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この石には意志がある!  作者: 一狼
第6章 勇者パーティー・集結編
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140.ルールの屈辱

 魔法使いの天敵であるえんちゃん。


 えんちゃんの能力は反射(魔法)、吸収(魔法)、無効(魔法)と、魔法に対して無敵を誇っていると言っても過言ではない。


 だが、そんなえんちゃんにも魔法に対して弱点が存在する。


 えんちゃんは盾であるが故に、真正面からの魔法にしか効果が発揮しないのだ。


 能力の拡大で、えんちゃんを掲げた正面の上下左右3mくらいは反射吸収無効と魔法に対して能力を発揮するが、それ以外の後ろや上からと言った広範囲の魔法に対して防ぐことは出来ない。


 さっきのルールーが放った【フラッシュエクスプロージョン】は、ジルの真正面を起点にして放たれた魔法だったのでえんちゃんで防ぐことが出来た。


 だが、極太レーザーの【ギガフレア】は、えんちゃんだけだと後ろの軍の兵士たちにも被害が及ぶのでかめちゃんで空間凍結をして後ろに【ギガフレア】が行くのを防いだのだ。


「うそ、でしょ……」


 唖然とするルールーに追撃するように、ジルはかめちゃんの第3の能力を放つ。


「かめちゃんー、お願いー」


『気乗りはしませんが、ジルベールさんのお願いですので』


 パッと見た目は風系やエネルギー系での斬撃に見える。


 ルールーは目の前に迫った斬撃にハッと気を取り戻し、直ぐに魔法で盾を出して防ごうとする。


「【フレアシールド】!」


 一見、炎の盾に見えるが、実質中身は魔力による【シールド】と大差ない。


 触れたら燃やされる【シールド】だと思えばいい。


 だけど、その程度の盾で防げるほど、かめちゃんの第3の能力は甘くは無い。


 ザシュッ


 あっさりと【フレアシールド】を斬り裂いて、その後ろのルールーの右腕も斬りおとす。


「あぐっ!? な、んで……!?」


 だって、それ空間断裂だもん。


 空間そのものを斬り裂いてしまう、殆んど防御が出来ない攻撃だ。


 唯一の対処法として、空間系魔法による干渉だろう。


 空間収納に空間凍結、果ては空間断裂と攻守補助と優秀すぎるチート能力だよなぁ、かめちゃんの能力は。


「【エクストラヒール】」


 斬りおとされた右腕を、ユニコーンオーガが直ぐに【治癒魔法】で治す。


『うーん、あのユニコーンオーガは邪魔だな。セオリー通り、回復役から倒していこう』


「(うんー、分かったー)」


「なんなのよ、貴女……。このあたしをここまでコケにするなんて、幾ら勇者の従者と言えどあり得ないわよ……!」


 ユニコーンオーガを倒そうと、近づいてくるジルに慄いて思わず後ろに下がるルールー。


「お嬢!」


 流石にルールーの腕を斬られたことに押されていると感じたエンドが、援護に駆けつける。


 お? エンドがこっちに来たと言う事は、アルベルトの方は余裕が出来たな。


 押され気味だったアルベルトは、エンドが居なくなったことでアイスファイアベアと“ブラッディヘルム”と押し返していく。


「これ以上お嬢を傷つけさせねぇ!」


 エンドが大剣を振りかぶりジルに振り下ろす。


 後ろではユニコーンオーガが回復を、ルールーが遠距離からの攻撃魔法をと、バランスのとれた布陣となる。


「えいー、やー、とー」


 エンドの大剣による攻撃を、ジルはぼーちゃんでいなしながら捌いていく。


 幾らジルでも流石に真正面から大剣の攻撃を受け止める事は出来ない。


 だから、力の方向をずらすことで攻撃を逸らすのだ。


 その間にも、ルールーは【ファイヤーアロー】や【ブラストボム】などと言った手数で押す【火魔法】を放つが、それは俺が【水魔法】や【氷魔法】で逐一相殺している。


「何なんだ、こいつ!?」


 自慢の攻撃が一切通じないジルに恐れを抱くエンド。


 そりゃあ、エンドの攻撃をいなしながらルールーの魔法も打消し、おまけにブラストールやアルベルトに援護までしていれば普通じゃないと思うよな。


「エンド下がって! これでも食らいなさい! 【ダイヤモンドミスト】!!」


 ルールーが放ったのは周囲の水分を氷結化して対象物を凍らせ砕く魔法だ。


 空気中の水分が多ければ多いほど発動速度や効果が高くなる。


 ああ、なるほど。


 さっきから無駄に【ファイヤーアロー】や【ブラストボム】等の手数で攻めて来たと思ったら、それを水系や氷系で迎撃させることで周囲に水蒸気を起こさせるのが目的だったんだな。


