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この石には意志がある!  作者: 一狼
第6章 勇者パーティー・集結編
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142.聖剣

「クローディアから話は聞いていたが、本当に大人の姿なんだな。見違えたぞ、ジル殿」


「うゎぁ~、あの小っちゃかったジルちゃんが、ボインバインの美人になってる~。うう……悔しいけど負けた」


 連合軍の指令室に案内され総司令官と挨拶をしていたが、何故かそこには迷宮大森林を共に走破した太陽王国サンフェルズ第4王子のシルバーと、同じく太陽王国の影の盗賊ギルド――通称影ギルド所属のシロップだった。


「シルバー、久しぶりだねー。何でここに居るのー? シロップもー」


 ジルがシルバー王子の名前を呼ぶと、シルバー王子の傍にいた護衛と思わしき男が怒りを顕わにする。


「貴様! 一介の冒険者風情が王太子殿下を呼び捨てだと! 不敬罪で叩き斬ってやる!」


「よい、彼女は余の恩人だ。余の名を呼ぶことを許している。それに彼女は世界で数人しか居ないと言われているS級冒険者だぞ。おまけに勇者殿の姉でもある。そなたはそでも斬ると申すのか?」


 咄嗟に腰の剣に手を掛けた護衛を、シルバー王子が制す。


「し、しかし……幾らなんでも殿下を呼び捨てにされると、周囲に殿下が軽く見られます」


「余がよいと申しておるのだ。そなたはその余に逆らうと言うのか?」


「も、申し訳ございません」


 尚も食い下がる護衛にシルバー王子は強めの言葉を掛け下がらせたが、納得していないのだろう。ジルを射殺すように睨めていた。


 まぁ、一国の王子、それも王太子を呼び捨てもすれば失礼にあたるのは当然だし、周囲にも軽く見られるからな。


 護衛の反応は当然と言えよう。


 尤も当のジルはそんな護衛の睨みは全然気にしていないけどな。


「うむ、それで何故ここに居るかと言えば、太陽王国も連合軍加盟国故に、余も太陽王国の代表として本部に参加しておるのだよ」


「王太子自らって言うのはあまり聞かないけどね~」


「尤も、本来の目的はジル殿を捜す事だったのだが……ふっ、余の予想を超えて、ジル殿は自ら舞い戻ってきた。流石だな」


 あー、確かシルバー王子はジルが迷宮大森林で時空波紋に呑まれて行方不明になったのを自分の所為だと責任を感じ、聖王国へ亡命する予定を変更して、太陽王国に戻り上の兄を退けて王太子になったって話しだったな。


