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この石には意志がある!  作者: 一狼
第6章 勇者パーティー・集結編
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128.勇者パーティー:御者2

 ビシィッ!と擬音が見えるようにディーノに指を突き刺す男。


 その男は見た感じ、ディーノとそれほど変わらない17・8くらいの年齢に、鮮やかな緑色の髪には赤のメッシュが入っていた。


「え? 普通に嫌だけど?」


「おぃぃぃぃぃぃっ! 普通はこの流れで受けるだろっ!? 如何にもと言ったライバルが勝負を申し込んできたんだぞっ!!」


「いや、だから俺はライダーズギルドからの任務を受けて勇者パーティーに参加してるんだ。文句を言うならライダーズギルドの方だろ?」


「う……む……、そ、それは俺の意見は上には通らないと言うか、取り合ってくれないと言うか。だからディーノが口添えをしてくれるようにと」


「勝負を申し込んだと? 勇者パーティーの御者を賭けて? それ、俺が拒否すれば意味ないじゃん」


「そこは、俺を助けると思って!」


「なんでゼノスを助けなきゃいけないんだよ。俺に何のメリットも無いけど?」


 ディーノと緑髪の男はジル達を余所に、なおも言い合いをしていた。


 どうやら緑髪の男――ゼノスはディーノが勇者パーティーの御者なのが不満なのか、それとも自分がその座に収まりたいのか、その為にディーノに勝負しに来たみたいだな。


 勝負に勝ったら俺に御者の座を譲れ、と。


 ただ、ディーノも言ったようにディーノがここに来たのはライダーズギルドからの任務だ。


 決定権はライダーズギルドにある。


 そのライダーズギルドの決定権を覆す為にも、ゼノスは勝負に勝ってディーノから口添えをして欲しいみたいだ。


「……なぁ、大よその事情は2人のやり取りで分かったけど、結局こいつって何者なんだ? ディーノ」


 アルベルトの問いに、ディーノとゼノスはぴたりと口を閉ざし、互いを見合ってからディーノが質問に答える。


「あー……こいつはゼノス。自称ライダーズギルドNo1のライダーだ」


「自称じゃない! 名実ともにNo1だ!」


「とまぁ、見ての通りそこそこ実力はあるが口さがない訳で、ギルドの中では結構煙たがられて話す相手はほぼ俺くらいになってるんだ」


『確かにこいつちょっとウザいよな』


『あたし嫌ーい。こういう男って自分の事だけしか考えてないもん』


『僕も、ぁんまり、好きじゃ、なぃかも。自己主張が、激し、過ぎるし……』


『過信し過ぎているのかも、己の実力を。その為、不足している、周りへの気配りを』


 結構人の好き嫌いが無いふーちゃんが嫌いって、かなり自分勝手な感じか?


 はーちゃんもへきちゃんもえんちゃんも結構コメントが辛辣だ。


「それで、どうするのですか? ディーノさんは勝負を受けないと仰ってますが」


「ディーノ! さては俺に負けるのが怖いんだな!? 何せ俺はか~な~り~速いからな!!」


 パトリシアがどうするかとゼノスに問えば、何故か斜め上方向に解釈しディーノを挑発していた。


「だから、俺にメリットが無いって言ってんだろ? それとも何か? 俺がその勝負に勝ったら1,000,000Gでもくれるのか?」


「おま……っ! 幾らなんでも1,000,000Gは吹っかけ過ぎだろう……!」


 1,000,000Gって白金貨1枚で日本円に換算して1億円だったよな。


 そりゃあ、たかが勝負で1億円って、どんだけぼったくるつもり何だか。


 あ、そうか。そうやって大金を吹っかけて勝負を諦めさせるつもりか。


 ただ、この手の人物にそう言う手は逆効果だったりするんだよな。


「っく、いいだろう! 俺が負けたら1,000,000Gをやろう! その代わり、俺が勝ったら勇者パーティーの御者の座は俺に譲れ! ちゃんとライダーズギルドに口添えをしてな!」


「お前、ちゃんと払えるのか? 1,000,000Gだぞ、1,000,000G。白金貨1枚」


「払える! 払ってやるとも! 俺に勝ったらな!」


「はぁ~、そんな有りもしない担保でギャンブルをするなよ。分かった、勝負を受けよう。但し、ゼノスが負けたら1,000,000Gじゃなく別の仕事に付いてもらう。どうだ?」


「別の仕事、だと……!? なんだ、それはっ!?」


 ゼノスはディーノの提示した別の仕事と言う言葉に慄いていた。


 余程別の仕事に付くのが嫌のだろう。


 なるほどな。


 ゼノスがライダーに固執していればしている程、別の仕事には1,000,000Gの価値があるって訳か。


 それならゼノスがその仕事をすることによって、ディーノにもメリットがあると。


 最初に1,000,000Gを吹っかけて気を引いておいて、別の仕事を賭けに持って行くつもりだったのか。


 って、別にゼノスの性格なら最初から別の仕事を賭けにしても引っかかったような……?


「(と言うかー、私達は置いてけぼりだねー)」


『まぁな。そもそももう1人のメンバーの料理人が来るまで時間があることだし、いいんじゃね? 勝負もディーノの実力を見るのに丁度いいし』


「(そっかー。私達の旅は危険なものになるから、半端な実力じゃ足手まといだもんねー)」


 ジルだけではない。他のメンバーも最早既に観客と化してディーノとゼノスの観劇を眺めていた。


 あ、リュキはさり気なくお茶の用意をしているな。


「それは俺が勝負に勝ってから言うよ。で、どうする? 勝負するのかしないのか?」


「……っ! するに決まっているだろう! これに勝てば俺は勇者パーティーの一員だ! はぁーっはっはっ!!」


 もう勝った気で高笑いをするゼノス。


 上手い事乗せられたとも知らずに。


 こうして最後のメンバーが揃うまの一時で、ディーノとゼノスの勇者パーティーの御者の座を賭けて勝負(見世物)をすることになった。












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