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この石には意志がある!  作者: 一狼
第6章 勇者パーティー・集結編
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123.勇者パーティー:商人4

「さて、どうする?」


「どうしましょう……」


「どうすっかなぁ~」


「どうしよー」


 アルベルト達4人は王城の一室で頭を悩ませていた。


 勇者パーティーに潜り込もうとしていた、違法奴隷商人のクロキの企みを暴き、違法奴隷の証拠を掴んで捕まえたまでは良かった。


 が、肝心の勇者パーティーのメンバーに加わる予定の商人が居なくなってしまったのだ。


 クロキを紹介した商業ギルドへ文句を言ってもいいのだが、直ぐに代わりが見つかるとは思えない。


 商業国アキンドー1番の商会のオーナーと謳われていたクロキは、実は違法奴隷商人だったのだ。


 ここで2番目の商会を薦められても本当にそうなのか?と疑ってしまうから。


 そうなると、今アキンドーでは全商会の一斉捜査を行わざるを得ず、アルベルト達と一緒に行動を共にするパーティーメンバーが集められずにいたと言う訳だ。


「失礼いたします。先日勇者様方々には我が国の不正を行う商会の摘発の為、お手を煩わせていただきました。改めてお礼を申し上げます」


 アキンドーの宰相補佐のディケイが4人の居る部屋へ入ってきて、昨日のクロキ事件の件についてお礼を述べてくる。


 まぁ、たかが商会の摘発の為に勇者を使ったのだ。ここでお礼くらいは言っておかないとな。


 出来る事なら昨日の事件の事は、アキンドーの汚点でもあるから口外しないで欲しいだろうが、アルベルト達が口を閉ざしても何処からか漏れるだろうなぁ。


 人の口には戸を立てられないからな。


「勇者様方々には新しい商人のメンバーを補充しなければならず考慮されている事と存じますが、本日は当初の予定であるライダーズギルドからの商会で有らせられる御者をお連れ致しました」


 そう言って、新たな人物が部屋の中へ入ってくる。


「えーと、ライダーズギルドより派遣されたディーノ・デンライノと言います。いやー、勇者様たちと共に出来る事は光栄の極みです。

 ……って、あれ? なんか暗いですね? 俺、何かやらかしちゃいましたか?」


「いえ、ディーノ様が悪いわけじゃなのです。実は、予定していたメンバーの商人が都合がつかなくなりまして……」


 意気揚々と入ってきたディーノだが、落ち込んでいるアルベルト達を見ては戸惑い、それを見てパトリシアは慌ててフォローをする。


「え? じゃあ、今は商人の枠が空いているって事ですか?」


「まぁ、そうなるな」


「えーと、もしよかったら俺、紹介したい奴が居るんですけど、パーティーメンバーにどうですかね?」


 ディーノの言葉にアルベルト達が目の色を変えた。


「いや、待て。今はアキンドーの全商会が捜査に入っているんだろ?」


「でも紹介するだけしてもらうか? 最悪俺っち達が直に見てしまえば捜査はぶっ飛ばせるし」


「そう、ですね。ジルベール様のきゅーちゃんさんの力をお借りすれば、私達だけで判断も可能ですし」


「じゃあ、頼んでみるー?」


 一度クロキの悪事を暴いた事により、俺の株が上昇してるなー。


 取り敢えず、ディーノにはその商人を紹介してもらう事にし、アルベルト達はディーノに連れられてその商人の下へ向かった。


「そいつ、小さな個人商会で細々とやっているんですけど、変わり者であまり人付き合いが無い奴なんですよ」


 それ、商売人にとって致命的じゃないのか?


「商人としては優秀なのか?」


「……多分?」


 変わり者・コミュ症だけど優秀な奴っているからな。


 それに期待しよう。


「おーい、クーガー、居るかー?」


「あん? 珍しく客が入ったかと思ったらディーノか。何のようだ……って、おおおお客さん!?」


 ディーノに連れられて来たのは本当に小さな個人商会だった。


 店の中に居たのは、赤髪赤目のぼさっとした冴えない男だ。


 最初はディーノを見て気安そうに話しかけて来たが、アルベルト達を見ては急にどもり出す。


「あー、俺はアルベルト。勇者アルベルトだ。俺達は今、メンバーの商人を捜しているんだ。ディーノからあんたを紹介されたんだが……」


「おおおおお俺が勇者様のパーティーメンバーに!? そそそそそんな恐れ多いでゅす!」


 かみかみだな。流石コミュ症。


 店の中を見たところあまり儲けてなさそうだが……って、あれは!?


『ジル! あれ! あれを見てくれ!』


「(どうしたのー? きゅーちゃんー?)」


 ジルは俺の驚きに戸惑いを見せながら指示に従いその商品の前に来る。


 それは人が1人入れそうな大きな箱で、上に1/4ほどの小さな扉、下に3/4ほどの大きな扉が付いていた。


 ジルは大きな扉の方を開くと、中からヒンヤリした風が流れてきて、中には保存状態が良い肉や野菜が敷き詰められていた。


 小さな扉の方を開くと、大きな扉よりも冷たい冷気が漂い、中には大量の氷が鎮座していた。


 【鑑定】で見たとおり、これは冷凍庫付冷蔵庫だ!


 マジか! まさかこの世界で冷蔵庫を見るとは!


「これって、冷蔵庫ー?」


 ジルは俺に代わり、クーガーに冷蔵庫の事を訊ねてもらった。


「あ、あんた、これが何なのか、分かるのか……?」


 先程までしどろもどろでアルベルトの勧誘を躱していたクーガーだったが、ジルが冷蔵庫の言葉を発した途端、急に見る目が変わった。


 共通の趣味を見つけた友のように。


「うんー、上が冷凍庫になってて、物を凍らせることが出来るんだよねー? 下が冷蔵庫で、食べ物を長期間保存できるんだよねー?」


「そう! そうなんだよ! この冷蔵庫の素晴らしさを分かってもらえるとは! あんた見る目があるね!」


 あまりの急激なクーガーの変化にアルベルト達は引いていた。


「いやー、一つの箱に、温度差の違う冷気を送り込む仕組みに苦労したんだよ」


「これ、貴方が作ったのー?」


「まぁね。他にも色んな役立つ物を作ったんだけど、誰も理解してくれないんだよなぁ」


 ああ、日本でよくあった田舎のご近所に居るような変人の発明家か。




 名前:クーガー・アルティ

 種族:ヒューマン

 状態:健康

 二つ名:変人魔具師

 スキル:魔具師Lv99

 備考:魔具師であり商人である変わり者




 【鑑定】を見てもこの冷蔵庫をクーガーが作ったのがよく分かる。


 と言うか、魔具師Lv99ってカンストしてるじゃねぇか!


「アル君ー、この人をメンバーにしよー」


「姉さんも勧めるってことは、何かあるんだな?」


「うんー。この人、魔具師なのー。商人でもあり魔具師でもあるこの人が居れば、一石二鳥だよー」


 まぁ、確かに一石二鳥だが、俺的には冷蔵庫を発明するその頭脳が欲しい!


 上手くすれば、現代日本の発明品を作れる可能性が……!


 え? 石である俺は使えないだろうって?


 いいんだよ! ジルに使わせてやるんだから!


 そんな訳で、ジルの鶴の一声でクーガーは勇者パーティーのメンバーに商人枠で加わることになった。


「……あれ? 俺、恐れ多いって拒否してたはず……俺の意思は何処いった……」












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