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この石には意志がある!  作者: 一狼
第2部 「猛女」 / 第5章 Alice神教教会・対決編
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Side-11 マリアベル2

「ふふふ」


 私は思わず笑みをこぼします。


 アルベルト様の“指導”は順調に行き、僅か3年と言う短い期間でありながら身体と()はとても8歳とは思えない程に成長しました。


 そして今日、“管理”しているファルト村が壊滅したと報告した心の隙を狙って仕込みを植え付ける事に成功しました。


 これであのお子様は私に逆らう事は出来ません。


 【指導者】のスキルには隠された能力があります。


 基本的に【指導者】は“命令”を行なう事は出来ませんが、“指導”によりある程度は命令することは出来ます。


 ですが、長い年月を掛けて“指導”することにより、指導された者は【指導者】に“大恩”を感じ、ほぼ指導者の言いなりになってしまうのです。


 その“大恩”を先程アルベルト様に仕込みました。


 普通なら3年やそこらで植え付ける事は出来ないのですが、故郷の村が滅んだ事で心に隙が出来たので、そこに付け込んだのです。


 アルベルト様の故郷のファルト村も、言う事を聞かせるための“管理”をしていましたが、今は最早必要ありません。


 “大恩”を仕込んだのもそうですが、最早アルベルト様が勇者を止める事は出来ないからです。


 最前線で魔王軍を抑えている連合軍は勿論の事、各王国、各機関には勇者の存在は知られており、世界中の士気を上げるために公表の準備が進んでいます。


 それに勇者として名乗ってはおりませんが、勇者として各地各所で活躍をし様々な方と関係を持っております。


 今更それを投げ出して逃げるようなことはアルベルト様には出来ません。


 そのように()も鍛えましたから。


 そう、とうとう勇者の存在を世界中に公表するのです。


 それは私の地位を確固たるものにする為の儀式でもあります。


 勇者の指導者としての確固たる地位を築き、勇人部隊の創設者としての実績を残し、Alice神教教会の導きを最大限に生かした私に逆らえる者は居なくなります。


 私はとうとう世の中を思い通りに出来る力を手に入れたのです。


 あとはアルベルト様が魔王を倒せば、晴れて教皇の座も手に入るでしょう。


 それも時間の問題ですね。


 おっと、そうそう、教会の全てを統率する前に内部の掃除をしておきますか。


 教会内には所謂権力を行使する強権派と、女神Alice様の教えを主とする穏健派の2つの派閥に分れております。


 地方教会はほぼ穏健派ですが、これは王都教会から離れている為あまり注視する必要はありません。


 問題は王都教会――アリスティラ大神殿です。


 強権派と穏健派。その2つの派閥の頂点に君臨しているのは、私も含む7人の枢機卿になります。


 “政”を司る枢機卿は強権派。


 “祈”を司る枢機卿は穏健派。


 “戦”を司る枢機卿は強権派。


 “金”を司る枢機卿は強権派。


 “伝”を司る枢機卿は穏健派。


 “天”を司る枢機卿は強権派。


 “勇”を司る枢機卿は強権派。


 穏健派は2と吹けば飛ぶような勢力です。


 “伝”の枢機卿は各地区の教会との連絡網を管理している情報局のトップです。


 その関連で、地方教会の取り纏め役にもなっております。


 ですが彼は枢機卿にもかかわらずやる気が無く、ただ情報を事実として管理しているだけで、自ら動こうとはしません。


 “祈”の枢機卿は神託(オラクル)祝福(ブレッシング)奇跡(ミラクル)などを管理する、女神Alice様関連を取り仕切っております。


 彼女は敬虔な女神Alice様の信徒ではありますが、政治的駆け引きなどが出来ない馬鹿正直ものでもあります。


 なので、このお二方は脅威ではなく、簡単にあしらう事が出来ます。


 問題は強権派の私と“金”の枢機卿を除く3名です。


 “金”の枢機卿は教会の財務を一手に引き受けている財務部のトップですが、彼女は私の支配下にあります。


 彼女は頭が緩く、人の話を信じやすい純粋な人間ですので、こちら側に引き込むのは簡単でした。


 それに、【指導者】のスキルで一教徒時代から“指導”してきたことにより、“大恩”を仕込むことにも成功しております。


 残りの“政”、“戦”、“天”の枢機卿はそれぞれが反目しあい、虎視眈々と教皇の座を狙っております。


 “政”の枢機卿は文字通り教会の運営を行う行政部のトップです。


 故に彼は教会内で自分の意にそぐわない者は排除する方針を取っております。


 “戦”の枢機卿は神殿騎士、聖騎士、神官戦士など戦力を取りまとめております。


 彼自身も神官戦士からのたたき上げで枢機卿の座を射止めた強者です。


 ですが、彼は政治には疎くただ戦うだけが生きがいの脳筋です。


 “天”の枢機卿は昔は経典の管理をしておりましたが、今はほぼ教会内の雑務をこなす部署と化した通称雑務部のトップをしております。


 ですが、“天”の枢機卿が一番得体が知れず警戒が必要です。


 彼らは強権派に在りながらそれぞれが独自の派閥を作っております。


 いわば強権行政派、強権戦闘派、強権雑務派に加え、私の強権勇者派の4つが互いに睨みあっている状態です。


 ですが、今は私が教皇の座に手を掛けている状態です。


 今の状態は、彼らにとって好ましい状況ではないでしょう。


 何かしらアクションがあると見ていいかもしれません。


 まぁ、精々足掻くといいでしょう。












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