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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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101.3人の枢機卿

 おいおいおいおいおいおい、何なんだコイツ。


 互いに協力しようって呼びかけておいて、邪魔をするな、だぁ?


 何様のつもりだ、コイツ。


 ああ、天下のAlice神教教会の“天”の枢機卿様だったな。


 結局こいつもクソババァと同じ人種って訳か。


「手を引けって言われて、はいそうですかって言う訳ないじゃんー。馬鹿なのー?」


 どうやらジルの方でも珍しくイラッとしたみたいで、挑発を持って返す。


「……ほぅ、教会に逆らうと言うのか?」


「教会ー? 貴方は教皇様にでもなったつもりなのー? ただの一枢機卿に過ぎないでしょー。自分が教会の代表みたいな言い方は自惚れてるんじゃないのー?」


 ジルの滅多にない挑発に、“天”の枢機卿は額に青筋を浮かび上がらせながら怒りを滲ませ声を絞り出す。


「“天”の枢機卿は他の枢機卿と違い特別な役職だ。それを一市民でしかない貴様が私に逆らうと言うのか?」


「逆らうも何も、そっちから協力しないかって呼んだんじゃないー。ふざけているのはどっちー?」


「わたくしは“天”の枢機卿から“勇”の枢機卿の件で互いに協力をしませんかと呼び掛けられました。それがここに来てこのような仕打ちとは。説明を求めます」


 クローディアもジルと“天”の枢機卿を取り持つ役を担っていただけに、“天”の枢機卿の仕打ちには納得がいかないようだ。


「……協力、か。大方貴様らが協力しようと持ちかけて教会に寄生して利益を掠め取ろうとしているんだろう。残念だがその目論見は私には通じない」


 はぁぁ? こいつ本当に何を言っているんだ?


 いつ俺達が教会に寄生して利益を掠めようとしたって言うんだよ。


 寧ろ、教会は目の仇なんだがな。


「ここまで言っても教会に食い込もうとしているのなら、力尽くでも排除するまでだ」


 カッチーーン


 あ、ジルが完全にキレた。


「このS級冒険者である私を力尽くで排除するってー? へぇー~、出来るものならやってみなさいよー。(きゅーちゃんー)」


『おう!』


 俺はジルに言われるがまま【威圧】を放つ。


 当然、俺もキレていますよ。


「――っ!!」


 俺の【威圧】を受けて、“天”の枢機卿は顔を青褪めさせながら椅子にへたり込む。


 そして、周囲に潜ませていた者も【威圧】を受けて隠していた気配を顕わにした。


 【気配探知】でこの部屋の天井に1人、左右の壁に2人、廊下側に1人が潜んでいたのが分かっていたからな。


 無論、そいつらにも向かって【威圧】を放った訳だ。


 天井に潜んでいた者は、まともに【威圧】を受けて天井からずり落ち、俺達の前に姿を現す。


 壁に潜んでいた2人は姿は隠れてはいるものの、震えが壁を叩きつけ存在を明らかにしていた。


 廊下側の者は、床にへたり込み失禁しているようだった。


 あくまで【威圧】を放ったのは“天”の枢機卿らに対してであって、クローディアやパトリシアには向けてない。


 だから突然天井から潜んでいた者が落ちて来た時は、パトリシアはビックリしていた。


「さてとー、力尽くでって言ってたけど、どうするー?」


「…………っ」


 冷や汗を滲ませながら言葉に詰まる“天”の枢機卿。


 一瞬の膠着。それを破ったのは新たに現れた人物だった。


「私の顔に免じてそこまでにしてもらえるかしら?」


 現れたのは、見事に金髪ドリルヘアーの妙齢の女性だった。


 着ている衣装は“天”の枢機卿やクソババァと同じような衣装だ。


 おそらくこの女性も何かしらの枢機卿だろう。


「ミリアリア・アスデリア枢機卿……! ここへ何しに来た。ここは“天”の区画だぞ」


「あら、随分なごあいさつね。私は“政”の枢機卿よ。例え“天”の区画であろうと、教会での運営を取り仕切る権限があるわ。言わばこれは視察よ。まぁ、“勇”の枢機卿を陥れる手札が来たと言うので見に来たついででもありますけど」


 こいつが“政”の枢機卿か。


 見た感じは40代前半の所謂美魔女と言ったお嬢様だ。


「貴方が彼女たちを要らないと言うのなら、私が貰いますわ。貴女達、私の元に来てその力を貸して下さらないかしら?」


「何を馬鹿な事を。こいつらは“勇”の枢機卿を陥れる手札など持っていない。そんな都合のいい話などあるものか。教会に縋りつくためのブラフに決まっているだろう」


「お黙りなさい、トランベル・ティーダン枢機卿。私は彼女らと話しているのです。さぁ、どうしますか?」


 さっきの【威圧】の影響もあるのか、“天”の枢機卿――トランベルは“政”の枢機卿――ミリアリアに一括され黙り込んでしまう。


 さて、どうしたものか。


 このままトランベルに付いていても話にならない。


 一応、候補であった強権行政派に話しを持って行くべきか。


 それにしてもトランベルは何故俺達がクソババァの情報を持っていないと決めつけているんだ?


 ミリアリアの方は何処からか情報を仕入れたのか、俺達がクソババァの情報を持っているって接触して来たのに。


「おっと、そいつは困るな。神殿内で物凄い殺気を感じて来てみれば、随分と面白い事になってるな」


 おいおい、ここに来てまた新たな登場人物かよ。


「アクアリス・ザイアード枢機卿……! “戦”の枢機卿の貴方まで何故!」


 立て続けに現れた枢機卿に動揺を隠せないトランベル。


 て言うか、この爺さんが“戦”の枢機卿!?


 ジジイとは思えないほどの肉体に、そこに居るだけで気迫を纏う歴戦の戦士がそこに居た。


 なるほど。“戦”の枢機卿を任されるだけの者だって言う事か。


 ……あれ? いつの間にか、クソババァ以外の強権派のトップがここに集結しているぞ!?


「何故ここにって? さっきも言ったが、物凄い殺気を感じてそいつらをしょっ引きにここに来たんだが?」


 ……もしかして、ちょっとピンチ?












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