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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2章 勇者・召喚編
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014.道中

 聖王国セントルイズ。ジル達が住むファルト村の所属する国だ。


 そしてAlice神教の総本山である王都教会――アリスティア大神殿が居を構える国でもある。


聖王国と聞くと宗教が国を治めているように聞こえるが、アリスティア大神殿は世界にAlice神教の教えを広め統括するだけに止まり、国の政を担っているのは聖王国となっているらしい。


 と、建前上はアリスティア大神殿が一歩引いて、聖王国がトップとして民を導いているように聞こえるが、実際はアリスティア大神殿の影響は大きいだろう。


 なにせ聖王国に止まらず、ありとあらゆる国――つまり、この世界中にAlice神教があるのだ。


 十数国を纏めるアリスティア大神殿と、たかが一国の聖王国では比べるまでも無い。


 とまぁ、Alice神教の総本山がある聖王国の王都へアルベルトを取り返すべくジルはファルト村を飛び出した訳だが……


『何の準備も無しに飛びだしたが、いいのか?』


「準備なら最初から出来てるよー。かめちゃんの中にいざと言う時の旅セットが入っているのー」


 いざと言う時って何だよ!


 7歳の子供が考える事じゃないだろうに……


 ジルに関しては今更と言えば今更なのか。


 因みに、移動にはふーちゃんに乗っての移動となる。


 ファルト村から王都までは徒歩で1ヶ月以上、馬車で10日程らしい。


 だが、ふーちゃんの移動速度なら馬車の3倍もあるので約3日程か……?


 ……こうしてみると、ふーちゃんの移動速度もかなりチートだな。


「ここまで来たらおとーさんもおかーさんも連れ戻しに来れないよねー」


『そりゃあ、これだけ距離が離れていればな……と言うか、今更ながらちょっと強引すぎやしなかったか?』


「だめだめー。ああなったらおとーさん、私を家から出さないよー。まぁ、おとーさんが悪いんじゃなく、教会の力が凄いんだけどねー」


 そう言いながらジルは石空間からかめちゃんを取出し、かめちゃんの中から旅セットを取り出す。


 ファルト村からは普段着のままで飛びだしたので、ここらで一度ちゃんとした旅支度をすることにしたのだ。


『教会の力には逆らえない、か……こりゃあ王都教会に着いても一筋縄じゃいかなそうだな』


「そんなのは最初から分かっている事だよー。でも何とかするのー。だって私はアル君のおねーちゃんだもんー」


 お姉ちゃん、か。


 確かに、今頃アルベルトは家族から強引に引き離されて泣きじゃくっているだろうな。


 例え教会の力が凄かろうが、家族の絆はそれよりも強いと信じたい。


 そして何よりもこのジルが動いているんだ。


 絶対何かが起きるに決まっている。


 まだ1ヶ月と経たない短い付き合いだが、その短い付き合いの中でジルの色んな意味での規格外な凄さを身を持って体験しているんだ。


 絶対にアルベルトを助け出してやれるさ。


「うんー、準備完了ー」


 ジルは普段着のワンピース姿から、動きやすいシャツにキュロット、頑丈な動きやすい靴へと着替え終わる。


 後はフード付きのマントを羽織り、旅支度は完了だ。


 本来ならこの他にも水や食料も用意するんだが、当然かめちゃんの中に準備されている。


 うーん、かめちゃんのアイテムボックス能力は旅商人とか喉から手が出る程ほしい能力だろうなぁ……


 出来る限りばれない様にしないと、王都までの道のりは勿論の事、今後のジルの生活にも影響が出かねないからな。


 俺はかめちゃんの事は出来る限り隠すようにジルに指示をし、俺達は王都へと向かう。


「ふーちゃんー、Goー!」


 ジルはふーちゃんに乗って移動を開始する。


 俺は【マップ】と【気配探知】のスキルを使いジルの行く手を阻むものは無いか、又は馬車や旅人が居ないかをチェックする。


 ふーちゃんの移動速度はかなり早い。


 少なくとも時速100kmは出てるんじゃないだろうか


 少なくともこのファンタジー世界で出していい速度じゃないと思う。


 それ故にすれ違い時の事故や、追い越しでの相手への驚きへの衝撃を躱す必要もあるからだ。


 ジルの移動速度を知れば当然すり寄ってくる者も居るだろう。


 まぁ、ふーちゃんの移動速度から接触する事は不可能だろうが、後々噂とか目撃情報で正体を判断される可能性もある。


 そう言った者の目からも逃れる為、【マップ】と【気配探知】で事前にチェックをし、馬車や旅人が居た場合は街道から外れて移動をするのだ。


 ……あれ? かめちゃんだけじゃなく、ふーちゃんもヤバい…?


 ま・まぁ、ともあれ、今日1日だけでもかなりの移動距離を稼いだ。


『ジル、もう日も落ちて大分暗くなったから今日はここまでだ。野営の準備に掛かろう』


「うんー、分かったー」


 街道を何度も行き来していれば馬車や旅人がそれなりに休憩地点や野宿する為の宿泊地点と言うのは決まってくる。


 出来る事ならその宿泊地点を使用したいのだが、ジルの移動速度がハンパない所為でその宿泊地点と噛み合う事が無いのだ。


 なので、街道から少し離れた場所に魔法を使用して簡易宿泊地点を作る。


 後はかめちゃんの中から簡易テントやら毛布を取り出せばここで野宿をすることが可能だ。


「ふふふー、ちょっとお外でのお泊りは楽しみー」


 ジルはかめちゃんの中から薪を取出し(と言うか、何で薪まで入っている!)、魔法で火を着け鍋を温めて食事を摂る。


『見張りは任せておけ』


「うんー、お願いねー」


 食事を摂った後、軽く俺と雑談をし、ジルは就寝する。


 普通なら見張りなどが必要なのだが、ジルにはそんなものは必要ない。


 何故なら眠る必要のない石――俺が居るからな!


 しかも【気配探知】や【危険察知】などのスキル仕様だ!


 夜襲などの心配は不要ってわけだ。


 こうして王都への旅は順調に1日目、2日目と行程が進んでいた。


 俺としては無理に3日で王都に向かおうとはせずに、途中でどこかの村や町などにより、物資の補給をしたかったのだが、ジルは寄り道はせずに真っ直ぐに王都へ向かう事にした。


 表情には出さないが、どうやらアルベルトの事が余程心配らしい。


 この3日と言う行程すらももどかしそうにしていたのが僅かに伺えた。


 そんな時間が惜しい中で、3日目――もう少しで王都に着くと言うところで俺の【マップ】と【気配探知】に今までとは違う反応があった。










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