092.VSファイヤードラゴン13匹 2
「くっ、殺せ! 奴を殺せっ!」
「ギシャァァァァッ!」
ハイドラが激昂し、クリムゾンドラゴンがハイドラの意を受けファイヤードラゴンに命ずる。
まぁ、ファイヤードラゴンはハイドラに【テイム】されている訳じゃなく、クリムゾンドラゴンの威により従っているだけだからなぁ。
地上で佇むジルに向かって1匹のファイヤードラゴンが牙を剥いて襲い掛かる。
「ふーちゃんー」
ジルはスノボーのジャンプのように助走無しでその場で宙返りをし、ファイヤードラゴンの牙を躱して真上に上がる。
『重力1000倍~』
そして地面に向かって落下しながらふーちゃんの重力圧で圧殺する。
「グオォンッ!?」
べゴンッ!
重力1000倍はハンパなく、半径10mが1mも陥没していた。
当然、その中心に居たファイヤードラゴンは即死で中身をぶちまける。
『うわっ、グロッ』
『あ~、ちょっと1000倍はやりすぎだったかしら』
再び地上に降り立ったジルを目がけ、今度は近づかないでの攻撃を選んだのか、四方八方からの火炎ブレスを放ってきた。
「「「「「グルオォォォォォォォォォッ!!」」」」」
「へきちゃんー」
『僕に、任せて……。これくらぃ、なら……!』
本来ならへきちゃんは文字通り壁役だから、正面からの防御が基本になる。
よって授かった能力も巨大化と神鋼化と言った壁強化に関わるものだが、【ストーンコレクター】Lv3で授かった3つ目の能力は真円壁。
つまりへきちゃんを中心にしたバリアを形成する能力だ。
放たれた複数の火炎ブレスはへきちゃんのバリアに阻まれ弾かれる。
『おっと勿体ない。【ウインドブレス】』
俺はバリアの周りに強風を起こし、弾かれた火炎ブレスの炎をバリアの真上に集め圧縮する。
『お返しするぜ。【投擲】』
集めて圧縮した炎を、火炎ブレスを吐き終わったファイヤードラゴンの口目がけて放つ。
ドム、ドゴンッ!
圧縮した炎を飲み込んだファイヤードラゴンは、そのまま頭を破裂させて脳漿を撒き散らす。
『きゅーちゃん、あんたの方がグロイじゃん』
ふーちゃんからの突込みがはいるが、全身を潰したふーちゃんの方がグロいからな?
「(残り6匹かー。きゅーちゃんー、ちょっと本気出すから強化お願いー)」
『お? 本気出すのか? この程度相手に』
「(うんー、圧倒的戦力で実力差を見せつけるのー。きゅーちゃんはハイドラを殺さないで片付けるつもりでしょー? だったら見せつける方がやりやすいでしょー?)」
ああ、うん。よく分かったな。
確かに俺はハイドラを殺すつもりはなかった。
別にハイドラの命を奪うのが躊躇われるとか、簡単に殺すのは良くないとか言うつもりはない。
ただ単純に、ここでハイドラを殺しても直ぐに次の監視役が使わされているのが目に見えるからだ。
なので、ハイドラを生かして従わせておけば、クソババァへの報告を誤魔化しつつ時間を稼げると思ったからだ。
要はマードックとコーリンと同じ対応だな。
違いは隷属ではなく、恐怖や威圧で従わせようと試みている事だ。
『よし、いいだろう。全力でやってあのアホ面をしたハイドラにジルの実力を見せつけてやれ』
「(うんー、任せてー)」
『【ストレングス】【クイック】【フィジカルアップエンチャント】【リジェネーションヒール】【クロックダウン】【クロックアップ】【エアリアルドライブ】』
俺はジルに筋力、速度、身体能力向上、自動回復、反射速度、高速思考のそれぞれの付与魔法を与える。
あとついでに空中機動の魔法も。
まぁ、ここからはジル無双、だな。
ぼーちゃんとはーちゃんを手にジルは次々とファイヤードラゴンを屠っていく。
まずは大ジャンプで一瞬で1匹のファイヤードラゴンの前に躍り出て、逆手で気刃はーちゃんでファイヤードラゴンの頭を串刺しにする。
そしてそのままファイヤードラゴンを足場に隣のファイヤードラゴンへ跳び、ぼーちゃんの伸縮突き(衝撃付)を放ち、こちらも串刺しにしてそのまま地上に叩きつけた。
勿論その間もファイヤードラゴンも黙って見ている訳じゃない。
仲間を犠牲にしながら囮とし、ジルが襲っている間に仲間ごと斬り裂こうと1匹のファイヤードラゴンが超高速で爪を携え迫る。
と同時に、仲間ごと巻き込む巨大火炎球ブレスと、ジルが避けるであろう回避軌道に火炎ブレスを放つ。
まぁ、反射速度と高速思考が掛かっているジルには丸見えで、空中機動で巨大火炎球と火炎ブレスを避けながら爪のファイヤードラゴンの軌道上に気刃を伸ばしたはーちゃんで切り裂く。
そして気刃を伸ばしたはーちゃんを2度振り、巨大な気刃飛斬でブレスを放った2匹のファイヤードラゴンも真っ二つにする。
残った1匹は、流石にジルを相手にするのがヤバいと認識し逃げようとしたが、勿論逃がす訳がなく、ふーちゃんに乗った光速移動で一瞬で逃げようとしたファイヤードラゴンの前に出る。
まぁ、光速移動ですれ違った際に、既にはーちゃんの斬撃で真っ二つだが。
因みにこの6匹の倒した時間はほぼ6秒。
圧倒的だな!
さっきよりも圧倒的な殲滅速度に、ハイドラは声を震わせて叫んでいた。
「な、なんなんだよ、お前はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」