「【ロックキャノン】!!」


 そしてすかさず【ダイヤモンドミスト】でジルを砕く前に、念入りに【ロックキャノン】で8mもある大岩の弾丸を放ち止めを刺そうとする。


「あははっ! 紅蓮の二つ名で火炎系の魔法しか使えないと思った? 残念でしたわね。あたしスキルは【大魔導師】よ。全ての魔法に長けた魔族最強の大魔導師よ!」


 うん、知ってた。


 最初に【鑑定】でルールーが全属性の魔法を使える【大魔導師】のスキルを持ってるって見たからな。


 だから、【ダイヤモンドミスト】にも、【ロックキャノン】にも直ぐに対応している。


「【ヒートエンド】」


 ルールーが【ダイヤモンドミスト】を放った瞬間に、俺は【ヒートエンド】でジルの体を覆う様に周囲の温度を上げ温める魔法を放ち、凍るのを防ぐ。


 そして【ロックキャノン】は――


「はーちゃんー」


『おう! 俺様に掛かればこの程度の岩なんか真っ二つだぜ』


 第2の能力、気刃で伸ばした刃で向かってくる【ロックキャノン】を宣言通り真っ二つにする。


「―――っ!!」


 まさか、紅蓮の名から火炎系を意識させ、意表を突いた別属性の攻撃をも凌がれてルールーは思わず息を飲んでいた。


「て、撤退するわよ! デッド、エンド、援護しなさい!」


 ジルと言う理不尽(チート)を目の当たりにしたルールーは直ぐに撤退を始めた。


 おお、随分と潔いな。


 だが間違っちゃいない。


 ここで意地になって戦闘を続けても被害は拡大するだけだからな。


 と言うか、ルールーを褒めてはいるが、黙ってここで逃がす訳ないだろ。


 偶然出会ったとは言え、ここで四天王の一角を潰しておくのは後々連合軍の有利になるからな。


 ルールーの撤退の指示を受けて、デッドは更にアンデッドを召喚師ながらスケルトンジェネラルとリッチをブラストールとパトリシアに捨て駒のようにぶつける。


 エンドもアイスファイアベアと“ブラッディヘルム”を呼び戻して防御を固めさせながら撤退のルートを確保する。


 ルールーも直ぐに後方へ下がり踵を返して逃げようとするが、その退路をふーちゃんに乗ったジルがあっさりと塞いでいた。


「残念ー。逃がさないよー」


「くっ……! このあたしが無様に逃げるなんて真似をさせた事を必ず後悔させて上げるわ……!!」


 ほぅ? 退路を防がれてもまだ逃げられる気でいるのか。


「クケケ、【スケルトンカーニバル】!」


 デッドの【召喚魔法】により大量の魔法陣が展開し、無数のスケルトンが現れる。


 とは言え、強さは大したことの無い一般の兵士でも倒せる雑魚のスケルトンだ。


 使い捨てのスケルトンで退路を切り拓くつもりか?


「【テレポート】!」


『あっ!? やられた!』


 大量のスケルトンの物量で押し通るふりをして目くらましをし、その隙を突いて【テレポート】で逃げるとは。


 この場に残されたのは、大量のスケルトンとスケルトンジェネラル、リッチだけだ。


 ユニコーンオーガとアイスファイアベア、“ブラッディヘルム”は一緒に【テレポート】で連れて行かれたな。


 因みに、ボルカニックフロッグは軍の兵士により既に討伐済みだ。


「(きゅーちゃんにしは珍しく読み違えたねー)」


『おいおい、俺だって全てが見通せるわけじゃないんだぜ。間違うことだってあるさ』


 まぁ、そこそこ本気で追い詰めたジルから逃げおおせるだけ、流石は魔王四天王だと言う事だと言っておこう。


 上手くジル達から逃げおおせたルールーを称えながら、捨て駒にされたスケルトンたちを片付ける。












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