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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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104.VS英雄1

「そういや、さっきガキが姉さんって言ってたな。てめぇ、このガキの姉貴か?」


「そんなはずはありません! 勇者の姉はまだ10歳のはず。貴女があの『幻』のジルベールだと言うのですかっ!」


 勇人部隊の部隊長であるユーグは油断なく構え、クソババァは信じられないと言う面持ちでこちらを睨んでいた。


 まぁ、公式上ではジルはまだ10歳だからな。


 目の前の20歳を超える大人を簡単にジルと認識は出来ないだろう。


「少なくとも枢機卿のおばーちゃんとは3年前には会ってるけどねー」


「……っ!」


 今のジルに面影があるのを見たのか、目を見開いて驚きを顕わにする。


 ああ、その顔を見たかったんだ!


 無論、最上位会議でのやり取りも【千里眼】でバッチリ見ていた。


 あの時のクソババァの呆けた顔には胸がスカッとしたね!


 そしてクソババァが諦めきれずに何かしようと行動するのもお見通しだ。


 その時に接触した謎の人物は怪しさ抜群だが、クローディアに追跡をお願いして俺達はクソババァを追ってこっそり様子を伺った。


 え? 何でアルベルトがピンチになるまで黙って見ていたって?


 まぁ、理由は2つある。


 1つはジルがアルベルトが成そうとしている事に水を差したくなかったと言う事。


 もう1つは単なる時間稼ぎだな。


 今、クソババァに下す裁きを教皇と枢機卿らが会議室で決めている。


 その会議が終わるまで時間を稼げれば俺達の勝ちなわけだ。


 そんな訳で、ギリギリまで様子を見守っていたと。


「ほぅ、お前が最年少S級冒険者の『幻』のジルベールか。まさかこんなところでお目にかかるとはな。まぁ、S級だろうがなんだろうが、今更俺達の邪魔はさせねぇよ」


 クソババァはまぁ脅威にはならないから後回しにしていいとして、対するユーグは突然現れたジルに面白そうに牙を剥きながら殺気を飛ばしていた。


「ううんー、貴方達の企みはここで終わりよー」


「けっ、俺が居る限り終わらねぇよ。おい、お前ら! さっさとそいつらを黙らせてクソガキをふんじばっておけ!」


 ユーグの合図で、様子を伺っていた勇人部隊は動き出す。


 対するこちらは怪我をしたアルベルトを除けは5人。


 隷属魔法で縛ってあるマードックとコーリン。


 力で屈服させたハイドラ。


 後の2人はアルベルトが説得したのだろうな。


 ジルはざっと周囲を伺い5人に指示を出す。


「マードックー、アル君の怪我を見てあげてー」


「お、俺かよ!?」


「マードックは【ポイズンマスター】を持っているでしょー。毒も薬も使いようだからねー」


「分かったよ」


「ハイドラとそこの2人はアル君とマードックを護ってー、コーリンはこの子らを貸すから勇人部隊を蹴散らしてー」


「この子……?」


 俺はジルの要請に応じ、召喚魔法で5匹のゴブリンを呼び出す。


 勿論、ただのゴブリンじゃない。


 ハイフォレストゴブリン、ゴブリンマッスル、ゴブリンフェニックス、ゴブリンファング、シンゴブリンとハーフハート大陸では見かけない新種のゴブリンたちだ。


 強さは言うまでも無く、普通のゴブリンは比べ物にならないくらいの強さを誇る。


「ギィォ!」


「ギムゥ!」


「ギボォ!」


「ギャゥ!」


「ギギィ!」


 ゴブリンたちは今か今かとコーリンの指示を待つ。


 流石ゴブリンファミリアのスキル持ちだ。あっさりとゴブリンたちを配下に置いた。


「あはっ♪ いい子たちね。いいわ、ご主人様の言う通りこいつらを蹴散らしてあげる」


 新種のゴブリンを目の前にして、コーリンは喜びを隠そうとはせずに嬉々として勇人部隊に向かって行った。


 残りのハイドラと2人はアルベルトとマードックの周囲に展開し、マードックはアルベルトを担ぎながらコーリンが切り拓いた道を走り、戦闘の邪魔にならない壁際に避難してアルベルトの怪我の様子を見る。


 よし、これで心置きなくユーグを相手に出来るな。


『ジル、油断するなよ。腐っても勇人部隊の部隊長を務める人物だ。一筋縄じゃいかないぞ』


「(分かってるよー。なんせ【英雄】のスキル持ちだからねー)」


 勇人部隊の部隊長であるユーグに関しては、クローディアが調べてくれていた。


 その中で一番注目したのが【英雄】のスキル持ちだと言う事だ。


 このスキルの厄介なのは、相手がスキル持ちより強ければ何倍何十倍も強化されると言う事だ。


 【英雄】スキル持ちより弱ければスキルは発揮されないが、当然【英雄】スキル持ちの方が強いから勝ち目がない。


 逆に【英雄】スキル持ちより強ければスキルが効果を発揮し、何倍も強くなり結局【英雄】スキル持ちが強さを上回ると言う理不尽極まりないスキルなのだ。


 まぁ、だからと言って全く対策が無いわけではない。


 少なくとも俺らは【英雄】の対策が3つほど持っている。


 俺らでしか使えない対策だが、まず間違いなく【英雄】は脅威とはなりえない。


 とは言え、油断は禁物だ。


 なんせ【英雄】スキルを使用しないでも、ユーグの強さはS級に匹敵すると言ってもいいからな。


 しかし、それは向こうも同じらしく、警戒をしながらも久々の強敵を相手に獰猛な笑みを浮かべていた。


「はっ、【英雄】スキルが発動する相手は久々だぜ。S級の名は伊達じゃなさそうだな。今は急ぎだと分かってはいるが……楽しめそうだ!」












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