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この石には意志がある!  作者: 一狼
第6章 勇者パーティー・集結編
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130.勇者パーティー:御者4

「さぁ! 勝負と行こうか、ディーノ!」


 次の日、ゼノスは馬車2台を引きつれてディーノの前に現れた。


 ただ、1人ではなく体格のがっしりした男と一緒にだが。


「デーブ、久しぶりだな。お前も大変だな、ゼノスに付き合わされて」


「ディーノ、お久しぶりです。まぁ、何時もの事ですよ。慣れました」


 どうやらディーノとデーブと呼ばれた男は顔見知りらしい。


「知り合いか?」


「ああ、俺と同じトキライナ王国のライダーズギルドに所属している同期だよ」


 アルベルトの問いに答えるディーノ。


 トキライナ王国はライダーズギルドの本部がある国だ。


 ライダーズギルドの本部があることに伴い様々なレース場が存在し、尤も競騎獣(Dレース)が盛んな国でもある。


「って、おい! 俺を無視するな!」


「別に無視はしてないよ。で、何でデーブも一緒なんだ?」


「それは互いの監視の為だよ。勝負の途中で割れた甕を修復しない様に不正防止のためだな」


「なんだよ、そんなに俺の事が信じられないのか?」


 あー、これはディーノの事が信じられないと言うよりは、自分が不正をしてないと証明する為の布石だな。


「ふん。ああ、信じられないね。のほほんと構えながらトップを掻っ攫う男だ。用心に越した事はないよ。それよりも、お前も誰か俺を監視する奴を選べよ」


「うーん、そうだなぁ……じゃあ、ジルにお願いしようかな」


「えー? 私ー? 別に構わないけどー」


 ありゃ? 俺としてはのんびりディーノが勝つ様を見ようかと思っていたんだが、どうやら勝負レースに巻き込まれたらしい。


「ふん、この女が俺の監視か。言っておくが、色仕掛けは通じないからな!」


「しないよー、色仕掛けなんてー」


『はっ! 誰がてめぇみてぇな生意気なガキにお嬢が色仕掛けなんかするかよ!』


『そもそも姐さんが色仕掛けする程あんたは男気があるって言うのかい?』


『HaHaHa! conceitもここまで来るとFunnyだNe!』


 おうおう、非難囂々だな。


 だが、皆の気持ちもよーく分かる。


 確かに今のジルはナイスバディの良い女だけど、誰がてめぇなんかに目を掛けるか!


「さぁ、ディーノ。どちらの馬車を使うか選べ」


「俺が選んでいいのか?」


「後で文句を言われたくないからな」


 随分と公平にこだわるなぁ。


 こういう場合って、公平にしようと見せかけておいて、実は自分が有利になるように小細工をする為のカモフラージュだったりするんだよな。


 ディーノはあまり調べもせずに、馬車と馬を選ぶ。


 それぞれの馬車の中には用意された甕が10個積まれていた。


 甕の中は水だったり、砂糖や塩と言った粉物だったり、果物や野菜だったりと重さのあるものが入っている。


 状況は場合によって割れやすい甕が出てくるように中身が調整されているって事か。


「よし、それじゃあ用意は良いな」


 ゼノスは馬車に乗り込み、御者台に付いて出発の準備をする。


 ディーノも自分で選んだ馬車に乗り、馬に優しく話しかけながら準備を完了する。


 ジルはゼノスの馬車に、デーブはディーノの馬車にそれぞれ監視をする為に乗り込む。


「ああ、何時でもいいぜ」


「ふん、最初に言っておく。俺はかーなーり早いぞ!」


「ああ、知ってる。それでも俺の方が早いよ。何せ俺は最初からクライマックスだからな」


 互いに馬車を並べ、スタートを今か今かと待つ2人は互いに挑発を仕掛けていた。


「はい、それでは互いに準備が出来ているみたいなので、Alice神教教会・“勇”の枢機卿並びに聖女の名において、勇者パーティーの御者の座を掛けたレースを開催いたします。

 Ready……Go!」


 パシィッ! パシィッ!


 パトリシアの合図の下、ディーノとゼノスは手綱を響かせ馬を走らせる。


 急な発進にも関わらす、馬車に積んだ甕はガタガタ音を鳴らすが、流石にこれくらいでは壊れる様な事は無い。


 最初は互いに肩を並べながら並走しているが、次第に差が付き始めて来た。


 意外にも、ゼノスの方が後れを取っていた。


 確かゼノスのスキルは【移動速度上昇】と言う、自身だけでなく馬車などと言った乗り物にも効果があるスキルだ。


 そのスキルを使えばディーノにも引けを取らないどころか、先を進むことが可能なはず。


 これは最初から何かを仕掛けるつもりだな、ゼノスは。


 暫く馬車を街道沿いに走らせ、カーブでディーノの馬車が見えなくなると、ゼノスは街道脇に馬車を止めておもむろに甕を降ろし始めた。


「何をやっているのー?」


「見ての通り、甕を降ろしているんだよ」


「何でー?」


「何でって勝つ為さ」


 10個全部甕を降ろしたゼノスは、腰に下げたポーチから何やら敷物みたいなものを取り出した。


 ポーチはマジックバックか。


 明らかに入っていた物が大きすぎだ。


 敷物はマットみたいで、若干厚めだがそこそこ柔らかそうだった。


 ゼノスはそれを馬車の中に敷き、降ろした甕をマットの上に戻し始めた。


「これは何ー?」


「衝撃を吸収する魔道具だよ。尤も完全吸収とはいかないから、それ以上の衝撃だと甕が割れてしまうがな」


 低反発マットみたいなものか?


 高いところから卵を落としても割れないとか言う、ああいうのを魔道具で再現した物ってところか。


「これって不正ー?」


「バカを言え。甕には細工をしていないだろ。そもそもドライバーが荷物を慎重に扱うのは当然の事だろ。これはドライバーのレースには当然の事だよ。おそらくディーノも今頃似たような事をしているだろうよ」


 まぁ、確かにゼノスの言う事は尤もだな。


 ただ、普通はこういうのって出発前に準備しておくもんじゃないのか?


 おそらくだが、何も準備していない様に見せかけて、ディーノの油断を誘ったってところか?


 ゼノスも言っているように、ディーノもそれなりに準備してるだろうと予想して、あまり期待はしていないっぽいけど。


 ただ単純に速度を競うレースだと思っていたが、ライダーのレースとは違い、ドライバーのレースはそれなりに工夫は必要なんだな。やっぱり。


 これからほぼ1日がかりのレースになるが、ゼノスがどう工夫するのか見ものだな。












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