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この石には意志がある!  作者: 一狼
第7章 勇者パーティー・激走編
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161.勇者パーティー始動

「どうやらユーユー達は完全にこの戦域から引いたみたいです」


「……マジ?」


「マジです」


 アルベルトが思わず聞き返したが、クローディアは冷静に返答する。


 魔王軍の最前線の砦奇襲から3日が経った。


 砦は完全に破壊したものの、また何やら策を用いてユーユーが攻撃を仕掛けるのではと警戒していたのだ。


 あの簡単に引いたのももしかしたら何かの策じゃないかと勘繰った訳だが、どうやらその心配はなさそうだ。


 クローディアには砦から引いた魔王軍の様子や行方を探ってもらってたんだが、うーん、優秀すぎて怖いわ。


 クローディア、恐ろしい子……!


「どうやらかなり動揺していたらしく、何かを確かめるために第4戦闘区域に向かったそうです」


 何かって……あの様子からどうみてもあれが原因だろうなぁ……


 クローディアの言葉に、あの戦闘現場に居た戦闘部隊の皆が一斉に爺さんを見る。


「……ほ? 何じゃ皆して熱いまなざしを送りおって。照れるの」


 当の爺さんは暢気に飯なんか食ってやがるが。


「御老人、本当に魔王軍とは何の関係も無いでござるよな?」


「心外じゃのぅ……。儂はれっきとした連合軍の味方じゃよ。そこの聖女ちゃんも証明してくれた【神託】だけじゃ足りないのか」


「疑って済まないと思うが、あんなユーユーの姿を見たのは初めてでござるからな」


「……うん、初めて」


 幾度となく最前線でユーユーと戦っていたヒビキとファイだ。


 それだけユーユーの動揺は尋常じゃなかったって事だろう。


「少なくとも儂はお主たちの味方じゃ。そこは信用してもらうしかないがの。だからと言って戦闘には参加はせんぞ? まぁ、気が向いたらこの前みたいに戦うかもしれんが。

 お、ブラスも1杯どうじゃ?」


 そう言いながら爺さんは手にした焼き鳥を口にしながら酒を飲み、その様子を見ていたブラストールに酒を勧めた。


「お、悪いな爺さん。催促したみたいで」


 作戦会議中だと言うのに悪びれなく飯を飲み食いしている爺さんも爺さんだが、それに誘われて手を出すブラストールもブラストールだな。


 この呑兵衛め。


 まぁ、作戦会議と言っても勇者パーティーとハルコ軍団長だけの身内だけの様な会議だから別に構わないんだが。


 因みに、タウラ団長とサジリス団長はハルコ軍団長に代わり、最前線の連合軍の再編指揮を執っている。


「それじゃー、この最前線は当分の間大丈夫なんだねー」


「そうみたいだな。我々としても戦線を再構築できる期間が設けられたのは有りがたい」


 小さな溜息を吐きながらハルコ軍団長が安堵した様子を見せた。


 ハルコ軍団長はこのまま最前線の指揮を執り、戦線を魔王軍の砦があった位置まで押し上げる事になる。


 魔王具の砦があった場所と、もう1つ最前線を維持しやすい場所に砦を築く予定なので、ユーユー達が引いたのは僥倖なので安堵するのも頷ける。


「それじゃあ、本格的に勇者パーティーが始動する訳だ……!」


 漸くと言った様子にアルベルトは拳を握りしめる。


 勇者パーティーの目的は魔王の討伐。


 その為には大軍を引きつれて魔王城に攻め込むわけではなく、少数精鋭――つまり勇者パーティーだけで乗り込むことになるのだ。


 魔王討伐の旅と言えば聞こえがいいが、要は魔王暗殺の旅なんだよなぁ。


 とは言え、アルベルトの言う通り魔王討伐の為のパーティーメンバーが揃い、これから魔王軍が支配する戦域を駆け抜けていくことになる。


 これから襲い掛かって来るであろう厳しい旅を思えば、気合を入れるのもまたありだろう。


「それで勇者殿たちはまずは何処へ向かうつもりだ?」


「そうですね……わたくし達が向かうルートは大きく分けて3つですね。このまま真っ直ぐ南下してレフトウイング大陸へ向かう第4戦闘区域最短ルート。静脈山脈の外側を通り魔王軍の襲撃が少ないと思われる第2戦闘区域ルート。神獣の森付近を通る遠回りの第3戦闘区域ルートになります」


 ハルコ軍団長の質問にクローディアは地図を広げて3つのルートを示してくる。


 まず1つ目は真っ直ぐ南下の最短ルート。


 ただ、待ち構えているであろう魔王軍との激しい戦闘が多くなるのが予想できる。


 おまけに第4戦闘区域まで引っ込んだユーユーや金ぴか魔族とかち合う可能性もある。


 まぁ、後顧の憂いを無くすために今度こそ叩き潰すチャンスでもあるが。


 2つ目は静脈山脈の外側――東回りルートだな。


 シルバー王太子の祖国、太陽王国サンフェルズの南にある静脈山脈、S級冒険者『暴風』モレッツァが乱入した原因でもある別名・ドラゴン山脈の外側の海に沿って通り抜ける事になる。


 遠回りになるが、利点としては魔王軍の襲撃が最も少ないところだな。


 ドラゴン山脈と海を挟んだ地域はドラゴンを恐れて比較的安全となっているからだ。


 尤も、代わりに低確率でドラゴンの襲撃があったりするが。


 それで3つ目のルートがジルが尤も希望しているルートでもある神獣の森の傍を抜ける西回りの第3戦闘区域ルート。


 そう、神獣の森にはフェンリルが住んでいる。


 フェンリルだけではなく、他にも神獣の名に相応しいモンスターが居ると言われており、それが神獣の森の由縁らしい。


 神獣の森はミラーワルド王国の南に位置し、迷宮大森林程ではないがその広さと神獣の存在で魔王軍の北上を防いでいる。


 とは言っても神獣の森はハーフハート大陸の西の海側に面している為、迂回すれば北上は可能だ。


 さて、ジルと俺達としては第3戦闘区域ルートを希望したいのだが、どうやってパーティーの皆を説得したらいいもんか……












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