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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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097.エイス村

「私はS級冒険者のジルベールですー」


 ジルはそう言ってS級冒険者の証の虹色に輝くプラチナのギルドカードを見せる。


 S級のギルドカードを見た村人の男は流石に驚いていた。


「え、S級冒険者!? マジだ! すげぇ!」


「それで、パトリシアさんは居るー?」


「あー、それだけど、この村にそんな人は居ないぞ」


 村人の男はさも当然に言う。


「えー? 本当ー?(きゅーちゃんー、どうー?)」


 だが俺には通用しない。


 嘘発見の【センスライ】により、村人の男が嘘を言っているのが丸分かりだ。


『どうやらパトリシアってシスターはこの村に居るのは間違いなさそうだな』


「(そっかー。でも居ないって言っているよー。どうしよっかー?)」


『うーーん、取り敢えず、村長に会ってみるか。もしかしたら村長なら話が通じるかもしれないし』


「(分かったー)えっとー、それじゃあ村長さんは居るー?」


「お、おう。村長ならこの道を真っ直ぐいたところの真ん中の家に居るぜ」


「ありがとー」


 村人の男の言う通り、進むと他の家よりも多少まともな家があった。


「ごめん下さいー、村長さん居ますかー?」


「あん? 誰だ、今はこんな時間に」


 こんな時間って、まだ昼前なんだけどな。


 ……ああ、村の今の時間なら畑仕事中とかだからか。


 家の中から出てきたのは40代くらいの村長にしては思ったよりも若い男だった。


「……どちらさんで?」


「私、S級冒険者のジルベールですー。パトリシアさんって言うシスターさんの事について聞きたいことがあって来ましたー」


 ジルが再びS級のギルドカードを見せながらパトリシアについて聞いてみる。


 村長はS級のギルドカードに驚きながらも、ジルの発したパトリシアと言う単語に不思議そうな顔をしていた。


 さっきの村人の男と言い、演技が上手いな!


「シスター? こんな小さな村だけど教会はある。けど、そこに居るのは神父様でシスターではないぞ。誰かと間違ってないか?」


 上手い受け答えだな。


 これだと嘘を言っているか分からないぞ。


『ジル、パトリシアの村の名前を言え。それでそれなら嘘は付けないはずだ』


「セプテム村の生き残りのパトリシアさんだよー。知らないですかー? ここに居るって聞いたんですけどー」


「セプテム村が盗賊に滅ぼされたのは知っている。そこに居たシスターもな。だがもう誰も生き残っていない」


 誰も生き残っていないと言うのは嘘だな。


 ふむ、【索敵】で探ってみるか。


 俺は【森羅万象】の方でこのエイス村に【索敵】を掛ける。


 【森羅万象】での細かい操作なら村の何処に誰が居るかが分かるからな。


 エイス村は8戸の29人と、そこに教会の神父を加えて30人の本当に小さな村だ。


 つまり、ここにパトリシアが居るのなら31人居る事になる。


 ……ビンゴ。


 【索敵】にパトリシアの名前があった。


 村長の家の裏だ。


 家の影に隠れて見えないが、そこに小さな小屋がありパトリシアが居るみたいだ。


「ふーんー、じゃあ家の裏にある家は何なのかなー?」


 ジルにその事を伝え、村長にカマを掛けさせてもらう。


「はぁ? 裏にあるのは家じゃなくて物置小屋だぜ」


「えー、小屋だったんだー。てっきり人が住めるように改装されていたから家かと思ったよー」


「な、何言っているんだよ。普通の小屋だろ」


 村長は今度は明らかに動揺しているのが顔に現れていた。


「中を見させてもらってもー?」


「いや、見せる理由がねぇ。あんたは確かにS級冒険者かもしれないが、何でも言う事を聞かなければならないわけじゃねぇ」


 まぁ、確かにそうだな。


 さっきの動揺とは打って変わって冷静に対応してくる村長。


『ねぇ、何で村長は、パトリシアさんを、匿ってぃるんだろぅ……?』


 へきちゃんに言われて気付く。


 そういやそうだ。


 なんで縁もゆかりもないパトリシアを村長は匿っているんだ?


 ……もしかして村長はセプテム村で起こった惨劇の真実を知っている?


 そうか、ここですべき対応は村長に真摯に接する事だ。


 村長はパトリシアを助けようとしている。


 俺達も助けようとしている事を伝えるのがおそらく正解だ。


「村長さんは、セプテム村で起こった惨劇の真実を知っているんだねー?」


 村長は何も答えない。


 ただ、顔の表情に僅かだが変化があった。


「私もその真実を知っていますー。その真実――教会に対応する為にパトリシアさんに話を聞きたいんですー」


「……っ! あんたも教会の非道を知っているのか!」


「うんー。正確にはある枢機卿の非道なんだけどねー。私もその枢機卿に因縁があって、何とかしたいと思ってるのー。このまま好き勝手やられるのは癪だからねー」


「あんたも教会の被害者なのか。

 …………そうか。分かった。シアの元へ案内しよう。ただ、あの子はあの事件以来精神が不安定だ。出来ればあまり刺激しないで欲しい」


 村の壊滅がトラウマになっているのか。無理もない。


 幸いと言っていいのか、俺には【百花繚乱】や【森羅万象】の精神を安定させる魔法があるからな。


 落ち着かせて話を聞くのは大丈夫だ。


「大丈夫ー。無理な事はしないからー」


 ジルの言葉を信じてくれたのか、村長は重々しく頷いて家の裏にある小屋に案内してくれた。












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