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この石には意志がある!  作者: 一狼
第6章 勇者パーティー・集結編
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127.勇者パーティー:御者1

「それではクーガー様が用意した物資をそれぞれ3つに分けて保管したいと思います」


 そう言って、リュキはクーガーが購入してきた食料や水、野営の際に使用する薪や炭、着替えや寝具、ポーション等の医療品等を仕分けしてジルとアルベルトとディーノへと渡す。


 クーガーが仕入れて来た物資はクロキとは違い、ちゃんとしたものだった。


 食料は水は勿論の事、乾パン・乾麺・燻製肉だけではなく、保存の効く野菜や果物、チーズや塩漬けの牛肉豚肉鶏肉などバラエティーに富んでいる。


 おまけにワインやチョコレートなどと言った嗜好品も用意していた。


 野営の時に必要な薪の他にも毛布などと言った寝具も十分すぎる程予備を用意しており、ポーションも傷を癒す物から毒を打ち消すポイズンポーションから石化を解くストーンポーションなど万全な購入だった。


 ちょっと至らない点を上げるとすれば、この購入に掛かった費用がかなり掛かった事だろう。


 尤も、連合軍とAlice神教教会からは十分すぎる程資金を用意してもらっているから問題は無い。


 ちょっとコミュ症なところはあるが、クーガーは勇者パーティーの商人としては十分だろう。


「リュキさん、物資を3つに分けるのは何でだい? 1つに纏めておけば運びやすいんじゃないのか?」


「その場合は、その纏めて持っている1人に不都合が生じると一気に私達に手元に何も残らないことになります」


「あ~~~、そっか、そうだよな。纏めて持つとそう言った点で問題があるか」


 ディーノは纏めて持っていた方がいいのではとリュキに問うたが、その至極真っ当な返答に納得していた。


 ジルのかめちゃんに全部物資を入れていたとして、ジルが別行動を取ったら残されたアルベルト達は食事はおろかまともに休むことすら儘ならなくなるからな。


 なので、リュキは物資をジルのかめちゃん、アルベルトの【アイテムボックス】、馬車に備え付けられていたアイテムボックスの3つに分けて保存しようとしたのだ。


 ディーノがライダーズギルドから用意された馬車は、2頭引きの二連結の大型馬車であり、2台目の馬車にはアイテムボックスが標準装備されている頑丈な馬車だった。


 他にも、2台の馬車の中はそれぞれ【空間魔法】で湾曲されており、10人が乗っても十分なスペースを確保できるほどの広さだ。


 馬の方も、かなりの大型の馬車に加え、二連結の2台の馬車なので2頭引きでは馬力が不安ではないかと思ったが、馬車を引く馬はなんと八脚馬のスレイプニルだった。


 何でもライダーズギルドでは馬の他に、そう言ったモンスターも飼いならしており、スレイプニルの他にも走竜(ドラグルー)・ワイバーンと言った竜種や、水場などで船を引くケルピーなどと言ったモンスターまで確保しているそうだ。


「ディーノ様、もしよろしければ馬車にクーガー様が発明されたと言う冷蔵庫を設置してもよろしいでしょうか?」


「構わないけど、それって馬車のアイテムボックスで間に合うんじゃ……?」


「馬車に備え付けられたアイテムボックスはあくまで大容量であると言うだけで、時間停止までは付いていないのですよね? なので、食料の鮮度を維持したまま保存できる冷蔵庫はあると有難いのです。また、冷凍庫も調理する上で必要になるはずです」


「はー……なるほどね。調理と言った面で見れば冷蔵庫は旅の食事を豪華にするには必須アイテムって訳か。そうと決まれば、クーガー、冷蔵庫の設置を頼む」


「あ、ああ、任せろ」


 ディーノの要請を受けて、クーガーはえっちらほっちらと冷蔵庫を馬車名の中に設置し始める。


「それにしても……これほど使い勝手のいい魔道具が世間に広まっていないとは……勿体ない話です」


 クーガーの設置する冷蔵庫を見ては、リュキは不思議に首を傾げていた。


「あ……そ、それは、俺が魔道具ギルドに加入していないから、だろうな」


「あれー? これだけの物が作れるのにギルドに入ってないのー?」


「ああ、魔道具ギルドには不満しかないからな」


 クーガーの話によると、魔道具ギルドは魔具師が発明した魔道具は魔道具ギルドが一括して管理するのを推奨しているらしい。


 魔具師が魔道具を開発して、そのレシピを魔道具ギルドに登録する事により、魔道具ギルドがその魔道具を量産して販売するのだと言う。


 そしてその魔道具が売れた金額の1割が魔具師の登録料として支払われるとの事だ。


 俺はこの話を聞いて特許みたいなものかと思った。


 ただ、特許と違うのは……


「販売額の1割が魔具師に入るはいいよ。けど残りの9割は?」


 そう、クーガーの言う通り販売を魔道具ギルドが一手に担っていると言う事は、魔道具の利権を魔道具ギルドが独占していると言う事なのだ。


 あ、いや独占はしていないのか?


「一応、魔道具ギルドと提携している商会には魔道具を卸しているみたいだけど、その商会で売れた魔道具の3割が商会へ、1割が魔具師へ、残りの6割が魔道具ギルドへ行くんだよ」


 それでも半分以上の利益が魔道具ギルドに流れているのか。


 商会も3割と利益が少なく見えるが、元々仕入れがほぼタダであり、魔道具自体が高価なため3割でも売れば売るほど自分の利益になるのだ。


 そりゃあ商人としては是非とも魔道具ギルドと提携を結びたいだろうな。


「そんな訳で、魔道具ギルドは魔具師の利権を貪っている組織なのさ。俺はそれが嫌いで魔道具ギルドには加入していない」


 別に加入しなくても魔道具の販売は可能なのだが、個人での販売は限界があり、商会に卸そうとしても個人と魔道具ギルドなら、まともな商人なら魔道具ギルドの方を選ぶだろう。


 何せ魔道具ギルドの方が個人よりも生産力が高いに決まっているのだから。


 そんな訳で、魔道具を購入しようとしたら、魔道具ギルドと提携している商会を通して買うか、直接魔道具ギルドから購入するしかないと。


 もしくは、クーガーのように魔道具ギルドに加入してない魔具師から割高だが購入するしかない訳だ。


 とまぁ、クーガーは魔道具ギルドを批判的に言っている訳だが、まるっきりの悪者だとは言い難い。


 魔具師は販売・流通を魔道具ギルドに任せ、自分は魔道具の開発に専念できるメリットがあるから。


 それに、魔道具ギルドが存続している限り、登録料の利権だけで魔具師が何もしなくても勝手に資金が増えるのだ。


 研究者気質の魔具師にとっては夢のような話だろう。


 ま、クーガーのように合わない魔具師も居るみたいだが。


「さて、これで冷蔵庫は設置完了だ。何時でも中央へ向かう準備は出来たぜ」


 中央――大陸横断ルートの中央でもあり、ハーフハート大陸の本当の中央でもある場所に魔王軍と戦う連合軍の本部が存在する。


 そこに残りの勇者パーティーのメンバーが居る……らしい。


 まだ全員が揃ってないのだとか。これから集う予定なのだとか。


 まぁ、こっちももう1人、料理人が来ていないので似たようなものか。


 アルベルト達が残りの料理人が来るまでどうしようか相談している所に、男が1人現れた。


 ……うん、残念ながら待っていた料理人じゃなさそうだ。


「ディーノ! お前に勇者パーティーの御者の座を掛けて勝負を申し込む!」












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