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この石には意志がある!  作者: 一狼
第6章 勇者パーティー・集結編
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115勇者VS麒麟(幼)3

 雷そのものと化したジェラート王子はドヤ顔で胸を張る。


 雷を纏うだけなら勇人部隊の部隊長であったユーグも使っていたように、それ程脅威じゃない。


 だが、雷化するとなれば話は別だ。


「行くよ! やぁっ!」


 雷速でアルベルトに迫り、右拳による一撃を放つ。


 ガィンッ!!


「ぐぅっ!!」


 アルベルトは何とか盾でジェラート王子の攻撃を捌くが、あまりの速度と攻撃の威力に踏ん張りが効かずにたたらを踏む。


 とは言え、雷化したジェラート王子の攻撃をアルベルトは防いだ。


 普通であれば雷速の攻撃は簡単には防げない。


 幾ら雷化したとはいえ、戦術が一辺倒の単純攻撃だ。防ぐことは容易い。


 まぁ、容易いというのはジルとか規格外の者や達人とか言った人種だけだが。


 だが、アルベルトでも辛うじて防ぐことは出来る。


 もし、ジェラート王子が雷化の機動力を駆使した攻撃をしていれば負けていただろう。


 そのジェラート王子は馬鹿の一つ覚えのように、雷速で間合いを詰め右拳で攻撃を繰り返す。


 アルベルトも先ほどまでよりも重心を落とし、両足で踏ん張って攻撃をいなし続ける。


 流石に隙を見ての攻撃は出来なく放ったが、致命傷を負わない様に慎重に攻撃を捌きながら様子を伺っていた。


 問題は……ジェラート王子の雷化の余波である放電だ。


 アルベルトは盾でいなし続けるが、すれ違いざまに放たれる放電は僅かずつだがアルベルトを傷つけていた。


 【治癒魔法】で細かい傷は癒しているものの、放電によるダメージが治癒を上回っている為、ダメージが蓄積して先にアルベルトがダウンしてしまう。


 もう1つの問題は、アルベルトの盾が何処まで持つかだ。


 アルベルトが持っている盾は普通のミスリルの盾だ。


 ミスリルを普通と呼ぶのは些か疑問だが、魔力加工もされてないただの盾にジェラート王子の雷速による攻撃が何処まで耐久力が持つか。


「おいおい、ちょっとヤバいんじゃないのか?」


「あわわわ、ジルベール様、アルベルト様は本当に大丈夫なんでしょうか? どう見ても劣勢に見えますが」


 先程までとは違い、雷速で舞うジェラート王子に防戦一方なので不安になるのも分かる。


 だが、ジルは自信を持って言う。


「大丈夫だよー。向こうはただ速くなっただけだよー。何の問題も無いわー」


「いや、その早くなったのが問題なんじゃ……」


 俺達の心配を余所に、ジェラート王子の攻撃は激しさを増していく。


 そして何時までも確実に防ぎきれるわけでもない。


 僅かな隙が致命的な隙となり、アルベルトを襲う。


「がっ!?」


 ジェラート王子の攻撃を捌き切れなかったアルベルトの盾は、上段に弾かれその体をさらけ出してしまう。


「もらったぁ!」


 ジェラート王子はその場で直ぐに切り替えし、アルベルトの体に向かって右拳を放つ。


「ちぃ!」


 盾を上段に弾かれたことにより体を浮かされたアルベルトだったが、強引に体を捻りジェラート王子の攻撃を躱そうとするが、間に合わずに脇腹に一撃を貰ってしまった。


 一撃を貰ったアルベルトは二転三転と地面を転がりながら吹き飛ばされた。


「やったぁ! 僕の勝ち!」


 ようやく一撃が決まったことに喜びをあらわにし、ガッツポーズを決めるジェラート王子。


「まだよー! まだ決着はついてないわよー!」


「え? だって僕の一撃を貰ったんだよ? もう勝負は…………うそ、何で立てるの……?」


「おいおい、勝負はまだ終わっちゃいないぜ」


 アルベルトは脇腹を抑えながらも剣を杖代わりにして何とか立ち上がる。


 【勇者】スキルの最大の特徴は【魔王】スキルに一撃を与える事だが、それ以外に特徴を上げるとするなら【百花繚乱】に及ばないものの、多種多様性のスキルを使いこなせることだ。


 【パワーアップ】や【スピードアップ】などでジェラート王子の動きに付いて行き、【硬化】で防御力を上げてダメージを軽減し、【治癒魔法】で脇腹のダメージを癒す。


 それらが今、アルベルトが何とか立っている理由だ。


「さぁ、続きを始めようか」


 アルベルトが剣先をジェラート王子に向け、かかってこい挑発する。


 その気迫に、ジェラート王子はたじろいでいた。


「アル君ー! 相手はただ速くなっただけだよー! 惑わされないでー!」


 ジルのアドバイスを受けたアルベルトは一考すると、左手で弾き飛ばされた盾を拾おうとしていたが、そのまま地面に置いたまま両手で剣を構えた。


 剣先を右先に下げた、脇構えに似た構えを取る。


 盾を捨てた事にジェラート王子は舐められたと思い、先ほどまでたじろいでいた雰囲気が一気に吹き飛び怒りに滲ませた表情でアルベルトに向かって行った。


 実際はジェラート王子を挑発したのではなく、ただ単純に一撃を込める為に両手で剣を構えただけなんだがな。


「パトリシアー、治癒の用意お願いねー。これで決着が着くからー」


 ジェラート王子はアルベルトを捻じ伏せる為の渾身の一撃を、アルベルトは逆転の一撃を放つための構えを。


 そう、勝負はこの一撃で決まる。


 そしてジェラート王子は気が付かない。


 幾ら怒りで力を込めようと、単純一辺倒の攻撃は今のアルベルトにとって絶好のカモだと言う事に。


 雷速で最大の一撃を放とうとするジェラート王子。


 ジェラート王子の動きに合わせて構えを変えるアルベルト。


 一瞬の交錯にジル達は息を飲む。


「あ、あれ……? 何で剣が刺さっているの……?」


 アルベルトの剣は見事にジェラート王子の胸を貫いていた。












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