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この石には意志がある!  作者: 一狼
第6章 勇者パーティー・集結編
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119.歓迎パーティー

 アキンドー国王が話したのはアキンドー国の成り立ちはそう珍しいものでもなかった。


 まだアキンドーが建国しても居なかった当時、ベンケー――まぁシフォン国王だな。がハーフハート大陸の北部と南部を繋ぐこの地で若気の至りで武者修行をしていたわけだが、そこに現れたのがウシワカだ(マジでウシワカって名乗ってた!)。


 ウシワカはベンケーを下し配下とし、この地に町を築いたと言う。


 あのシフォン国王をどうやって下したのか疑問に思うところだが、商人としての才能も有ったウシワカはベンケーが獣人王国の国王と分かると、隣国の支援を受けてアキンドーの町をどんどん発展させていった。


 北と南を繋ぐ要と言う事もあり、商業の重要拠点としてアキンドーは国を興すまでとなった。


 その時、アキンドー国の後ろ盾として獣人王国ビーストロアの名が上がり、アキンドーが窮地に陥った時はビーストロアが救援に駆けつけ、その見返りとしてビーストロアには食料など日用品の支援を行うと密約が交わされたのだと言う。


「その密約もあって、おいそれとビーストロアの王子を傷つける訳に行かなかったんですよ」


 いや、その獣人王国がアキンドーを危機に陥れてどうするんだよって話だな。今回の事件は。


 ああ、だからわざわざシフォン国王自らジェラート王子を迎えに来たわけか。


「いやはや、後ほどビーストロアから詫びが届けられると聞きましたが、それこそ恐れ多い話ですね。これまで我々はビーストロアから助けて頂いていますから」


「ですが、国としては今回の件、謝罪を表明しなければならないでしょう。周辺の国に示す為にも」


「その辺りは心得ておりますよ」


 アキンドー国王とパトリシアの会話は政治の話ともあって、アルベルトにはあまり興味をそそられる話ではなかったみたいだ。


 一応、勇者としてその辺の教育も受けているのか、辛うじて聞き手には回っているが、何処か聞き流しているっぽい。ジェラート王子との戦闘の疲れもあるみたいだし。


 まぁ、その教育もあのクソババァが主体で行っていたからイマイチ信憑性が無いが。


 ブラストールは元々興味は無いのか、商業国が獣人王国に逆らえない理由を聞いた後は、「まぁ、ありがちな話だな」と呟いたきりどうでも良さそうだった。


 ジルは実質年齢は27歳と大人だが、20年も迷宮大森林に籠っていたので世間を知らない訳で、こう言った外国の話は面白いみたいで「へぇー」だの「ほぉー」だの相槌を打っていた。


「さて、難しい話はこれまでにしておき本題に入りましょうか。勇者様は我が国でパーティーメンバーと合流すると言う事でしたね。その間、我が城でごゆるりと休まれると良いでしょう。パーティーメンバーも王城にお連れするようにと指示をしております」


「ありがとうございます。お言葉に甘えて休ませていただきますね。」


「今夜は勇者様をご歓迎するパーティーも開催する予定です。ぜひ楽しんでいただきたい」


「……分かりました。アルベルト様をご歓迎していただけるのです。ぜひ参加させていただきます」


 パトリシアは少し間を置いたが、パーティーに参加の意を示した。


 実際の所、こう言ったパーティーをやるよりも他にすべきことがあるのではと言うのがパトリシアの気持ちだろう。


 気持ちは分からんでもない。が、世間的にも政治的にもこう言ったパーティーは必要だったりする。


 このまま何の歓迎も無しに勇者を送り出したとなれば、アキンドーとしては周辺国の評判を落としてしまうからな。


 幾ら獣人王国の後ろ盾があると言っても、流石に評判は気にするだろう。商業の国だけに。


 懸念するパトリシアとは逆に、ただ酒を飲めるとブラストールは乗り気だし、ジルもこう言ったパーティーは初めてなので凄く嬉しそうにしている。


「(きゅーちゃんー、私パーティー初めてー! ドレスとか着たりするのかなー?)」


『おいおい、まさかその格好のまま出るつもりだったのか? その格好は冒険者としては悪くは無いが、こう言った王族貴族が出るパーティーでは相応しくないから、ジルもドレスを着てパーティーに参加だぞ』


「(ホントー? やったー!)」


 ジルは嬉しそうだが、アルベルトはと言うと微妙な表情をしているな。


 勇者としてさっさと戦力を整えて戦場に向かいたい気持ちと、こう言ったパーティーを蔑ろに出来ない気持ちがせめぎ合っているのだろう。


 まだ8歳なのに政治の裏側を知る苦労して……ホロリ。


 そんな訳で、アルベルト勇者一行を歓迎するパーティーが開催された訳だが、特段これと言った事件があった訳でもなく、好歓迎ムードのままパーティーはつつがなく終わった。


 ただまぁ、流石に主役とあって注目度は一番だったが。


 着飾ったアルベルトは勇者と言う事もあって、様々な貴族や令嬢に囲まれながらちやほやされていた。


 ただ、アルベルトはあまり楽しそうではなかったが。


 まぁ、クソババァと言った汚い大人を見ているから、貴族や令嬢の言葉の裏に潜む黒さを嫌悪しているのだろうな。


 色々な約束や婚約を持ちかけられたが、そこは8歳児らしくなく、のらりくらりと躱していた。


 ……クソババァとのやり取りの経験が生きたんだろうな。


 反対にジルはドレスを着れて凄くご満悦の笑みを浮かべていたりする。


 胸元を強調された薄紅色のドレスを着たジルはかなりもてていた訳だが、そこは保護者である俺があれこれ指示を出しながら貴族の誘いを躱していた。


 くすんではいるものの、流れる様な金髪にFカップの巨乳ともなれば貴族でなくとも男は捨てておかないだろうし。


 まぁ、身長は180cmを超えているが、アルベルトの姉やS級冒険者と言うステータスがそれを上回っていたのだろな。


 食いつく男が多い事か。


 ジルはまんざらでもなさそうだったが、食われたら最後。どうなっていたか分かってんのか?


 同じ様な意味合いで、パトリシアも群がられていた。


 青と水色のドレスを纏ったパトリシアは、聖女や枢機卿と言う事もあり、政治的繋がりや婚約者としてパトリシアを狙われていた。


 特に、年齢的にも若い女性と言う事もあり、ジル以上の貴族に囲まれていたりする。


 こちらは元々地方の教会に努めていただけの貴族社会に無縁の生活を送っていたので、こう言ったパーティーでのあしらい方を知らずに苦労はしていたみたいだ。


 流石に変な約束や婚約者を押し付けられたら困るので、ジルに指示をだしそれとなく助けたりはしていた。


 え? ブラストールはどうしたかって?


 あいつ、好待遇を持ちかける貴族や煌びやかなお嬢さんたちの誘いを無視し、神殿騎士の正装でただひたすら酒をかっくらい飯を食う事に集中していたよ。


 ちょっとはジル達を助ける壁にでもなれって言うのに。


 まぁ、そんな訳で特に問題も無くパーティーは終わり、次の日にはようやく勇者パーティーのメンバーの1人と会う事が出来た。












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