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この石には意志がある!  作者: 一狼
第6章 勇者パーティー・集結編
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147.勇者パーティー:侍&大魔道士5

 アルベルトは聖剣を手にユーユーに斬りかかる。


 ヒビキはそのサポートに回り、アルベルトの隙を塞いでくれていた。


 だが勇者と匹敵する覇道と言うだけあっても、1対2でありながらユーユーはまだ余裕があり、アルベルトとヒビキを押していた。


 おいおい、何だあの精練された動きは。


 バスターソードで防御と攻撃を巧みに使い分け、緩急の動きで2人を翻弄する。


 特に奇抜な動きや突出した能力は無いのだが、ユーユーは全てに於いて高レベルなのだ。


 それ故に、普通の動きすら必殺の攻撃になりうる。


 ユーユーとの戦闘経験が多いヒビキは辛うじて防いでいたが、アルベルトはその動きに翻弄されていた。


「《アクセル》!」


 ユーユーの動きについていけないアルベルトは聖剣の力を発動して動きを加速する。


「やはり、Youの手に渡っていましたか」


 力を発揮したことでユーユーはアルベルトが流聖剣アクセレーターを所持している事に気が付く。


「さて、聖剣を手にした勇者の力はどれ程のものか、見せて頂きましょう」


 加速したアルベルトを前にしてもユーユーは動揺せずに、冷静に対処する。


 むぅ、いかんな。


 アルベルトは《アクセル》で加速した動きを体捌きにしか使っていない。


 と言うより、加速した動きに翻弄されていて振り回されているな。


「やはりまだ使いこなせていませんか。ならば聖剣を十全に発揮する前に―――」


「させないでござるよ! 【燕返し】!」


 一気にケリを付けようとしたユーユーに、そうはさせまいとヒビキが【侍】の刀スキル【燕返し】で高速で斬撃を切り替えし二連撃を放つ。


「【ホーリーバインド】!」


「はぁっ!!」


 【燕返し】でユーユーの剣は弾かれて、パトリシアが【聖魔法】でユーユーの動きを封じる。


「【ダークチェイン】」


 その隙を突いてアルベルトが突っ込んでいくが、ユーユーは【闇魔法】の鎖で【ホーリーバインド】を引き千切り、直ぐに態勢を整えたユーユーの剣にあっさりと防がれた。


「っと、そう簡単にはいきませんか。意外と地味いい働きをしますね、ヒビキ。これまで前線を支え私と戦ってきただけはあります」


 一旦離れたユーユーは悠然と構え直し、つぶさに2人を観察する。


「くそっ、あれでも傷すらつけられないのか」


「アルベルト殿、焦るなでござるよ。奴は一筋縄じゃいかない傑物でござる。今は倒す事より拙者らで押さえておくことに集中するでござるよ」


「ああ、今回は連合軍の撤退が優先だからな」


「まぁ、こちらとしても勇者パーティーが最前線に来たことで作戦は意味をなさなくなりましたからこれ以上粘る意味がありませんけどね」


 そう言いながらチラリとこちらをみるユーユー。


 ブラストールが上手く残存兵を纏め上げ、戦線から徐々に兵が撤退していく。


 ジルはお気に入りの皆を存分に使い、俺とファイの広範囲魔法でユーユーが率いていたモンスターを屠っていく。


「だったら直ぐに引いてくれると助かるでござるが?」


「それは野暮ってものでしょう。作戦自体は失敗しましたが、勇者はここで仕留めておきますよ。これ以上厄介になる前にね」


「はっ、そう簡単にやられるかよ」


「その気概は認めますが、世の中にはどうにもならない事もあるんですよ」


 あ、ヤバい。


 ユーユーの威圧(プレッシャー)が増した。


 ギアを一段階上げたな。


『ジル、アルベルトがちとヤバい。ここはファイに任せて助っ人に向かうぞ』


「(分かったー)」


 残りの魔族とモンスターをファイに任せてアルベルトの下に行こうとしたが、広範囲魔法を抜けてきた4本腕の魔族とミラージュドラゴンがジルの前に立ち塞がる。


