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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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096.生き残り

「ジルベールさん、面白い事が分かりましたよ」


 そう言ってクローディアが新たな資料を持ってジルの前へ現れた。


 ハイドラを撃退した後、クローディアを勇人部隊が村を壊滅させた5つの村の調査をお願いしていた訳だが、2日後に詳しい情報を手に入れたと連絡があったので、村の外で待ち合わせをしていたのだ。


「クローディアー、お疲れ様ー」


「いえ、これも仕事ですので」


 そう言ってクローディアは資料をジルに渡す。


 ジルは早速資料を見ては顔をしかめる。


 まぁ、見ていて面白いものじゃないからな。


 ただ、俺が気になっていた点である、5つの村の殲滅の内の2つは思った通り勇人部隊の欲望によるものじゃなかった。


 勇人部隊が最盛期の頃に行われた村の殲滅は、村の教会に赴任している神父がクソババァの悪事を見咎めて、村全体を巻き込んで告発しようとしたところを発見されて勇人部隊をけしかけられたらしい。


 もう1つの方の勇人部隊設立時頃に行われた村の殲滅は、村の教会の若いシスターのスキルが【指導者】だった事に起因するらしい。


 なるほどな。あのクソババァは自分の地位を脅かしかねない者を、速めに芽を摘もうとした訳だ。


 確か“勇”の枢機卿になる条件は【指導者】のスキルを持っていることが大前提だ。


 いつか現れる【勇者】スキルを持つ者を【指導者】が正しき道に指導し、魔王を討つためだと。


 クソババァは折角築いた地位を脅かしかねない【指導者】持ちの教会関係者を村ごと消したのだ。


「随分自分勝手なことしてるねー。他の村もそうだけど、このシスターさんの居る村は何も関係ないじゃないー」


「ええ、たった1人のシスターを消すために村ごと殲滅させてます。とても許される事じゃありません」


「勇人部隊の非道もそうだけど、これは枢機卿のおばーちゃんの証拠にもなるねー」


「それだけじゃありませんよ。先程面白い事が分かりましたと言ったじゃありませんか。それはこれですよ」


 そう言ってクローディアはジルが持つ資料のあるページのある項目を指さす。


『……ほぅ。なるほど、確かに面白いな』


 思わず声が出る。


「へぇー、生き残りが居たんだねー。しかも枢機卿のおばーちゃんが消したがっていた、当のシスターさん本人がー」


「彼女は村で起こったことを実際に目にしています。正に生き証人として“勇”の枢機卿を断罪する証拠になります。それに、“勇”の枢機卿の地位を脅かす【指導者】でもあります。彼女に最大のダメージを与える絶好のキーマンと言えましょう」


『そうか……! あの老害を引きずり降ろした後の後継者が居るのと居ないのとでは引きずり降ろしやすさが変わりますね』


『ああ、クソババァの事を表沙汰にしてもしなくても後釜が居れば穏便に済ませられるわけか』


『客観的に言えば、強権派にしてみれば教会のイメージを悪化させないために頭を挿げ替えて事を大きくしない方向に進む可能性が高いですけど』


『えー、あたいとしては世間に知らせてギャフンと言わせたいね』


『Yeahー! それこそ悲劇のHeroineとしても格好のTalentだZe!』


『それ採用! おばーちゃんがアル君にやろうとしていたことをそのままやり返す訳ね!』


『正に自業自得、因果は巡る』


『そぅと決まれば、そのシスターを、保護しなぃと……。おばぁちゃんに気づかれて、また、狙われる可能性が、ぁるょ……』


 めーちゃんの言う通り、俺もあのクソババァのしでかしたことを世間に公表したいが、シスターの存在が強権派が穏便に済ます可能性が高いな。


 後はやーちゃんの案を採用するにしても折角の証人だ。最優先で確保しないと。


 村ごと殲滅させたことで安心しているかもしれないが、へきちゃんの言う通りクソババァにとって今が一番大事な時だ。気付かれる可能性もある。


『よし、そのシスターの居る所へ行こう。クソババァの非道の証言をしてもらい、強権派の交渉の材料にしよう』


「(シスターさん、証言してくれるかなー? 村が襲われた事がトラウマになって断られないー?)」


『まぁ、その可能性もあるな。その場合はシスターの安全を確保してそっとしておくしかないさ。証拠ならこれまで集めたのだけでも十分だしな』


「(うんー)」


 クローディアにはアリスティラ大神殿――クソババァの動向を知る為にも王都セントールへ向かってもらう。


 俺達はそのシスターが居る村へと向かう事にした。


 シスターが居る村は王都から馬車で3日ほどの距離で西側にある小さな村だ。


 ファルト村から王都を挟んで反対側にある為、馬車では2週間以上かかる。


 ふーちゃんだと大体4日と言ったところだ。


 まぁ、光速モードを使えばほぼ一瞬なのだが、あれは使いこなすのが難しいからなぁ。


 近距離ならまだしも、長距離となるとズレや物体の衝撃が下手をすれば致命傷になりかねないし。


 と言う訳で、俺達はふーちゃんの頑張りで最大速度を超えて3日弱で件のシスターが居る村へ着いた。


 小さな村らしく、入り口には見張りなどはおらず村の周りには策などと言った囲いは無い。


 ジルが村を歩くと村人を見かけた。


「あのーすいませんー。この村にパトリシアさんって言うシスターさんが居ると思うんですけどー」


「……あんた何者だ?」


 村人の男はジルを訝しげに見る。


 まぁ、いきなりそんな事を言われても怪しいよな。


 ただでさえ、そのシスターは壊滅した村の生き残りで、この村が殲滅した村の理由を知っていれば、簡単に答えられるわけがない。


 これはちょっと接し方を間違えたか?

















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