 シロップも同じくジルを見つけるためにクローディアと共に影ギルドを辞めて、それぞれシルバー王子付きの王宮魔導師と諜報員となったんだっけ。


「私なんかの為に色々ありがとー。でもそっかー、シルバーも一緒に魔王軍と戦ってくれるんだねー」


「戦うと言っても主にここで作戦を立てたり指示を出したりと幹部としての戦いだがな」


「それでも知り合いがトップに居るのは安心するよー」


『そうですね。トップが無能だと理不尽な命令を出されたりと、従う気には慣れませんから』


『だね。この王子様なら信用できるし、上を任せるのに安心だよ』


『いざとなったらシルバー自ら戦場に躍り出るのもありじゃね? シルバーの【ファンタスティックアーティスト】は結構強力だぜ』


 ぼーちゃん、めーちゃん、はーちゃんと武闘派組も、シルバーが幹部に居るのは安心みたいだ。


「うむ、旧友との積もる話もあるだろうが、今はこちらの方に集中してもらおうか」


 シルバーとシロップとの再会を喜び合っていたが、総司令官殿は一区切りがついたのを見計らって、勇者パーティーのこれからの事を切り出した。


 まずは最初に出されたお題が、連合軍第5軍が極秘任務で運んでいた例の箱についてだ。


「ふむ、まさか勇者殿が魔王軍がこれを奪取するのを阻止して自ら運んできてくれるとはな」


「それで、これは何なんだ? そこの参謀に聞いても総司令官に会ってからのお楽しみとしか聞いていないが」


 アルベルトは箱に何が入っているか楽しみなのか、見た感じからもわくわくしているのが分かる。


 こう言うところはまだ8歳の子供に見えるな。


「ああ、もしかしてこれは例のあれなのですね」


 ここに至ってようやく何かに気が付いたパトリシアが納得していた。


「パトリシア、これが何なのか分かるのか?」


「ええ、Alice神教教会にも報告は来ていましたから。尤も、私は“勇”の枢機卿に成りたてでしたので、旅に出る寸前に知ったのですが」


「勇者殿、開けて見たまえ。これはお主の物なのだよ」


 アルベルトは総司令官殿に促され、おっかなびっくり箱をそっと開ける。


 改めて見ると、箱は縦1m20cm、横50cmの長方形で厚さは30cm程だ。


 中に入っていたのは敷き詰められたクッションに載せられた一振りの長剣だった。


 刀身を治めている鞘は真っ白で、縁に彩られていた金色の装飾が普通の剣じゃない事を示していた。



「3代目勇者が使っていた最強とも呼べる聖剣、流聖剣・アクセレーターだ」


 アルベルトはそっと聖剣を手に取り、鞘から抜き放つ。


 刀身から鍔や柄まで一体となっており、銀色の刀身の中央には金色の文字が掘られていた。


 柄は、握りが滑らない様にと吸引性を持つ純白の魔導シルクを巻かれて、銀と白のコントラストが神々しさを放っていた。


「ほぅ、抜けたか。この聖剣は最強とも呼べると言ったが、実際に抜いて戦った事があるのは前の持ち主の3代目勇者と、その後継の4代目勇者のみなのだ。それ以外の歴代勇者は抜く事すら出来なかったと言う」


「魔王軍と戦っている前線にある国のあるAlice神教教会で、その聖剣が見つかったのです。その教会で調べてみたところ、あまりにも強力過ぎるが故に、4代目勇者がその教会に封印したと記録が見つかりました。扱える者が現れるまでと」


 総司令官殿とパトリシアの聖剣の説明になるほどなと思う。


 今まで使い手が現れなかった故に封印が解除されてなかった聖剣が、今代の勇者――アルベルトが現れた事で封印が解け、しかも偶然にも送迎中でアルベルトの手に渡ったのだ。


 確かに選ばれたと感じてしまうだろう。


「どう、アル君ー?」


「確かに力は感じるけど、最強って呼ぶ程か? 付属能力のアクセルってのが使えるようになったけど、それってスキルの【アクセル】と同じだよな?」


 ふむ? どれどれ、【鑑定】で見て見ようじゃないか。




 名称:アクセレーター

 属性:聖

 能力:アクセル、■■、■■■■

 状態:封印状態【第一解放】

 備考:所有条件【勇者】




 なるほど、アルベルトがそれ程強くないって言ってたのは、まだ封印されたままって事か。


 但し封印の第一段階が解放されていると。


 その事をジルを通して皆に伝える。


「ふむ、封印は第一段階が解放されている状態か。第一段階と言う事は第二段階、もしくは第三段階もあると言う事だな」


「おそらくは。ですが、その第二段階の封印の解除方法が分かりません。作戦参謀といたしましては不確定である聖剣の力を戦力として見る事は出来ませんね」


 総司令官殿は直ぐに封印の第二第三状態に思い至ったが、作戦参謀であるジャンは素直には戦力に加算できないと言う。


「ふっ、そんなのは勇者殿が成長すれば自ずと封印は解かれる。何せ、この聖剣は今代の勇者殿を選んだのだ。だろう? 勇者殿」


「ああ、任せな。必ず封印を解いて最強の聖剣の姿を拝んでやるぜ。そして魔王をこの聖剣で倒してやる」


「頼もしいではないか。それに勇者殿は1人ではない。頼もしい仲間もいる。そう難しく考えるな、ジャン作戦参謀」












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