『ちっ、タイミングが悪い。こんな雑魚時間をかけている場合じゃないってのに』


「唸れ疾風、轟け雷光、【ブラストブレイヴドラゴン】!」


 風と雷を纏った龍の形をしたエネルギー体が、魔族とドラゴンを薙ぎ払う。


 ついでに周辺のモンスターも巻き込んで。


 ファイの放ったオリジナル魔法だ。


「……行って。ここは私が」


「ファイちゃん、ありがとー」


 ファイも向こうの様子を察知して援護してくれたみたいだ。


 ジルがふーちゃんを呼んでアルベルトの方へと向かうと、まだ耐え抜いたミラージュドラゴンがジルを追いかけようとする。


「……行かせない。吹けよ氷雪、燃えよ灼熱、【クリティカルブレイヴドラゴン】!」


 【ブラストブレイヴドラゴン】が東洋の蛇の様な龍なら、【クリティカルブレイヴドラゴン】は西洋のトカゲの様な竜だ。


 氷と炎を纏ったドラゴンのエネルギー体がミラージュドラゴンにぶつかり弾き飛ばす。


 そしてそのまま追いかけ噛み付き上空へと持ち上げて、モンスターの密集している地帯に落下し、地面へと叩き付けてドラゴンエネルギー体も爆発して氷と炎を周囲に撒き散らす。


 おー、これで大分モンスターも倒せたな。


 連合軍もほぼ撤退出来たから、後はユーユーを何とかすればこっちの目的は達成だ。


 ジルはふーちゃんで一気にユーユーに接近し、アルベルトとヒビキの攻撃の隙を抜けてぼーちゃんによる一撃を与える。


「っと、今の一撃はかなり効きましたね」


 それでもジルの一撃を防いだユーユー。


 ただ、さっきのぼーちゃんによる攻撃は衝撃付きなので、表面上は何ともなくとも、内部にはかなりダメージを与えたはずだ。


 だが、ユーユーはそれすらも耐えた訳だが。


「結構、力を入れたんだけどねー。痛くないのー?」


「いえいえ、痛いですよ。これでもやせ我慢をしているんですよ」


 突然参戦したジルにも冷静に対処するユーユー。


 うーむ、ちょっとは動揺してくれれば隙を突きやすいんだが、流石覇道と言ったところか。


「粗方連合軍は引いたから、そろそろ撤退するよー。私が殿を務めるから3人ともファイと一緒に撤退してー」


「ああ、了解。あいつに敵わなかったのは悔しいが、リベンジは後に取っておくさ」


「了解でござる」


「分かりました。ジルベール様もお気をつけて」


 ユーユーを気にしつつも3人はファイと合流してモンスターを蹴散らしながら連合軍の後を追う。


「逃がすと思いますか? 勇者はここで仕留めさせていただくと言ったはずです。

 ――【ダークファング】!」


 撤退しようとするアルベルト達を逃さまいと【闇魔法】の【シャドウファング】――影から伸びた影の咢が襲い掛かろうとするが、ジルが立ち塞がりえんちゃんを掲げ、はーちゃんを振り抜く。


『我の防御を抜く事だ、アルベルトを追いたければ』


『おらおらおら! お嬢相手に3人を気にする暇があるかよ!』


 【シャドウファング】を跳ね返し、同時にはーちゃんの飛斬でこの戦いで初めてユーユーが傷を負う。


「――っ、まさか私に傷を負わせるとは。そうですか、Youがルールーの言っていた『勇者の他に気を付ける人物』ですか」


 そう言って、ユーユーは傷を負っているにも拘らずニヤリと笑う。


 ギアをまた一段階上げたのか、威圧(プレッシャー)が更に増す。


 どうやらユーユーはジルをアルベルトよりも強敵と見なしたみたいだ。


 後で油断を誘う意味でも出来れば今は目を付けられたくなかったんだがな。仕方ないか。












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― 新着の感想 ―
[一言] 殿を務めるジル対ギアを更に上げたユーユー、ジルの殿がジル重症のフラグにならなければよいが。 超竜&激龍(ニヤリ)
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