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この石には意志がある!  作者: 一狼
第6章 勇者パーティー・集結編
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114.勇者VS麒麟(幼)2

「それじゃあ、いっくよー!」


 ジェラート王子は左拳を前に出し、半身の構えからダッシュして一気に間合いを詰めてアルベルトに接近する。


 対するアルベルトは、こちらも半身で左手に構えた盾を前に突き出している。


 一気に近づいたジェラート王子はそのまま右拳による攻撃を放つ。


 うん、思った通り麒麟の身体能力に任せただけの単調な攻撃だ。


 確かに一気に間合いを詰める速度や右拳の攻撃速度は目を見張るものがあるが、ただそれだけだ。


 アルベルトはジェラート王子の攻撃を冷静に見極め、盾を拳に当て斜めに弾き飛ばす。


「ふっ!」


 ジェラート王子は攻撃をいなされて、そのままアルベルトの背後へ体が流れる。


 アルベルトは追撃はせずに、直ぐに盾を構えてジェラート王子の方に向き直る。


「むー、何で避けるの!」


「そりゃあ避けるだろ」


「こうなったら当てるまで攻撃してやる!」


「当たらねぇよ。幾ら攻撃してもな」


「今で挑んだ人たちの中にも沢山避けた人がいたけど、最後は僕が勝ったよ? 何時まで躱し続けられるかな」


 そう言い、ジェラート王子は馬鹿の一つ覚えのように右拳を引いて、ダッシュして攻撃のワンパターンを繰り返していた。


 アルベルトも無理な追撃などはせずに、盾で真正面から受けずに斜めにずらして攻撃をいなし続けた。


 ジェラート王子に大きな隙が出来るときには右手に持った剣で一撃を繰り出す。


 だが、ジェラート王子の体には鱗で防御されているのか、決定的な一撃にはならなかった。


 それでもアルベルトは慌てず焦らず盾を構え攻撃をいなし続ける。


 簡単に攻撃をいなしているように見えるが、その実、かなりの神経を使っておりアルベルトの消耗は激しい。


 アルベルトの装備はフルプレートではなく、ミスリルの胸当て、ミスリルの手甲、ミスリルの脛当てと金属鎧はそれだけで動きやすさを重視している。


 そのお蔭でジェラート王子の驚異的な身体能力による攻撃を捌き続けていた。


 勿論、身体強化系の魔法を掛けてパワーやスピードを上げているが、それでもギリギリの所だ。


「やぁー! っとっと」


 何度目かの攻撃を大きくいなされたジェラート王子は思わずたたらを踏む。


「はぁっ!」


 それを狙っていたアルベルトはコンパクトでありながら力強い上段からの一撃をジェラート王子の頭上に放った。


「あっ!? くっ!!」


 咄嗟に腕を十字に交差して攻撃を受け止めるジェラート王子。


 ガギンッ!


 麒麟の鱗により防御はされたが、その一撃は確かなダメージをジェラート王子に与えていた。


「っいってぇ~~!!」


 思いがけない一撃を貰ったジェラート王子は思わず距離を取り、腕を振り回しながら痛みに悶える。


 その腕からは僅かだが血が流れていた。


「どうだ? 降参するか?」


「するわけないじゃん! 勝負はここらだよ! あんた強いな。僕にこの技を遣わせたのはベンケーをやって6人目だよ!」


 ジェラート王子は振り回していた両腕を頭上に掲げ、何かを呼ぶように祈る。


 見た目は元○玉を集めている格好だな。


「ところで……この勝負って、どうやって勝敗を決めるのでしょうか?」


 これまで黙って勝負を見守っていたパトリシアがふと尋ねてきた。


「あ~~……どちらかが参ったって言うまでか? もしくはどちらかが動けなくなるまで?」


「……あの二人は参ったを言うように見えますか?」


「あのベンケーはムキになっているから言いそうにないな。アルベルト殿も勇者としての矜持があるから言わないだろう」


「だとしたら、勝負はどちらかが動けなくなるまで決着が着かないと言う事でしょうか? それってかなり危険なのでは?」


「まぁ、危険だな。尤も危険じゃない闘いはないがな」


「いいのでしょうか、このまま黙って見ていても。アルベルト様は勇者として魔王を討つ使命があるのですよ。こんなところで危険を被る必要は無いのではないでしょうか」


「必要があるかないかと言われれば、あるとしか言いようがないな。温室育ちのぼっちゃんが魔王を倒せるとでも? 自ら危険に立ち向かう事により己を鍛え上げるんだよ」


 パトリシアの心配も分かるが、ブラストールの言う事は尤もな事だ。


 アルベルトはそれが分かっているから1人で闘いを望んだのだ。


「パトリシアー。心配しないでも大丈夫だよー。アル君は勝つからー」


「ジルベール様……。アルベルト様の事を信じているのですね」


「うんー。だって私の自慢の弟だし、私がこの1ヶ月の間鍛え上げたんだよー。例え麒麟が相手でも負けないよー」


 いや、ジルさんや言い過ぎ。


 流石に麒麟相手じゃほぼ勝てないよ。


 今の相手が麒麟(幼)だから勝てると踏んでいるから挑ませたんだよ。


 っと、ジェラート王子の頭上に雲が集まってきた……?


 それもタダの雲じゃない。黒く稲光を放つ雷雲だ。


「来い来い来いー!」


 カッ!!!


 光と同時に轟音が鳴り響く。


 一瞬の閃光で辺りが真っ白に塗り潰されたが、光が治まるころにはジェラート王子に変化が現れていた。


 バチバチバチバチッ


「へへーん、これが僕の必殺技だよ!」


 雷と化したジェラート王子は得意げに胸を張る。












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