルのように一部能力を隠しているんだろうな。
「ワイン! いいねぇ! アルファ、その【ワインコレクター】の人、後で紹介してよ!」
「ミュー……酒好きなのは知っているが程々にしろよ。それにそいつは暫く前に旅に出たからセントルイズには居ないぞ」
「ええ~~、そんなぁ~~~」
「ははは、もしよかったらミューさんには後で私の知り合いのワイン商をご紹介しましょうか?」
「是非!」
食いつきが良いな。それ程酒好きか、ミュー。
見た目のイメージとはかけ離れているなぁ。
「ああ、見えてきましたよ。セクンドの町です」
ラムダのおっちゃんの視線の先には城壁に囲まれた町があった。
あれがセクンドの町か。
「おおーー」
ジルも初めて見る町の大きさに感嘆の声を上げていた。
ジル達はすんなりとセクンドの町に入る……とはいかなかった。
ラムダのおっちゃんやアルファたちは良かったのだが、ジルに身分証明書がなかったのがちょっと問題になった。
セクンドの町もかなりの大きさの町で、入出場には身分証の提示が必要になっていたのだ。
身分証――市民カードかギルドカードが無い場合は王都程ではないが銀貨3枚必要だった。
ジルの所持金は大銅貨11枚と銅貨4枚、とてもじゃないが足りない。
なのでラムダのおっちゃんが立て替えようとしたのだがジルが頑なに固辞し、問答の末、渋々ジルが納得してセクンドの町に入ることが出来た。
「冒険者ギルドで先ほどのオークの素材を売れば直ぐに返済は可能になりますよ」
オークの討伐は護衛であるアルファたちにあるのだが、ジルの助っ人も考慮して素材の換金にはジルにも配分してくれるとのことだ。
ラムダのおっちゃんはその換金されたお金で返金してくれればいいと。
ラムダのおっちゃんはまずはジルの用事を済ませてくれようと商業ギルドより先に冒険者ギルドへと向かってくれた。
冒険者ギルドは3階建ての大きめの建物となっており、剣と盾を交差させた看板が掛かっている。
冒険者ギルドの中にはラムダのおっちゃんとアルファが入り、残りのメンバーは馬車の護衛だ。
「あら? アルファさん、ラムダさんの専属護衛依頼を受けていたと思うんですが、何か不都合でも生じましたか? それともラムダさんも一緒と言う事は契約内容の変更ですか?」
受付に向かうと、アルファを見つけた受付嬢が疑問を投げかけて来た。
ほぅ、アルファはラムダのおっちゃんの専属護衛依頼を受けていたのか。
って、専属護衛依頼ってなんじゃらほい?
まぁ、その辺りの事はこれから聞けばいいか。
「ああ、いや違うよ。今日はこの子の冒険者登録をしに来たんだ」
「……は?」
アルファの言葉に受付嬢だけでなく周囲の冒険者も呆気に取られていた。




