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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2章 勇者・召喚編
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016.ギルドカード

きゅーちゃん:ギルドカードって不思議に思ったことないかい?

「ほうほう、ジルベールさんは王都に行きたいのですね」


「うんー、弟を迎えに行くのー」


 偶然助けた商人のおっちゃんは是非ともジルにお礼をしたいと言ってきたが、ジルは助けたのはたまたま通りかかっただけでお礼は特に要らないと固辞していた。


 それに今はお礼よりも直ぐにでも王都に向かいたいのがジルの正直な気持ちだろう。


 無論、商人のおっちゃんも助けてもらっておいてお礼の1つも無いとなれば商人の恥じと言い、どうにかお礼をしたいのでジルの目的などを聞いてきた。


「ふむ……失礼ですが、ジルベールさんは市民カードかギルドカードを持っていますかな?」


 おお、異世界定番の冒険者ギルドか?


 市民カードと言うのはあまり聞いた事が無いが、身分証明書みたいなもんか?


「市民カードー? ギルドカードー?」


「どうやらその様子なら持ってなさそうですね。王都に入るには身分証明書が必要になるのですよ。身分証――つまり市民カードか、ギルドカードが無ければ入出場には大銀貨1枚が必要になります」


「えー!? 私どっちも持ってないよー。お金もそんなに持ってないしー」


 そうなのだ。ジルの所持金は大銅貨11枚と銅貨4枚なのだ。


 つい忘れがちになるが、ジルはまだ7歳の子供だ。


 大金を持っている方が可笑しいのだ。


 因みに銅貨は1G(ゴールド)=100円、大銅貨は10G=1,000円、銀貨は100G=10,000円、大銀貨は1,000G=100,000円だ。


 と言うか、王都への入出場料10万円ってたけーな!


「そこで提案です。ジルベールさん、もし良かったらこれから私達が向かう予定の町に行って冒険者ギルドに登録してギルドカードを作りませんか?」


「うんー? どういうことー?」


「冒険者ギルドに加入するには3つの要件の内1つ以上を満たさなければならないんです」


 1つ、戸籍謄本の提示

 1つ、魔物討伐の実績

 1つ、保証人による推薦


 1つ目の戸籍謄本は教会がある町や村で生まれた者は必ず登記されているので、各教会で問い合わせをすれば直ぐに発行できるとの事。


 2つ目は冒険者となれば魔物の討伐はほぼ必須と言う事で、強さが無ければ冒険者にはなれない。


 なので強さを証明するのに魔物を討伐したと言う実績が必要になってくる。


 3つ目は第3者が身元を保証してくれると言う、いわゆる現代地球で言う連帯保証人みたいなものだろう。


 当然、推薦された者が悪事を働けば、保証人にも責任を取らされると言う訳だ。


 何故たかが冒険者ギルドに加入するのにこんな七面倒くさい事をしなければならないのかと言えば、ギルドカードが身分証明書になるからだ。


 ネット小説とかで簡単にギルドカードを発行しているが、よくよく考えればギルドカードが身分証になるのだったら普通は簡単に発行できないのだ。


 例えば悪人がその素性を隠してギルドカードを手に入れてしまえば街の出入りに提示する身分証の意味はまったくなさない。


 まぁ、作品によっては魔法で犯罪歴などを調べることもあるが、何処までの犯罪歴が対象になるのかなど考えればかなりいい加減な身分証明書と言う事になる。


 それも魔法だからと言ってしまえばそれまでだが。


 ともあれ、少なくともこの世界では冒険者ギルドのギルドカードを作るのに上記の3つのうち1つ以上を満たさなければならないらしい。


 と、よく見ればこの条件の3つも悪人を全て排除できるのかと言えばまったくそうとは言えない。


 特に2つ目の魔物討伐の実績。


 これは悪人でも実績を積めばギルドカードが発行できてしまう。


 3つ目も、悪徳権力者が保証人になって悪人を推薦すれば同様だ。


 まぁ、完全に悪人を排除するのは無理と言う事だな。


 商人のおっちゃんによると、冒険者ギルドもその辺りを考えているらしく、公開はしていないがある程度冒険者に悪人が居ないか調べる機構があるらしい。


「そこで私がジルベールさんの保証人になりましょう。それにオークと渡り合える実力があるのです。冒険者としての実力は十分ありますよ」


「そうそう、ジルちゃんなら直ぐにでもC級になれるだろうさ」


 商人のおっちゃんとリーダーが2つ目の魔物討伐の実績を証言してくれると言う。


 つまり保証人になってくれることがお礼と言う訳か。


「(きゅーちゃんー、どうしたらいいー?)」


『うん、ここは商人のおっちゃんの好意を受けておこう。戸籍謄本でもギルドカードが作れるだろうけど、ジルの年齢を考えれば保証人が居た方がすんなりギルドカードを発行してもらえるだろう。

 ジルにとっては急ぎたいのは分かるが、俺の知っている諺に急がば回れと言うのがある。ギルドカードを手に入れて王都に向かった方が近道になるはずだ』


 それにギルドカードがあればこの後色々便利なはずだ。


「(分かったー)」


 ジルが商人のおっちゃんに保証人になってもらう事を了承すると、商人のおっちゃんは満面の笑みを浮かべた。


「おお! これでジルベールさんにお礼が出来ますね! こう言っては何ですが、ジルベールさんは将来何か大きなことを為すのではないかと予感がするのですよ。これはその為の繋ぎと考えてもらっても構いません」


 ああ、なるほど。


 ジルに保証人になると言うお礼をするだけでなく、ジルがこの後冒険者として成績を上げていけばそれだけ保証人になった商人のおっちゃんにもメリットがある訳か。


 流石商人。魔物に襲われてもタダでは起きないと言う訳か。


 そんな訳で、ジルは商人のおっちゃん達が向かう予定の町――セクンドの町へ向かう事になった。










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